大阪市中央区の
南海電鉄「なんば」駅
は、大阪府南部や和歌山県と大阪市を結ぶ、発着駅かつ終着駅。
いわゆるターミナル駅です。
駅の北方や東方には、
「ミナミ」
と呼ばれる繁華街が広がっています。
駅の南側には現在
なんばパークス
という大型商業施設があります。
服飾・雑貨店や飲食店、映画館まである
「オシャレ」
な施設です。
大阪や関西でも、若い世代の人たちは、かつてここに野球場が存在したことを知らないかもしれません。
『南海ホークス』が昭和の終わりまでプレーしていた!
その名は
大阪球場。
かつて南海電鉄が所有していたプロ野球チーム
南海ホークス
のホームスタジアムでした。
故・野村克也さんが長年プレーした、パシフィック・リーグ(パ・リーグ)の球団でした。
私は子供の頃、親に連れられ1〜2回、プロ野球の試合を観に行きました。
しかし、1988年(昭和63年)シーズンを最後に、当時のダイエーにチームを譲渡。
ホークスは、福岡市に本拠地を移しました。
その後も球場は残っていたが・・・。
主を失った大阪球場は、その後長い間、解体されずに残っていました。
球場内のグランド部分は、何と
「住宅展示場」
として使われ、モデルハウスが建ち並んでいました。
宮部みゆきさんの傑作サスペンス小説
「火車」
では、主人公が大阪を訪れる場面で、大阪球場についての描写があります。
私自身は、住宅展示場に足を踏み入れたことは一度もありません。
しかし、学生時代から10 年近く、大阪球場によく通っていました。
球場の一部が『古本街』だった!
実は、球場の一階の一部が、大きな
古本街
となっていたのです。
出入口が左右2か所あり、内部の通路が「コ」の字型になっていました。
通路の両脇には、古書店がずらりと並んでいました。
正確な数は覚えていませんが、少なくとも20店舗くらいはあったのではないでしょうか。
各店の大きさは多少異なり、こぢんまりした店が多かったです。
しかし中には、かなり広い店もありました。
特徴のある店が多く、社会人になっても通っていた!
各店の品揃えが、結構特徴的でした。
かなり高額の、古文書のような本を揃えている店、
写真集や雑誌のバックナンバーを多数扱っている店、
古くて珍しいマンガ本(今で言うヴィンテージコミック)が売りの店
など、色々な店が営業していました。
営業時間は、午前11時〜午後8時までだったと思います。
毎週木曜日が定休日だったことは、今でも覚えています。
大学生の頃は、帰り道によく立ち寄っていました。
当時は、なんば駅の近くに
ナンバブックセンター
という書店(新しい本のみ)があり、両方をハシゴすることもありました。
コロナ禍の影響をモロに受けている業種と言えば、飲食業界が真っ先に思い浮かびます。そして、ショッピングモールや映画館などの大規模施設も、休業や時短営業といった措置を余儀なくされています。大型書店もそうした対象に含まれていると知[…]
社会人になると、日中には行けません。
大抵は、仕事帰りに寄り道し、本を物色していました。
当時の大阪では、一番大きかった?
東京は神田神保町の古本街には、規模や品揃えなどの点で、及ぶべくもありませんでした。
しかし、当時の大阪であれだけ多くの古書店が集まっていた所は、他に思い当たりません。
大阪の阪急電鉄「梅田」駅そばには、現在も
阪急古書のまち
という場所があり、10軒ほどの古書店が営業しています。
しかし広さでは、大阪球場の古本街の方が上回っていたはずです。
球場は解体、一部の古書店は近くに移転したが・・・。
その大阪球場古本街も、1998年(平成10年)にその幕を閉じました。
大阪球場が解体され、現在の「なんばパークス」が建設されることが決定したためです。
一部の店は他の地域に移転しました。
そして5軒ほどは、大阪球場の近くに南海電鉄が所有しているビルの1階に移転しました。
その中の一店は、私がよく本を買っていた店でした。
そのため、移転後も時々立ち寄っていました。
どの店も小綺麗になっていましたが、大阪球場時代ほどは客の入りに恵まれなかったようです。
2〜3年ほどすると、一軒また一軒と閉店し、いつの間にか古本屋エリアはほぼ消滅していました・・・。
現在は、1店のみが営業を継続しています。
古本屋は、狭くて薄暗いのが丁度いい?
古本屋は、あまり新しいビルには馴染みません。
古びた雑居ビルや寂れた商店街の狭い店舗に、古本をギッシリ詰め込んだ
ちょっと窮屈で薄暗い雰囲気
の方が似合います。
大阪球場古本街は、どの店もそうした感じでした。
ちょっとレトロっぽく退廃的なオーラを放っていました。
私も含めた古本ファンは、そうした部分に心惹かれ、通い続けていたのかもしれません。
最後に・・・。
そうした郷愁めいた感情と共に、私は今でも思い出します。
大阪球場古本街の出入口そばで、ある古書店が営業していました。
店の通路側にも大きな本棚がありましたが、そこには上から下まで
ひばり書房(怪奇マンガの単行本で有名でした)
のコミックがずらりと並んでいました。
「ひばり書房」・・・。昭和40年代に生まれた人たちには、男女問わず何とも言えない記憶を残した出版社です。Wikipediaによると、1947年8月に、東京都文京区小石川で創業されました。1980年代に新宿区早稲田町に移転しま[…]
ひばり書房は、もう存在していません。
ネット通販サイトやフリマアプリでは、多くの作品に結構高値が付いています。
「若かりしあの頃、それらの怪奇マンガを大量に買い、保存しておけば、今頃一儲けできていたかもしれない・・・。」
と、郷愁をブチ壊すセコいことを考えるのでした・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
興味がございましたら、こちらもお読みください。
我が家では、新聞を取っていません。たまに勧誘が来ても、即座に断っています。新聞がなくて困ったことは、一度もありません。現代のネット社会では、必要な情報は新聞以外からも得られるからです。しかし、嫁や私の実家では[…]
21世紀の日本は「個人情報」保護の意識が非常に強い社会です。より正確に言うなら、「過剰に強い」社会です。 [adcode] 法律、ネット文化が人々の意識[…]
私は、幼少の頃から本が好きです。このブログでも、小説・マンガ・ノンフィクションなど、様々な本に関する記事を書いてきました。皆様もご存知の通り、書籍を取り巻く環境は、21世紀に入り大きく変化しました。 […]