ネタバレなし:楳図かずお「わたしは真悟」はAI時代を予言!

今回ご紹介する楳図かずお先生の「わたしは真悟」という作品は、先生お得意のホラーマンガとはやや趣が異なります。

SFマンガに分類していいでしょう。

青年誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館刊)1982年(昭和57年)8号~1986年(昭和61年)27号まで、約4年間(1986年3月までは隔週発行)連載されました。

しかし、楳図先生の作品が単なるSFに留まっているはずがなく、人間と機械、意識と自我、グローバル社会などのテーマが絡み合った、楳図ワールド全開の作品となりました。

 

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境遇の異なる二人の小学生が、産業用ロボットを通じて仲良くなる!

物語の主人公は小学六年生の男女二人。

近藤悟(さとる)は工場労働者の息子で、ごく普通の少年です。

山本真鈴(まりん)は裕福な外交官の娘、いわゆるお嬢様です。

全く異なる境遇で生きている二人は、学校の工場見学で出会い、仲良くなります。

二人の主な遊び場は、さとるの父親が勤める町工場。

新しく導入された産業用ロボット、通称「モンロー」の操作マニュアルを父から借りて熟読していたさとるは、まりんと一緒に自分たちの名前など、様々な情報をモンローに入力します。

モンローに翌日の天気などの質問をして遊んでいました。

そうした中で、質問に対するモンローの答えが徐々に変化し始めます・・・。

 

二人は離れ離れに・・・。しかし、産業用ロボットに自我が芽生える!

しかし、さとるの父は工場のオートメーション化に伴い、失業してしまいます。

そして、まりんも父の海外赴任により、日本を離れることになります。

幼い恋はそのまま終わりを迎えるはずでしたが、二人は結婚して子供を作りたいと(プラトニックな意味で)願います。

モンローに相談を入力したところ、モンローからはある指令が与えられました。

さとるとまりんは指令に従い、ある騒ぎを起こしてしまいます。

その後、二人は本当に離れ離れになってしまいました。

一方、二人がいなくなった後の産業用ロボット「モンロー」には、さとるとまりんが取った行動の直後、ある変化が起こります。

なんと、自我を持つようになったのです!

さとるとまりんを自分の父と母として認識し、真鈴の「真」と悟の「悟」を取って、

自らを「真悟」と名付けました。

真悟は、父さとるの愛を母まりんに伝えるべく、工場を抜け出して旅に出ます・・・。

 

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楳図先生はハイテク音痴だった・・・。

ここからはネタバレ防止のため、詳細は書きません。

それにしても、奇想天外な話です。

町工場の産業用ロボットが、子供二人のデータ入力がきっかけで自我に目覚め、子供たちを両親として認識し、行方を追う・・・。

楳図先生は編集者と一緒に、ある企業のロボット工場を訪れて取材し、構想を練られたそうです。

しかし、楳図先生はロボットやコンピューターにはむしろ疎かったらしく、そうした方面の背景知識がありませんでした。

そのため、作品中に出て来る、コンピューターシステムのイメージを表現した(と思われる)絵は、独特テイストでした。

昔NHK-BSで放送されていた「BSマンガ夜話」では、

「楳図さんってコンピューターとか全く分からないから、こんな不思議な絵になったんだよね。」

みたいなことが、少しバカにしたような感じで語られていました。

 

コンピューターの専門家が、楳図先生のイメージを評価していた!

しばらくして、別の雑誌か新聞かで、コンピューターの専門家二人が対談していました。

その中で、ある方が

「『わたしは真悟』に出て来るコンピューターのイメージ図みたいな絵って、実はそんなにズレてなくて、割と本質を突いてる感じですね。」

という趣旨のことをおっしゃっていました。

全くの想像で描いたイメージの絵が専門家に認められるとは、さすが楳図先生!

また、さとるの父の同僚だった人が、スクラップ置き場のコンピューターを粉々に破壊するシーンなど、いくつかのシーンではコンピューターの基盤や配線などが、実に緻密に描かれています(アシスタントはそうした絵にはタッチせず、楳図先生一人で仕上げたそうです)。

 

現代のネット社会、AIの発達を予言していた?

また、詳しいことは書けませんが、1980年代には一般社会では全く認知されていなかった、インターネットやAI(人工知能)の発展を予言したとしか思えない描写も出て来ます。

「岡目八目」(おかめはちもく)という四字熟語があり、「物事の当事者よりも、傍で観ている部外者の方が、その物事の本筋がよく分かる。」という意味です。

この言葉のように、コンピューターについては門外漢の楳図先生の方が、その後の来るべきコンピューター社会の到来を、はるか先まで見通すことができたということでしょう。

 

1980年代後半のサイバーパンクブームの先駆けだった?

この作品が連載終了した後の1980年代後半、SF小説の世界で

「サイバーパンク」

なるジャンルのブームが起こりました。

火付け役はアメリカの作家ウィリアム・ギブスンで、「クローン襲撃」、「ニューロマンサー」などの作品が日本でも刊行されました。

人間とコンピューターの融合した未来社会が描かれていました。

今になって考えると、「わたしは真悟」こそサイバーパンクムーブメントの一歩先を行く、まさしく先駆けだったのではないかと思います。

ちなみに、上記のウィリアム・ギブスンもハイテク機器が苦手で、当時既に流通していたワープロではなく、タイプライター(!)でサイバーパンク小説を執筆していたそうです。

 

最後に・・・。

この「わたしは真悟」は、2年前の2018年(平成30年)1月にフランスのアングレームで開催された、「第45回アングレーム国際漫画フェスティバル」で、遺産として永久に残すべき作品として
「遺産賞」を受賞しました。

日本人の受賞は水木しげる先生(2009年)、上村一夫先生(2017年)に続いて3人目です。

賞を受賞する、しないに関係なく、名作であることは間違いありませんが、文化の異なる外国でこの作品が認められたことについては、楳図ファンとしては素直に嬉しいです。

現在は電子書籍で読むことができ、Amazonなどで中古書を入手可能です。


 

多くの方にお読みいただきたい作品です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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