【書評】田崎基「令和日本の敗戦」は令和日本の今を一刀両断!

8月に読んだ「令和日本の敗戦」(ちくま新書)という本に、感銘を受けました。

著者は田崎基(たさき もとい)氏。神奈川新聞の記者です。

タイトルだけ一見すると

「日本の敗戦?戦争も70年以上してないのに、どういうこと?」

とビックリしてしまいます。

もちろん、本当の戦争についてのことではありません。

時代が昭和から平成に移ってからの30年余りを根底に据え、2012年(平成24年)12月から2020年(令和2年)2月時点までの安倍政権(あっという間に「前」政権になってしまった・・・)の政治を振り返り、検証していくという本です。

2018年(平成30年)から2020年2月までに、著者が神奈川新聞に連載した記事などをベースに再構成しています。

 

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冷静な筆致が、日本の現実をくっきりと浮かび上がらせる!

約7年8ヶ月の前政権の間、日本社会があらゆる分野で衰退や敗北を重ね、日本の国力、国民の生活水準、政治的・社会的モラルが一直線に下降していった事実を、著者はあまり熱を込め過ぎず、どちらかと言えば冷静に明らかにしていきます。

料理に例えれば、強火で一気に煮るというより、中火~弱火でじっくりコトコト煮込むという感じの進み方です。

しかし、それが故に我々に提示される現状は、逃げ場も反論の余地もないほど残酷、悲惨、空虚なものとして迫って来ます。

 

この8年近くで、日本は世界で一人負け?

「格差社会」、「アベノミクス」、「憲法改正」、「桜を見る会」を主な論点としていますが、安倍前政権のやってきたこと(またはやらなかったこと)は概ね押さえられています。

ここでは詳細は書きませんが、

「この8年近くって、一体何だったんだろう?」

と思ってしまうほどの失政、悪政、作為、不作為のオンパレードであることが、これでもかというほど我々読者に突き付けられます。

そして、著者の結論は

「令和に入って、日本は他国と戦わずして、敗北(=一人負け)した状態である。」

というものです。

しかし、当然それで終わりということではなく、再び立ち上がって進んで行くために、過去及び現状を検証しようというスタンスです。

 

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最後に・・・。

神奈川新聞は一地方紙、はっきり言えばローカル紙です。

しかし、本書の内容は、全国紙やその関連書籍を凌駕するレベルです。

本来は、大手新聞が真っ先に指摘するべき(だったが、お得意の忖度でしなかった)ことを的確に指摘しています。

しかし、「良薬は口に苦し。」という言葉のとおり、こうした「口に苦い」本は読者がなかなか手に取りません。

「コロナ禍の後、日本が世界をリードする!」

のような内容の、砂糖をドバドバ振りかけた本でないと、ヒットしないという嘆かわしい現実があります。

それでも、本書は御一読をお勧めします。


 

令和日本の正しい立ち位置が分かる、優れた本です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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