「潜入取材」ジャーナリストには気骨のある人が多い!

その他(夫)
その他(夫)

子供の頃から本を読むのが好きで、過去のブログにも書きましたが、幼年誌が本好きになるきっかけでした。

「たのしい幼稚園」「テレビランド」…1970年代は幼年誌黄金時代!
1970年代、日本が高度成長時代の真っ只中だった頃、私は幼稚園~小学校前半(1~3年生)でした。 当時は、親にいわゆる「幼年誌」と呼ばれる子供向け雑誌をよく買ってもらい、熱心に読んでいました。 そうした雑誌を与えられると、ひたす...

以降、マンガや小説など様々なジャンルの本を読んできました。

中でも、よく読んでいるのが「ノンフィクション物」です。

やはり、誰かの実体験や実際の事件・出来事がベースになっているだけに、現実味(本当に起こった話だから当然ですが)が読み手に伝わってきて、自分がその世界の中に入り込んだ気分になれます。

小説などのフィクションでも、優れた作品は事前の取材も緻密かつ丁寧に行われており、描写がノンフィクションのルポルタージュのようで、嘘臭さを感じさせません。

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潜入取材物が大好きなジャンル!

ノンフィクション物の中でも、個人的に大好きなジャンルが、いわゆる「潜入取材」物です。

例えば闇社会やブラック企業、貧困街など、通常は一般の目に触れない、あるいは隠されている世界に著者が素性を明かさず潜入し、そうした社会の闇・影の部分を暴露していくという内容です。

書店でこの手の本を見つけると、つい買ってしまいます。

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学生時代に読んだ、ドイツのノンフィクションに衝撃を受けた!

私が最初にこのジャンルを意識するようになったのは、大学生の頃に読んだ岩波書店の

「最底辺 Ganz Unten ートルコ人変身して見た祖国・西ドイツ」(ギュンター・ヴァルラフ著)

という本でした。

新聞の第一面の下に新刊本の広告が載っていますが、そこで見かけて興味を持ち、本屋で探して購入した本です。

著者のヴァルラフさんは、有名タブロイド紙Bild(ビルト)紙の偽記事問題を暴露するなど、旧西ドイツで有名なジャーナリストです。

ドイツ統合前の西ドイツには、トルコや東欧、中近東、北アフリカ諸国からの移民労働者が既に大量に流入してきていました。

ヴァルラフさんはカツラやコンタクトレンズで変装し、話し方も外国人訛りにして、トルコ人出稼ぎ労働者として国内の様々な労働現場に入り込みます。

西ドイツ人が敬遠する、昔で言う3K(キツイ、汚い、危険)仕事を身をもって体験します。

長時間労働、低賃金、劣悪な労働環境・条件、派遣会社・業者によるピンハネなど、社会の
Ganz Unten、つまり「最底辺」で起こっている恐ろしい「事実」を次々とあぶり出していきます。

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40年近く前の西ドイツと、現在の日本で同じ状況が起こっている!

私がこの本を読んだ当時の日本は、バブル経済の末期でした。

自分の周囲にはそうした人々(外国人労働者)はまだほとんど見当たらない状況でした。

しかし、時は流れて約30年後の現在、日本では「技能実習生」の美名の下、多くの外国人労働者(実習生と言い難い)が旧西ドイツと同様の「最底辺」で、ジリ貧日本の社会を下支えしています。

そして、最早外国人だけでなく、日本人労働者も派遣社員、契約社員といった非正規雇用の不安定な立場で、同じく「最底辺」にいる人も多いです。

日本はまさしく、この本の内容を後追いしているのです。

机の前で考えて書いた本は、どこか物足りない・・・。

以降、こうした社会問題や貧困問題に関心を持つようになり、そうしたテーマの本を多数読むようになりました。

しかし、学者や評論家の著書は往々にして「ニュースやデータ」に基づいています。

そうした客観的な事象を分析しながら問題の核心に迫り、解決策を提示するというパターンの本が多いのです。

「机の前で考えて」書いた本という印象を持ってしまうことが、結構あります。

傾聴に値する意見が書かれている、一読すべき作品も多数ありますが、やはり今ひとつ物足りなさは残ります。

女性の潜入取材ノンフィクションもある!

2005年(平成17年)に東洋経済新報社から刊行された

「ハードワーク ー 低賃金で働くということ」(ポリー・トインビー著)

は、骨のある潜入取材物でした。

著者はイギリスの著名コラムニストですが、身分を隠して低賃金(ほぼ最低賃金)の仕事
(給食調理、清掃作業員、介護施設の下働きなど)を渡り歩くという内容です。

著者は女性だけに、危険過ぎる仕事には就いていません。

しかし労働内容は厳しく、まさしくタイトル通り「ハードワーク」です。

著者は事前に、賃金通りで一日○時間、一ヶ月△△時間働けばいくらの収入、必要な支出の予定はいくら・・・などと細かい計算をして生活設計を立てます。

しかし、病気・怪我などの出来事で、そうした計画は成立しなくなり、たちまち日々の暮らしに行き詰まりかねないことを実感します。

机の上では完全なストーリーも、実社会では脆いものだと肌で知るのです。

21世紀の巨大企業の現実も、潜入取材で明らかになった!

それから約14年後、またもイギリス人のジャーナリスト、ジェームズ・ブラッドワースによる
潜入取材ノンフィクション

「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した」(光文社)

が発売され、読んで衝撃を受けました。

Amazon.comの倉庫、訪問介護ヘルパー、コールセンターのスタッフ、タクシー配車アプリUberのドライバーという四つの仕事を実際に体験した様子が、詳細に描かれています。

AmazonやUberの仕事の過酷さは、聞きしに勝るものでした。

Uber以外の三つは日本でも普及している仕事です。

実態は恐らくイギリスと同じのはずで、背筋が寒くなってしまいました。

日本にも潜入取材の達人がいる!

日本にはこうした骨のある作品を書くジャーナリストがいないのか言えば、少数ですがいます。

その代表というべき人が、フリージャーナリストの横田増生さんです。

著書「ユニクロ帝国の光と影」(文芸春秋社刊)の内容を巡り、文春のみが名誉毀損でファーストリテイリングから訴えられました。

しかし、一審・二審とも無罪という完全勝利となりました。

ところがそれ以降、横田さんはファーストリテイリングの決算発表会にすら出入禁止となってしまいました。

そこで横田さんは、ユニクロの店舗にアルバイトとして潜入。一年間勤務しました。

素性がバレないよう、奥さんと一度離婚してすぐ再婚。

その際に姓を奥さんの姓に変更する(!)という荒技を使った強者です。

その経験を基に

「ユニクロ潜入一年」(文芸春秋社刊)

を発表しました(またも文春からです(笑))。

その後も、Amazonの倉庫で約3週間働いた経験を交え、Amazonの現状を詳細に解説する

「潜入ルポ amazon帝国」(小学館刊)

を発表しました。

ちなみに横田さんは、Amazonの日本進出直後にも、倉庫で短期間働いています。

最後に・・・。

この横田さんは、いわゆる「ガチ」の人です。

「ガチ」の人を怒らせると、ろくなことがありません。

ファーストリテイリングの総帥である柳井正さんも、つまらない嫌がらせさえしなければ、一年も潜入取材されて二冊目の本まで書かれることはなかったかもしれません・・・。

今後も横田さんの著作からは目が離せません。

横田さんに限らず、根性の据わった「ガチ」のジャーナリストがどんどん出て来て欲しいところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。