このブログでは時々、
怪奇マンガ
に関する記事を書いています。
怪奇マンガと言えば、
楳図かずお先生
の作品を扱わない訳にはいきません。
今までに
「ねがい」
「おろち」
「笑い仮面」
「猫目小僧」
「わたしは真悟」
を紹介してきました。
こんにちは。husband(@kumafumoblog)です。今回ご紹介するのは、楳図かずお先生の短編「ねがい」です。この作品は、私にとって初めてのトラウマ漫画と言うべき作品です。「ねがい」を知ったのは、小学4年生の[…]
今回紹介する
「漂流教室」
も、もっと早く扱おうと考えていました。
令和の小中学生、Z世代はどう反応?
しかし、「漂流教室」は楳図作品の中でも超メジャーな作品です。
他のブログやWebサイトでも、数え切れないほど取り上げられています。
今更このブログで扱っても仕方がないと思い、今まで避けてきました。
その作品を今回紹介する気になったのは、
「令和の小学生や中学生が『漂流教室』を読んだら、どういう反応をするだろうか?」
と思ったのがきっかけです。
小中学生のみならず、高校生以上のいわゆる
「Z世代」
の人たちが、この作品にどういう反応を示すのか知りたいところです。
50年超前の少年マンガだが、現在は青年誌でもアウト?
「漂流教室」は、週刊少年サンデー(小学館)
1972年(昭和47年)23号〜1974年(昭和49年)27号
に、およそ2年間連載されました。
少年サンデーコミックス版で全11巻、文庫版で全6巻。
文庫版は、今でもネット通販で入手可能のはずです。
2024年(令和6年)1月から50年超、半世紀も前の作品です。
ただ、問題はいわゆる
「ジェネレーションギャップ」
ではありません。
「内容のハードさ」
が問題なのです。
楳図先生のマンガなので、ありきたりの展開にはなりようもありません。
正直
「50年前とはいえ、よくこの内容を少年マンガ誌に載せたよな・・・。」
と思ってしまいます。
令和の今では、少年誌はおろか青年マンガ誌でも、掲載できるか微妙なレベルでしょう。
現在の基準では、間違いなくアウトとなるようなシーンが満載なのです・・・。
始まりはこんな感じ!
第一話の冒頭では、主人公の小学6年生、
高松翔
が母親とケンカをし、気まずい雰囲気のまま学校へ登校します。
遅刻ギリギリで急いでいる時、同じ6年3組の男子児童と一緒になります。
ところがその児童、山田信一は給食費を入れた袋を、家に忘れてきたことに気付きます。
遅刻覚悟で家に戻る信一と別れ、翔はギリギリで学校に着きます。
そして授業を受けている時、突然大きな爆発音が!
翔たちが気付いた時には、学校の外は真っ暗。
そして、あるべきはずの周囲の建物が、何一つない・・・。
後に判明するのですが、翔たちのいる大和小学校は、何者かが学校に仕掛けたダイナマイトの爆発がきっかけで、
未来の日本へとタイムスリップ
してしまったのです。
しかし未来の世界(もちろん日本も)は、戦争や公害のせいで荒廃。
人類は滅んでいたのでした・・・。
子供たちだけで絶望の世界をサバイバル!
ここから先の詳しい展開は、ネタバレ防止のために書かないでおきます。
ただ、前述したように楳図先生の作品です。
教師たちと小学生たちが一致団結し、助け合って生き延びようとする、典型的なサバイバルマンガとは全く異なります。
教師たち大人が全く頼りにならず、むしろ子供たちへの脅威となってしまいます。
最終的には、子供たちだけで生き延びようとします。
しかし、何と言っても荒廃した未来世界です。
現代では見たこともない、不気味な怪物・生物が襲ってきます。
公害による異常気象、病気、飢餓なども、容赦なく小学生たちを苦しめます。
その間に、当初800人ほどいた児童数も、じわじわ減少。
そして、大人と同様に子供たちの間でも、
対立・裏切り・相互不信
といった
「内なる危機」
が噴出します。
そうした状況の中、投票で総理大臣に選ばれた翔は、
クラスメイトの川田咲子
5年生ながらIQ230の天才児、我猛(がもう)
たちの助けを借り、絶望の未来世界で何とか生き延びようと奮闘します・・・。
現代の基準ではアウトな描写がてんこ盛り!
この作品では、とにかくエグい描写、現代の表現基準ではアウトな描写が、これでもかと続出します。
大人が子供を殺しまくったり、食糧を独り占めしたり、小学生が謎の生物に殺されたり、手術が行われたり(誰が執刀?)・・・。
ここでは書けない内容も多数含まれています。
1972年〜1974年当時の小中学生は、毎週どういう気持ちでこのマンガを読んでいたのでしょうか・・・。
何かの雑誌で読んだ記事では、午前中の休み時間に「漂流教室」を読んだ小学生が、あまりの気持ち悪さに
給食が食べられない状態
となったそうです・・・。
現代では、主人公の母親が大暴走!
一方、作中の現代日本では、残された翔の母親である恵美子が、傍から見ると
ショックで頭がおかしくなった
と思われるような、数々の奇行を繰り返します。
実は、未来に飛ばされた小学生の一人、
5年生の西あゆみ
には、不思議な能力が備わっていました。
あゆみを通じて、未来の翔の様子の一部が、恵美子の意識にも伝わっていたのです。
翔や他の子供たちの危機を救うため、恵美子は猪突猛進で行動します。
都心の高級ホテルの一室で、壁に穴を開けてナイフを埋め込む
近所の薬局をハシゴして、抗生物質を大量に買い込む
など、周囲には理解できない行動ですが、母親としての愛に突き動かされた恵美子は、なりふり構わず暴走列車のように突っ走ります。
こちらのサイドストーリーも、本筋に劣らぬ過激さです。
最後に・・・。
他の楳図作品の記事でも書きましたが、楳図先生には
「子供向けマンガだから、こうした内容や表現は止めておこう。」
などという考えが、微塵もありません。
カルピスの原液を水で薄めず、コップになみなみと注いで差し出してくる感じです。
「漂流教室」は、その最たるものでしょう。
令和の若者・子供たちは、
「表現の(自主)規制」
という水でかなり薄められた、21世紀のマンガ・アニメなどに囲まれて生きてきました。
そうした彼らに、この作品をまともに読める
「耐性」
は備わっているでしょうか?
あの名作
「はだしのゲン」
を、
「子供には不適切な残酷描写がある。」
として図書館・図書室から撤去した某地方都市では、「漂流教室」は有害図書扱いされるかもしれません・・・。
ですが私としては、できるだけ多くの若者・子供に「漂流教室」を読んで欲しいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。