「過払い金」で成り上がった法律事務所がある!

テレビやラジオでは毎日のように、弁護士法人や司法書士法人のCMが流れています。

皆様も

「過払い金返還」

という言葉は見聞きなさったことがあるはずです。

借金すると、大抵は元金に利息が付きます。

ただ、利息の利率は自由ではなく、法律で上限が定められています。

その上限を超えた部分については、たとえ債務者が一旦支払ってしまっても、「過払い金」として債権者に返還を請求できます。

 

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最高裁判決がきっかけで、二つの法律の金利差が撤廃!

2010年(平成22年)6月17日までは、

「利息制限法(最高で年20.0%)」

「出資法(最高で年29.2%)」

という二つの法律の間に、9%超の金利差がありました。

そのため、その金利差が

「グレーゾーン金利」

として存在していました。

利息制限法には行政処分しか規定がありませんでしたが、出資法には刑事罰の規定があるため、

多くの貸金業者は

「利息制限法を超えるが、出資法は超えない」

範囲の利率を設定していました。

年30%近い、信じられない利率がまかり通っていました。

ところが、2006年(平成18年)1月13日最高裁判決

「利息制限法を超える利息の支払いは過払いであり、債務者は債権者に過払い金の返還を請求できる。」

との判断が下されました。

この判決に基づき、4年後の2010年6月18日に改正貸金業法が施行され、出資法の上限利率も年20.0%に引き下げられました。

 

弁護士や司法書士が請求手続を代行、貸金業者には巨額の返還負担が!

しかし、最高裁判決はあくまでも

「債務者が過払い金の返還を請求できる。」

と判断しただけで、

「債権者は自主的に過払い金を返還すべし。」

とは言っていません。

よって、債務者の代わりに過払い金返還請求の手続事務を行う存在として、弁護士や司法書士がCMや広告で猛アピールを始めたというわけです。

「2010年6月17日以前に借入を始めたこと」

「借金の完済から10年以内であること」

といった条件はあるものの、かなりの数の債務者あるいは元・債務者が貸金業者に対し返還請求を行いました。

請求されれば過払い金の返還に応じざるを得ず、巨額の返還負担を背負った貸金業者たちの経営状況は悪化しました。

大手消費者金融も、最大手だった武富士が倒産。

アコムとプロミスは、それぞれメガバンクの傘下に入ることとなりました。

 

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当初は司法書士が積極的に前面に。しかし弁護士が・・・。

一方

「過払い金特需」

によって、弁護士や司法書士の中には大きな利益を得た人たちもいます。

当初は、司法書士が圧倒的に前面に出ていました。

テレビ・ラジオCMや電車内の広告でも

「~法務事務所」

などといった司法書士事務所の宣伝がバンバン出ていました。

これに対し弁護士の方は、

「派手に宣伝して過払い金返還の仕事で稼ぐのは、弁護士の品位にかかわる。」

のような否定的な雰囲気があったようで、初期にはあまりCM・広告を見聞きした記憶がありません。

しかし、司法書士が弁護士の領域にどんどん食い込んで来る事態となりました。

そのため、日本弁護士連合会(日弁連)や各地の弁護士会から

「過払い金返還請求を金額にかかわらず行えるのは、弁護士だけのはず。司法書士の中には、完全に範囲を逸脱して業務を行っている人たちがいる。」

といったクレームが上がりました。

一時期はマスコミでも取り上げられる事態となりました。

現在は、個別の債権額140万円以下の場合に限り、司法書士も業務が可能となっています。

 

10年を超えた現在も宣伝は継続中。その間に稼ぎまくり、成り上がった弁護士も!

以降、一部の弁護士や弁護士法人は過払い金返還請求の業務を拡大して行きました。

2021年(令和3年)6月現在も、大小様々な弁護士法人がCM・広告でアピールを続けています。

中には、全国各地に事務所を開いている、まるで大手飲食店チェーンのような弁護士法人もあります。

また、以前は小さい雑居ビルの一室に事務所を構えていたのに、

「過払い金バブル」

の追い風に乗って大きな利益を上げ、オシャレなビルの大きな部屋に引っ越した弁護士法人もあります。

 

以前仕事で関わった弁護士事務所が、一等地のオフィスビルに転居していた!

私が債権回収の仕事に携わっていた頃、ある法律事務所と何回か破産絡みで、電話や文書のやり取りをしました。

当時はまだ弁護士法人化していませんでした。

裁判所近くで法律事務所が集中するエリアの、割とこじんまりしたビルに事務所がありました。

在籍弁護士も、4~5人くらいだったと思います。

数年後、同僚から仕事の件で質問を受けた際、見せてもらった書類の中に、その事務所の名前がありました。

法人化しており、「弁護士法人 ○△□法律事務所」となっていました。

そして驚くことに、住所が

「繁華街の一等地にある某有名オフィスビル」

になっていたのです・・・。

在籍弁護士も、20人近くに増えていました。

同僚曰く

「ここの事務所、過払い金返還請求の仕事でかなり儲けたらしいよ。」

 

最後に・・・。

数年でここまで成り上がれるなんて、過払い金返還請求はよほどオイシイ業務だったんだ・・・。

私は驚くと同時に、「過払い金特需」の凄まじさを改めて知ったのでした・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。