カルト漫画家「徳南晴一郎」作品で時空を超えられる?

皆様は

「徳南晴一郎」(とくなみ せいいちろう)

というマンガ家をご存知でしょうか?

このブログではマンガ作品の記事も10本以上書いています。

ただ、マイナー作品の話でも、作者は有名な大御所マンガ家というパターンでした。

今回ご紹介する徳南晴一郎は、

「断トツのマイナー作家」

です。

「カルトマンガ家」

と呼んで差し支えありません。

 

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60年近く前、30歳手前で廃業したのだが・・・。

既に故人ですが、マンガ界では全く売れなかった無名作家です。

今から60年近く前に、30歳手前でマンガ家を廃業しています。

メジャー雑誌で連載を抱えたことも、ヒット作を出したこともありません。

そんなマンガ家が、なぜ今でも一部のマンガファンに名前を知られているのでしょうか?

その理由は、徳南が残した作品の

「特異性」

にあります。

 

貸本マンガでデビュー、上京したものの・・・。

徳南の略歴を簡単にご紹介します。

1934年(昭和9年)大阪市北区に生まれます。

元々は「とくなん」という苗字の読み方でしたが、30歳で「とくなみ」に改めています。

幼い頃の病気による「小人症」で、身長が140cmしかありませんでした。

少年時代はちょうど第二次世界大戦の最中で、身体が小さいのと苗字の「とくなん」が

「こくなん」(=国難)

に似ていたことで、ひどいイジメにあっていたそうです。

大阪の高校を卒業して、一時期はあの石ノ森章太郎先生が若き日に主宰なさっていた同人誌

「墨汁一滴」

に参加していたとのこと。

そして、1955年(昭和30年)頃に「貸本マンガ」でデビューを果たしました。

23歳で上京し、一時期は

「市川誠一」

名義で青春物の作品を発表していました。

1962年(昭和37年)には本名で、後でご紹介する

「怪談 人間時計」

「猫の喪服」

という怪談物作品を発表。

その頃一度結婚しましたが、すぐに離婚。

以降は戦国武将物の作品を描きましたが、全く売れず。

1963年(昭和38年)にはマンガ家を廃業しました。

 

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その後は勤め人として一生を終えた、マイナー作家だった・・・。

しばらくして大阪に戻り、実家のパン屋の手伝いをしていましたが、店は閉店の憂き目に。

それからは業界紙新聞社、セールスマン、タクシー会社の無線手配など、職を転々としました。

マンガ家には二度と戻りませんでしたが、趣味で油絵を描き、展覧会への入選歴も持っています。

2009年(平成21年)12月に死去。

略歴だけ見れば、若い頃にマンガの世界に飛び込んだものの、夢破れ故郷に帰り、勤め人として一生を終えた一人の

「平凡な男性」

と表現するしかありません。

本来ならばマンガの歴史の中で語られるはずのない、超マイナー作家です。

 

廃業して16年後に作品が復刻!そして平成に、サブカル雑誌が注目!

しかし、徳南の予想しなかった出来事がきっかけで、徳南作品が甦ることとなりました。

1979年(昭和54年)に、前述した

「怪談 人間時計」

が400部ながら限定復刻されたのです。

これにより、一部のマンガマニアからカルト的な人気を得ることとなりました。

しかし、これだけなら、ごく限られたマニアの世界だけで知られるマンガ家で終わったでしょう。

1990年代、平成の世になってから、

サブカルチャー雑誌「Quick Japan」

で知られる太田出版の

「消えたマンガ家」

という本で、徳南作品が紹介されたのです。

そして

「怪談 人間時計」(「猫の喪服」も収録)

や、現代青春物作品数編を収録した

「ひるぜんの曲」

が太田出版から復刻出版されました。

徳南がマンガ家を廃業してから三十数年後に、サブカルチャーの範囲内ではありますが、陽の目を見たのです。

 

徳南マンガは、絵が強烈に下手!

最初に、徳南マンガが「特異性」を持つことに触れました。

その特異性は二つありますが、それらが余りにも強烈だったため、カルト的な人気を得ることとなりました。

まず一つ目の特異性は

「絵が異常なまでに下手」

という点です。

我々素人は簡単に

「このマンガ家、絵が下手だよな。」

などと言います。

しかし、雑誌に載ったり単行本化されるマンガ家の絵は、やはり一定以上のレベルに達しています。

ところが、徳南の絵は正直に言って

「プロのレベルからは程遠い」

のです。

まずデッサンからして歪んでいます・・・。

そして、遠近法からも大きく外れています。

また、人物も背景も、描き方が雑としか言いようがありません。

人気テレビ番組

「アメトーク!」

で定期的に

「絵心ない芸人」

特集が放送されますが、そこに登場する芸能人の絵の方がまだ上手いくらいです。

かと言って笑える画風でもなく、思い切り不気味さを漂わせています。

徳南は美術の学校にも通ったことがあるそうですが、そうした感じは全く見受けられません。

怪奇物ならまだしも、青春物の作品だと、ストーリーよりも絵の下手さに気を取られてしまいそうになります。

 

シュール過ぎて理解不能のストーリー!読めば脳内トリップ可能!

続いて二つ目の特異性は

「ストーリー展開のシュールさ」

です。

「怪談 人間時計」と「猫の喪服」を私が初めて読んだのは、20年以上前。

太田出版の復刻版でした。

当時の感想は

「人間が麻薬を摂取してトリップしたら、こういう幻覚を見てしまうのでは?」

でした。

二作品とも、話の展開がキテレツというか支離滅裂で、ストーリーを文章で簡潔にまとめるのは無理です・・・。

徳南は薬物などは決して使用していなかったはずです。

ハイになってトリップしていない

「シラフ(素面)」

の精神状態で、ここまで不思議な作品を描けてしまったこと自体、ある種の奇跡です。

絵の歪み具合とストーリーのブッ飛び具合が、何とも奇妙な

「化学反応」

を起こしています。

また、「ひるぜんの曲」も読みましたが、収録されている青春物作品のいずれも

「絵が下手過ぎてインパクトがあり、ストーリーはどうでもよくなる」

作品ばかりでした。

違法薬物など使わずとも、この人の作品(特に「怪談 人間時計」と「猫の喪服」)を読めば、

「脳内トリップ」

が可能です。

警察に逮捕され、人生を棒に振る心配なく

「時空を超越できる」

のです。

このことを多くの人々、特に若者たちに伝えたいと思います。

 

最後に・・・。

太田出版復刻版の「怪談 人間時計」は、Amazonなどの電子書籍で購読可能です。

「ひるぜんの曲」は、中古本としてネット通販で購入可能です。

「最近、刺激が足りないな・・・。」

とお思いの貴方に、是非お勧めしたい作品です・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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