「岩波書店」
と聞いて、皆様はどんなイメージを抱かれるでしょうか?
「老舗出版社」
「文庫本」
「難しい」
「内容が堅苦しい」
・・・などが挙げられそうです。
1913年(大正2年)創業で100年を超える歴史を誇り、学術書や文芸書に特化しています。
「10時間で分かる日本経済」
的な安直ハウツー本は間違っても出版しない、
「ガチ」
な姿勢の出版社です。
文字数や脚注が多く、中身が濃いのが特徴!
最も有名なのは
「岩波文庫」
でしょう。
国内外の文学、歴史、哲学、ノンフィクションなど、ジャンルは多岐に渡ります。
「1ページ当たりの文字数が非常に多い」
「巻末の脚注が異常なまでに詳細」
といった特徴も知られています。
また、ページ数が少なく薄手の
「岩波ブックレット」
も、分量の少なさに反比例する中身の濃さが、岩波らしさと言えます。
「新書」にはどこの出版社も力を入れていますが、岩波にも
「岩波新書」(赤色の表紙で有名)
シリーズがあります。
読書好きの方なら、一冊くらいはお読みになられたことがあるかと思います。
中高生向けの『岩波ジュニア新書』がある!
この「岩波新書」の姉妹シリーズとして、
「岩波ジュニア新書」
シリーズがあることをご存知でしょうか?
大きな書店なら、「岩波新書」の棚の横に「岩波ジュニア新書」の棚もあるはずです。
「ジュニア」と冠している通り、中学生~高校生辺りを購読者層と想定しているようです。
表紙は明るめの色使いで、イラストが描かれています。
『ジュニア』と題されていても、内容は大人向けと同レベル!
しかし、そうした外見だけで
「子供向けの入門書みたいなものだろ?」
と安易に決め付けては大間違いです。
内容の方は、中高生向けに
「薄めた」
部分がほぼ皆無です。
「ジュニア世代と言っても、これくらいは理解できるでしょ?ウチの本は、売れるようにレベルを落としたりしませんよ。」
とは、もちろん本のどこにも書かれていません。
しかし、そう宣言しているに等しいレベルの作品が勢揃いしています。
著名ジャーナリストも、内容を薄めていない!
一例として、
「ルポ 貧困大国アメリカ」(岩波新書)
などで著名なジャーナリストの
堤未果さん
が岩波ジュニア新書から発表なさった
「社会の真実の見つけかた」
を挙げたいと思います。
漢字や語彙の選び方に、10代の読者への配慮らしきものが見られますが、内容自体は大人向けと変わりません。
堤さんが岩波や他の出版社から発表なさった作品と、基本的に同じスタンスです。
「ハードルを下げた」
感じは全くありません。
むしろ、社会問題に疎い大人が読むと、難しいと感じるかもしれません。
有名数学者の本も、ジュニアだけでなく大人にも役立つ内容!
また、ハンガリー出身の数学者で12ヶ国語を操り、大道芸人としても活動なさっている
ピーター・フランクルさん
も岩波ジュニア新書から本を発表なさっています。
私は
「ピーター流らくらく学習術」
「ピーター流外国語習得術」
の二冊を読みました。
両書とも「学習法」、「外国語習得法」がテーマであり、中高生にも当然深い関わりがあります。
しかし、大学生や社会人になってもこれらのテーマはついて回り、書店でも大人向けのハウツー本は多数売られています。
上記の二冊は、大人が読んでも十分参考になります。
著者のピーターさんも堤さんと同じで、「ジュニア向け」としてお書きになってはいないはずです。
「子供相手だから・・・。」
などと、手加減や手抜きは全くありません。
やはり、「ガチ」の出版社と「ガチ」の書き手が組むと、必然的に「ガチ」の本が生まれるのです。
最後に・・・。
近年は
「出版不況」
が叫ばれて久しいです。
出版業界も電子書籍やネット通販など、あの手この手で奮闘しています。
しかし、
「本を読まない人」
の増加の前には劣勢を強いられています。
そうした流れの中で、出版社も
「良い本」
よりも
「売れる本」
を出版しようとする方向へと傾いてしまっています。
その結果、書籍の内容が劣化し、本離れを加速させるという皮肉な現象も起き始めています。
そんな中、
「ウチは『良い本』にこだわります!」
と言わんばかりにブレない姿勢を貫く岩波書店には、敬意を表します。
そして、岩波ジュニア新書もこのまま
「カルピスの原液」
のような濃度の内容の本を、末永く発行し続けて欲しいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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