ネタバレなし:楳図かずお「おろち」は令和の子供にも好評!

このブログでは、今まで

楳図かずお先生

のマンガを4作品ご紹介してきました。

「ねがい」(短編)

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脳と数字の羅列

です。

これらは楳図作品のほんの一部であり、他にも名作が山ほどあります。

今回紹介するのは

「おろち」(小学館『週刊少年サンデー』1969年(昭和44年)25号~1970年(昭和45年)35号)

という作品です。

 

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絵の怖さは控え目だが、心理的に怖い!当時の子供たちは理解できたのか?

楳図先生の他の怪奇マンガに比べると、絵の怖さ、すなわち

「視覚的な怖さ」

は控え目です。

しかし、話の内容は結構ハードで、

「心理的な怖さ」

はやはり楳図ワールド全開となっています。

SF的な風味や、哲学的な趣も含まれています。

個人的な感想としては

「少年マンガ雑誌に連載されていたけど、当時の子供たちに意味は理解できたのか?」

です。

 

楳図作品の基本は『子供をバカにしない』!

昭和40年代中盤は、少年誌にも青年層・成年層の読者が多かった時代です。

しかし、読者層の大きな部分を占めるのは、やはり小学生~中学生だったはずです。

21世紀の今読み返すと、青年誌に連載されていても全くおかしくない内容です。

ブログの他の記事でも書きましたが、楳図先生は

「子供のレベルに合わせる」

ことの全くなかった方です。

「子供に媚びない」

イコール

「子供をバカにしていない」

ということです。

野球に例えれば、リトルリーグの打者相手に時速160kmの豪速球、あるいは鋭く落ちるフォークボールを投げてくるようなものです。

ロッテで長年活躍なさった

「マサカリ投法」

「サンデー兆治」

で有名な

村田兆治さん

は、現役引退後の少年野球教室やテレビ番組の企画でも、小学生や女子ソフトボール選手を相手に、本気で速球やフォークボールを投げ込んでおられました。

楳図先生は、村田さんと同じタイプです。

 

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主人公『おろち』は謎の少女!

「おろち」は全9エピソードからなり、各話はそれぞれ独立しています。

どの話から読んでも、特に問題はありません。

主人公は「おろち」という名前の少女です。

外見上は、10代後半~20代前半に見えます。

おろちの詳しい人物像や生い立ちなどは、作品中ではほぼ語られません。

読者が分かるのは

(1)不老不死である

(2)時空を超えて移動できる

(3)特殊能力を持っている
(手を触れずに大勢の男を倒す、他人の怪我を手をかざしただけで治す、など)

(4)人々の生活の中に溶け込む(看護師になったり、高校生になったりする)

くらいです。

最終エピソードでは、おろちの秘密が一番多く明らかにされますが、それでも結局は謎多き存在のままです。

 

おろちは『狂言回し』。真の主人公は普通の人間!

おろちのことを一応「主人公」と書きましたが、各エピソードには

「真の主人公」

と言うべき人間が登場します。

特殊能力とは無縁の、普通の人間です。

おろちは、それらの人間たちの人生を観察し、時には直接関わります。

いわゆる

「狂言回し」

の役割です。

おろちが観察する人間たちは、不幸になることもあれば、危険から脱したり目的を遂げることもあります。

おろちは、都合良く現れて全てを解決する

「万能の存在」

ではありません。

そして、怪物や妖怪の類は出て来ません。

人間の心の中に潜む

「闇の部分」

が、各話の重要な要素となっています。

 

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少年少女には難解な内容!現代の小~中学生にウケるか?

ネタバレ防止のため、各エピソードの説明は省略します。

各エピソードのタイトルは

「姉妹」

「ステージ」

「カギ」

「ふるさと」

「骨」

「戦闘」

「秀才」

「眼」

「血」

です。

タイトルだけ見聞きする限りでは、それほど怖そうな感じは受けません。

しかし実際に読んでみると

「心の底がヒンヤリと寒くなる」

恐怖が満載です。

「小~中学生が読んでも、100%内容が理解できるのか?」

という、やや難解な話ばかりです。

少なくとも2021年(令和3年)現在では、少年・少女マンガ雑誌の編集部で、この作品の連載にGOサインを出せる所は極めて少ないはずです。

表現の問題ではありません。

現代の小~中学生に、この作品の内容がウケるかどうかという問題です。

 

令和の小学5年生に『おろち』を読んでもらった!

このブログでも書いたことがありますが、私がいつも髪を切ってもらう美容師さんには、息子さんがいます。

マンガ「はだしのゲン」に熱中し、「進撃の巨人」より面白いと語る、優れたセンスの持ち主です。

現在中学1年生ですが、彼が小学5年生だった2年前、私が持っていた「おろち」のコンビニコミック版全4巻をプレゼントしました。

お父さんによると、最初は大変怖がっていたそうです。

しかし徐々にハマっていき、全巻読破したとのこと。

後日感想を尋ねると、非常に面白かったとの答えが返ってきました。

令和の小学生にも、「おろち」の面白さは伝わったのです!

 

最後に・・・。

半世紀前のマンガが現代の子供にウケるというのは、並大抵のことではありません。

改めて

「やはり楳図先生はすごい!」

と思いました。

作者が子供相手でも手加減せず、本気で書いた作品は、未来の子供にも熱量がちゃんと伝わるのです。

21世紀、令和のクリエイター(マンガ・アニメ・特撮など)には、楳図先生や村田さんのような気構えで作品を創造して欲しいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。