2017~2018年頃に世間を騒がせた、森友学園及び加計学園の様々な疑惑に関する問題、いわゆる「モリ・カケ問題」の報道で、
「忖度(そんたく)」
という言葉が流行語になりました。
『権力を持つ者、金のある者』の意向を汲み、言われなくとも自らその意向に沿うよう行動することと捉えられています。
追及される側、する側とも忖度する人ばかり・・・。
「モリ・カケ」事件でも、政権中枢の意向、希望を先取りして実現に導いた人間たちは、出世を遂げました。たとえそのために不正な行為を行っても、責任を問われることはありませんでした。
TVや新聞などの主要マスコミも、最初は熱心に追求するが、政府による幕引きが図られるとともに、熱が冷めて追求も尻すぼみになっていきました。
記者や評論家などのマスコミ関係者、学者などの文化人には、政府に忖度し、追求手を緩めたり論点をすり替えるなどして、間接的に政府をサポートする人間が多いようです。
忖度はグローバルな行動?
確かに昔から
「長い物には巻かれよ」
という言葉もあり、歴史上でも様々な形の忖度が行われてきました。
マスコミだけでなく、日本社会の至る所で、忖度が蔓延しています。
日本だけではなく、外国でも同様です。
反骨精神は出世の邪魔?
しかし、そうした安易な方向に流れず、真実の追及、不正や矛盾の糾弾に全力を挙げるのが、マスコミやジャーナリストの仕事のはずです。
一般のビジネス社会では、小賢しくそつなく立ち回る人間は、掃いて捨てるほどたくさんいます。
マスコミ界でも、そうしたタイプの「上昇志向、安全第一」を行動指針とする人間が多くなり、順調に出世していくのでしょうか。
そんな中でも、反骨精神を持ったマスコミ人(勤め人、フリーを問わず)は少数派ですが存在します。
例えば、TV局で深夜または早朝に放送されているドキュメンタリー番組(東京のキー局だけでなく、地方の系列局が制作した番組も多いです)は、どの局の作品も力作揃いで、マスコミ人の意地のようなものを感じます。
しかし、そうした番組を地道に作る人ほど、出世できないようです。
フリーのジャーナリストで、しっかり取材して良心的な本や記事を書く人も同様で、なかなか世間から評価されません。
「有名になること」、「地位を上げること」、「金を稼ぐこと」に血道を上げるタイプの人間が、現在のマスコミにおいては、スポットライトを浴びるチャンスを得やすいようです。
中には、政権中枢の政治家に気に入られ、「お友達」として御用記者の道を歩む人間もいます。
世界にはすごい若者がいる!
それに比べ現在の若者の方が、忖度をせず、悪いことは悪い、おかしいことはおかしいと、正論を堂々と語ります。
「まだ社会の荒波に揉まれず、清濁併せ呑むことができないからだ。」
と、冷ややかな視線を送る大人は多いはずです。
しかし、正しいこと、筋の通ったことを言うのに、年齢は関係ないはずですが・・・。
これからご紹介する二人は、いずれも10代~20代前半の女性ですが、社会の矛盾に果敢に物申し、様々な非難や中傷、果ては襲撃(!)を受けても、自分の意見を曲げずに奮闘している人です。
(1) マララ・ユスフザイさん
パキスタン出身の22歳。女性や子供の権利向上を訴えて活動していましたが、2012年にイスラム主義武装組織に襲撃され、頭部に銃撃を受けました。しかし、生命を取り留め、以降も活動を続行。近々、イギリスの名門オックスフォード大学を卒業予定です。
(2) グレタ・トゥーンベリさん
スウェーデンの高校生。地球環境保護のため活動しています。国連で演説する姿は世界中に発信され、彼女を一躍時の人にしました。自分が高校生の頃だったら、あんな堂々とした演説(しかも、学校集会ではなく、国連です!)は絶対無理です。
二人とも、称賛だけではなく常に批判にも晒されています。特にグレタさんには、「世の中を知らない子供の遊び」といった意見も多く投げかけられます。
しかし、二人ともそうした意見に惑わされず、自分の道を突き進んでいます。腹の据わった人たちです。
日本にも、すごい中学生がいた!
実は日本にも、忖度なしの意見を大人(それも超大物)に対して堂々と述べ、周りの人を驚かせた若者がいました。
約20年前、1990年代末のことです。
当時、アメリカの金融大手シティコープの会長だったジョン・リードさんが来日しました。
連日TVや新聞、雑誌などの取材を受けたりしていましたが、東京都内のある中学校で、中学生と交流することになりました。その様子が、TVのニュースで報じられていました。
中学生との質疑応答タイムが設けられ、何人かがリードさんに質問しました。その中の一人の男子中学生が、
「リードさんはインタビューで、『従業員は大切な財産です。』と言っていました。なのに、どうして大規模なリストラ(人員解雇)をするんですか?」
と、空気を全く読まない、ド直球かつ豪速球の質問を投げ込んだのです。
リードさんは一瞬絶句しましたが、さすがはアメリカ金融界の超大物。
何とか切り返し、無難な答えでまとめました。
しかし、笑顔の目の奥は笑っていないように見えました・・・。
リードさんに対し、ヨイショフィーリング全開で取材してきた日本の記者やキャスターのことは、誰一人覚えていないでしょうが、この強烈な質問をしてきた男子中学生のことは、リードさんの記憶に残っているのではないでしょうか。
あの男子中学生は、大人になった今、どのような仕事をしているのでしょうか?こういう人は、絶対にジャーナリストになるべくして生まれた人だと思うのですが・・・。
最後に・・・。
権力の監視役であるべきマスコミが、現在のような状態にあるのは、マスコミ業界の人間だけの責任ではありません。
社会の空気に流され、自分の保身に汲々とし、間違ったことや筋の通らないことを指摘することなく、今まで生きてきた我々大人の世代の責任でもあるのです。
マスコミの現状は、我々日本人、日本社会の姿を反映したものだと思います。
これからの日本を託される若い世代の人たちには、「忖度しない力」を身につけて欲しいと思います。
こんな社会を残してしまった(押し付けてしまった)側のオッサンがこんなことを言うのも、おこがましい限りですが・・・。
そうした人材がマスコミ業界にもどんどん進出し、おかしなことにはガンガン物申す、反骨精神満開のジャーナリストになって欲しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。