「内容証明」郵便を送った人、あるいは受け取った人は、かなり少ないのではないでしょうか。
そもそも、「内容証明って何?」とお思いの方も多いでしょう。
「内容証明」とは、郵便の送り人が相手方に送った郵便物の内容すなわち中身、そして相手方に郵便物を間違いなく送達した旨を証明してくれる制度です。
経済ニュースや芸能ニュースなどで、時折企業や芸能事務所がトラブルや誹謗中傷の相手方に、内容証明郵便を送付したという報道があります。
また、弁護士事務所から訴訟一歩手前の警告文が送られることもあります。
内容証明郵便はどういう時に使う?
通常の郵便だと、郵便の中身がどんな内容なのか証明することができません。
送り人が「A」という内容だったと主張しても、受取人は「B」という内容だったと反論する場合がありえます。
また、郵便自体が届いていない、よって送り人の主張は全く知らなかったと言われる恐れもあります。
そうしたことを避けるために、内容証明郵便が利用されます。
金融機関では、返済の滞っている顧客に対して送付される郵便に、しばしば用いられます。
売買契約解除の「クーリングオフ」制度でも、消費者が契約解除の意思表示をする際には、内容証明郵便によって行うのが通例です。
内容証明郵便には、色々な規定がある!
但し、内容証明郵便には書式や部数などに細かい規定があり、普通に書いた手紙などをそのまま郵便局に持ち込めばよい、という訳ではありません。
まず、1ページの字数・行数は20字×26行、または26字×20行と定められています。
句読点や括弧の(なども一文字と数えられます。例えば(1)だと、三文字と数えられます。
この規定に反していると、受付そのものがなされません(窓口の人がチェックします)。
そして、本文と封筒にそれぞれ書かれる、送り人及び受取人の名前・名称と住所の表記は、完全に同じでなければなりません。
「そんなこと当たり前じゃないか!」
と思われるかもしれません。
しかし、例えば本文で「2丁目」という表記なのに、封筒には「二丁目」と記入すると、同じとは見なされません。
本文が「2-3-5」なら、封筒の表記も「2丁目3-5」ではなく「2-3-5」と、一言一句同じにする必要があります。
また、株式会社と㈱というような省略形も、同一ではないとされてしまいます。
そして、本文の文書は全く同じものを3部作って、封筒と一緒に郵便局に持ち込みます。
2ページ以上になる場合は、割印(ページとページの間に印鑑を押す)が必要です。
1通は受付印が押され、送り人にその場で返却されます。
1通は封筒で相手方に郵送されます。
最後の1通は、受付した郵便局が保管します。
内容証明郵便はどのように配達される?
相手方への郵便封筒は、一般書留で送達されます。
郵便受けに入れられて終わりではなく、玄関先で本人または家人に直接渡されます。
送達がなされたら、宛先の管轄郵便局から送り人宛に、送達が無事なされた旨のハガキが届きます。そうなれば、「送った」、「受け取っていない」というトラブルは起こりません。
しかし、宛先に相手方が既に居住・所在していない場合や、留守で手渡せず郵便局に留め置かれ2週間が経過した場合、郵便は送り人の元へ返戻されます。
内容証明郵便の料金は?どこの局でも受付してくれる?
内容証明郵便を一人あるいは一カ所に送る場合の料金は、日本郵便のWebサイトによると、
基本料金 + 一般書留の加算料金 + 内容証明の加算料金 となります。
内容証明の加算料金は、1枚のみなら440円、2枚目以降は1枚ごとに260円増となります。
全ての郵便局で内容証明郵便を取り扱っているわけではないので、要注意です。
街中の小さい郵便局では取り扱っておらず、ある程度規模の大きい郵便局へ出しに行く必要があります。最寄の郵便局で受付してくれるか、事前に確認してください。
内容証明のもう一つの効力とは?
内容証明にはもう一つ重要な効力があります。
改正民法150条1項によると、
債権者が債務者に返済の請求を行うと、6ヶ月間時効を中断させることができます。
この場合、○○年△月××日付で請求したという証拠を残すため、実務上は内容証明郵便で請求文(催告書と言われます)が送付されます。
但し、この6ヶ月以内に裁判所へ訴訟を申立しないと、最初から時効は中断しなかったことになり、時効が完成してしまう場合もあります。
再度内容証明を送付しても、再度の時効中断効は発生しないことに要注意です!
最後に・・・。
ちなみに、債務者が債権者から債務の返済を求められているが、既に時効が完成している場合、債務者が債権者に対して「時効の援用」を主張しないと、いつまでも請求され続けます。
この場合も、一般的には内容証明郵便で行います。
但し、本当に時効が完成しているかどうか確信がなければ、弁護士に相談した方がいいでしょう。
債務者の中には、時効が完成していると誤って思い込み、自分で内容証明を作成して送付してくる人が時々います。
そうなると、回収担当者は時効中断のため(そういう案件に限って、あと数ヶ月で本当に時効完成予定のことが多い)、反対に債務者に内容証明を送付した上で、訴訟申立手続を行います。
「寝た子を起こす」結果になってしまうこともあるので、慎重を期するべきでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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