このブログでは過去に「ねがい」、「笑い仮面」と楳図かずお先生の作品を二作紹介してきました。
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こんにちは。husband(@kumafumoblog)です。楳図かずお先生と言えば、怪奇・ホラーマンガ界の巨匠であり、マンガに関心のない人たちでも名前や風貌、いくつかの作品名くらいは知っているほどの有名人です。「赤ん坊少女[…]
今回紹介するのは「猫目小僧」です。題名からして既に怖い・・・。
1967年(昭和42年)に「少年画報」(少年画報社刊)で連載が連載が始まりましたが、翌1968年(昭和43年)に同じ少年画報社の「少年キング」に移動して連載。それから8年後、1976年(昭和51年)に東京12チャンネル(現:テレビ東京)でアニメ化されたのに合わせ、「週間少年サンデー」(小学館)で連載されました。
猫目小僧とは何者なのか?
普通、少年マンガ、特に妖怪ものでは主人公の出自などはあまり詳しく描かれませんが、この作品では猫目小僧の出生地が奈良県吉野郡(!)と明かされています(さすがに町は架空の町名ですが・・・)。楳図先生が奈良県出身ということで、たまたま奈良県が選ばれたのでしょう。
大峰連山で、300年に一度しか生まれない猫又の子として生まれましたが、人間に近い風貌のため(母親は人間の女性なので、しょうがない?)、妖怪一族から嫌われ、殺されそうになります。
しかし、それを不憫に思った父親の猫又は、赤ん坊を人間の住む村のある家に捨てて行きました。
その家の女性は、村人たちの迫害を受けながらも、その子(=猫目小僧)を匿って育てました。
後にその村は、妖怪「水まねき」の起こした大津波により全滅。
育ての親と言うべき女性も亡くなり、猫目小僧はあてのない旅に出ることになります・・・。
ここまでで、もうお腹一杯と言いたくなるヘビーさです。
旅先で、妖怪絡みの事件に巻き込まれる!
当然ながら、旅先で何も起こらないはずはなく、猫目小僧は様々な怪事件に巻き込まれます。
直接猫目小僧が狙われることはほぼなく、放置して他の土地へ行けばいいのですが、妙な義理(屋根裏に勝手に住み着いていた家の事件を、一宿一飯の恩義(?)のような感じで解決する)を持っています。
また、山中でたまたま出会った少年が妖怪に殺されてしまった際は、
「おれがそばにいながら、この子を守れなかった・・・。」
と、復讐のため妖怪を退治しようとします。
子供への手加減一切なし!ハードボイルド風味が満載!
また、詳細はネタバレになるので書けませんが、「妖怪百人会」というエピソードでは、
「お前ら人間のくせに、妖怪であるこのおれを仲間にしてやるなんて、笑わせるぜ!」
(正確ではありませんが、こんな風な台詞だったと思います)と、年に似合わない台詞を吐く、大人びた所もあります。
この作品には、全体的にハードボイルド風味が詰まっており、楳図先生の他の作品と同様、
「少年マンガだから・・・。」という手加減が一切ありません。
子供たちに対し、カルピスを水で薄めず原液のまま、
「さあ、召し上がれ!」
と笑顔で差し出すようなものです。
一時期は復刊不可という噂もあったが・・・。
一時期、この作品は復刊が不可能であるという噂を、書籍やインターネットで目にしました。
前述のとおり、実在の地名が堂々と出ているということが一つ。
また、猫目小僧の上唇は猫のごとく裂けていますが、「病気で先天的に口蓋が裂けている方々への差別につながる。」との指摘を恐れているのではないか?という説が書かれていました。
しかし、インターネットで調べた限りでは、過去にそうした類の抗議やクレームは、どこからも来ていない模様です。
もちろん、作品に差別の意図は毛頭ありません。
2000年代半ば頃には、この「猫目小僧」も復刊され、現在も電子書籍で購読可能です。
よって、前述の噂はあくまでも噂に過ぎず、復刊が遅くなったのには別の事情があるのでしょう。
各エピソードの内容はトラウマ級のエグさ!
但し、各エピソードの内容は正直かなりエグいもので、差別の問題を抜きにしても
「本当に復刊して良かったのか?」
と素人ながら気になってしまいます。
人によっては、いつまでも頭の片隅から消えてくれないトラウマとして残るかしれません。
とにかく、出てくる妖怪が全て
「うわっ、気持ち悪っ!」
としか言いようのない風貌です。
改めて楳図先生の天才的なセンスに脱帽してしまいます。
怪奇・心霊マンガのファンの方でも、「これはちょっと・・・。」と引いてしまう方がかなりいらっしゃるかもしれません。
SF映画の名作「エイリアン」に出てくるエイリアンが、ちょっと可愛いと思えてしまうほどのレベルです。
妖怪の中で唯一悪さをしない「ないない」も、かなり気持ち悪いです。
古本の種類によっては、収録されていないエピソードもある!
私が読んだのは、朝日ソノラマ刊「サンコミックスワイド」(全3巻)の古本でした。
同じサンコミックスでも、1982年(昭和57年)に発行された全5巻ものでは、「少年サンデー」に掲載された「約束」というエピソードは収録されていないそうです。
「ワイド」版には収録されていました。「楳図PERFECTION」(小学館刊)での復刻版にはちゃんと収録されているそうです。
この「約束」も、何とも言えず怖い話です・・・。
Amazon kindle(電子書籍)で少年画報・少年キング掲載分は読めます。
最後に・・・。
この「猫目小僧」は、楳図作品の中でも必ず読むべき作品ですが、読み終わった後に何とも言いようのない精神状態に陥る可能性があります。
「読む前の自分にはもう戻れない・・・(笑)。」
ような気分になります。
そこは「自己責任」でお願いします(笑)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こちらも興味がありましたら、是非お読みください。
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