ネタバレなし:笑えない怪奇マンガ!楳図かずお「笑い仮面」

こんにちは。husband(@kumafumoblog)です。

楳図かずお先生と言えば、怪奇・ホラーマンガ界の巨匠であり、マンガに関心のない人たちでも名前や風貌、いくつかの作品名くらいは知っているほどの有名人です。

「赤ん坊少女」、「おろち」、「漂流教室」、「洗礼」など・・・。ここに書ききれないほどの名作群を世に送り出されていますが、意外とマイナーな存在が、今回ご紹介する

「笑い仮面」です。

 

スポンサードリンク

 

笑い仮面?ギャグマンガ?ヒーロー物?

1967年(昭和42年)に「少年画報」(少年画報社刊)で連載が始まりました。

タイトルに「笑い」とあるので、「まことちゃん」のようなギャグマンガ?とお思いの方がいらっしゃるかも。

あるいは「仮面」から、「仮面ライダー」のようなスーパーヒーローを連想なさるかもしれません。

しかし、残念ながらそのどちらでもありません。

確かにヒーロー物の要素はありますが、より正確に言うなら、「ダークヒーロー」です。

 

前半の導入部から既に怖い!

第二次世界大戦の最中の昭和15年、九州のある村で、「蟻人間」と呼ばれる奇怪な赤ん坊が
多数産まれ、日本各地で同様の現象が起こっていることが判明します。

天文学者の式島博士は、太陽の黒点が11年周期で異常に増えることに注目し、蟻人間の大量出生が太陽の異常現象によるものだと推測します。

博士は、地球が近い将来滅亡の危機を迎えるとの自説を発表しようとします。

しかし、蟻人間の詳細な情報を隠蔽していた日本軍は、式島博士を危険人物とみなし、逮捕してしまいます。

式島博士は拷問を受け、自説の撤回を迫られますが、屈しません。

この辺りまで読んだだけで、

「もう充分怖いんですけど・・・。」

と言いたくなります(泣)。

 

スポンサードリンク

 

笑い仮面誕生のシーンは、トラウマものの怖さ!

そこで軍の人間たちは、博士に金属製の仮面(鉄仮面のようなもの)を前後から被せます。

さらに、前後の面の繋ぎ目を溶接されてしまい、博士は二度と仮面を外せなくなってしまいました。

溶接の際に、溶けた金属が仮面の内部に溶け出し、仮面の中の式島博士の顔はひどい火傷を負います。博士は、熱さと痛みに苦しみ、のたうち回ります。

仮面の表情が不気味な笑い顔(江戸川乱歩の「黄金仮面」のよう)であるのと対照的です。

そして、博士は獄門島という監獄島に送られ、監禁されます。

笑い仮面誕生のシーンは、絵そのものが怖いというより、一生素顔に戻れず、醜く焼けただれた顔を仮面で覆われたままという、拷問の方法が怖いと言えます。

 

そして時は流れ、11年周期まであと1年!

式島博士は、獄門島で出会った学者の助けを借り、島から脱走しました。その後の消息は不明・・・。

そして、21年が経過した昭和36年。戦争が終わって16年後です。

式島博士が発見した11年周期によれば、蟻人間の大量出生まであと1年です・・・。

物語の最初に登場した九州のある村に、東京から一人の少年が遊びに来ました。

村人たちは、村の外れのある屋敷を、あそこではバケモノが飼われているとひどく恐れていました。そのことを知った少年は、その屋敷を探検しようとします・・・。

以降はネタバレになるので、これ以降は書けません。

Amazonで中古本を入手できます。ご興味をお持ちの方は、是非一度お読みください。

 


 

 

最後に・・・。

ただの怪奇物、ヒーロー物にはしない楳図先生の創造性には、恐れ入ってしまいます。

蟻人間も怖いのですが、その存在を隠蔽し、対策を考えようとする人を排除してしまおうとする、日本の軍部(そして政府)の方がはるかに怖いです・・・。

楳図先生の作品の根底にあるのは、

「お化けや妖怪より、やっぱり人間が一番怖い。」

という思想だと思います。

戦争から20年以上過ぎ、皆が戦時中の世相を忘れかけていた昭和42年に、この作品を日本社会に突き付けてくるところに、楳図先生の恐るべき作家性を感じます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

こちらも興味がありましたら、是非お読みください。

関連記事

こんにちは。husband(@kumafumoblog)です。今回ご紹介するのは、楳図かずお先生の短編「ねがい」です。この作品は、私にとって初めてのトラウマ漫画と言うべき作品です。「ねがい」を知ったのは、小学4年生の[…]

操り人形二体