お金の「重み」を感じたことありますか?

お金や法律などの話(夫)

債権回収の仕事では、実際に現金を扱うことは意外と少ないです。

ほとんどの回収は、振込によるものです(銀行や郵便局、コンビニから)。

担保不動産の売却による回収でも、取引場所が金融機関の場合、基本的に債権者は振込依頼票を書いて渡すだけ。後は金融機関が振込手続をしてくれるので、たとえ何千万円の回収でも、現金を実際に見たり触れたりすることは滅多にありません。

しかし、債務者や連帯保証人が現金を持参する場合もあり、その場合は当然受領し、領収証を交付します。

中には、100万円単位の現金をアポなしで持参して完済する人もいて、ビックリする時があります。

連帯保証人がかき集めた旧札の束は、別格の重さだった・・・。

10年以上前のある日のことです。

昼休みに電話当番で席にいた時、私が担当している債務者の連帯保証人が、アポなしで訪ねて来ました。

こういう時は、あまりいい話ではないことが多いので、不安を覚えながら面談ブースに案内しました。

連帯保証人は70歳台の女性で、債務者(女性)の妹でした。

女性は、カバンから透明のビニール袋を取り出すと、こちらに差し出してきました。

「元金の残りに、少しだけ色を付けた(損害金を加えた)金額を持って来ました。これで完済ということにしてもらえませんか?」

と、こちらに頭を下げました。

ビニール袋の中には、古い紙幣が輪ゴムで束ねられていました。

金額確認のため、紙幣を数え始めると、1万円札だけでなく、5千円札や千円札も混じっていました。

総額は、何と170万円!

元金残が150万円ちょっと、残り20万円弱が遅延損害金となります。

「今まで少しずつお返ししてきたけど、もう年だし、いつまで返し続けられるか分かりません。コツコツ貯めてきたお金と、親戚が事情を知って援助してくれたお金の合計がこのお金です。何とかお願いします。」

ありがたい話ですが、すぐには判断できず、一旦席を外して席に戻りました。上司は昼食から戻って来ていましたので、経緯を説明しました。

そして、損害金引き下げの上で完済とする旨、了承を得ました。入金処理をし、領収証を女性に手渡しました。

「ありがとうございました。助かりました。これで気分が楽になりました。」

女性は何度も頭を下げて、帰って行きました。

回収した現金を経理部門に持っていくため、お札を揃えて封筒に入れたのですが、連帯保証人の女性の今までの努力、苦労、心労などがお札に乗っかっている気がして、札束は心なしか重く感じました。

担保不動産の売却の場合などは、この時よりはるかに大きい金額を回収することが多いですが、この時のお金の「重さ」は別格でした。

毎月10万円を現金で払いに来る人がいた。

20年近く前のことです。同じ課の同僚が担当していた債務者の人は、毎月月末頃になると、終業時刻を過ぎた午後5時30分近くに、事務所にやって来ます。そして、毎月の約束の10万円を現金で払って帰ります。

その人は、事務所から割と近い所で事業を継続していました。仕事が夕方過ぎに一段落するので、その時にお金を持って来るそうです。

時には、担当者が帰った後に来るので、私や他の人が代わりにお金を受領し、入金処理をして領収証を渡すこともありました。

「専用の振込用紙でご入金頂けば、振込手数料もかかりませんし、わざわざお越し頂くお手間も要りませんよ。」

私が代わりに応対した際に、そう伝えたことがあります。

すると、その人はこう言いました。

「担当の方からも、そう言われてます。でも、自分が借りたお金だから、毎回自分で直接渡しに来たいんです。」

この人なりの考え方で、筋を通しているのでしょう。

毎月遅れず、欠かさず返済していて、元金残額も着実に減っていました。

こういう人だったら、まず間違いなく完済してくれるだろうと思いました。

手渡しされる10万円も、何とも言えない重みがありました。

連帯保証人が宝くじに当たり、一括完済!

12~13年ほど前、同僚の担当する債務者から、「完済したい。」という申し出がありました。元金残額が3,000万円超だったので、同僚が理由を聞くと、

「嫁さんが宝くじのBIGで1億円ほど当たった。」

とのことでした。

奥さんが連帯保証人だったのです。

数日後、夫妻が現金を持参しました(大金ですので、担当者は銀行振込を勧めたのですが、直接持って行きたいと要望したそうです)。

担当者に加え、私ともう一人の同僚が、金額確認や入金処理のために同席しました。

銀行の帯封がされた新札の束を、手に取って確認し始めた時は、BIGの賞金が原資だと知っていたので、割と事務的に作業をしていました。

その間、担当者との雑談の中で、奥さんが

「借金がなくなって、やっと肩の荷が降りました。これで、主人とも離婚できますわ。」

と、笑いながら語ったので、ビックリしました。冗談半分だったのかもしれませんが、なかなか厳しい台詞です。

夫である債務者は、横で苦笑いしていました。

ちょっとした人生のドラマの一幕を見たせいか、数えているお札も少しばかり重くなったように感じました。

最後に・・・。

最近はキャッシュレス化が進み、我々の日常生活でも、現金を手にする機会が段々減ってきています。

しかし、現金には色々な人の色々な感情が詰まっています。

この感覚は忘れないようにしたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。