5月13日のニュースで、カジノ・メジャー(大手カジノ運営企業)のトップ企業「ラスベガス・サンズ」が、日本のカジノへの参入撤退を表明したと報じられました。
なかなか法整備が進まない日本政府への揺さぶりだという見方もありますが、会長自身がWebサイトで公式に表明していますので、単なる脅しとは思えません。
なぜ最大手が撤退したのか?
もともとサンズ(シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズも運営しています)は日本への参入に積極的でしたが、
(1) 世界中のカジノがコロナ禍で苦境(サンズも業績が大幅に悪化)
(2) 日本のカジノ設置の条件が、巨額投資に見合わず
(3) 銀行がカジノへの融資に消極的
というのが主な理由です。
日本にはどんな影響がある?
日本国内で正式にカジノ誘致に動いているのは、横浜市、大阪府、和歌山県、長崎県の4つです。
しかし、カジノ運営会社はやはり都会にカジノを開きたいのです。
よって、横浜市と大阪府は断然有利と見られていました。
大阪に至っては、MGMリゾーツ(カジノ・メジャーの一つ)とオリックスの共同チームが、業者として選定される可能性が大・・・だったのですが。
6月4日、大阪市の松井一郎市長が、事業者選定手続や開業時期を半年~1年ほど延期することに言及。そして同月23日には、大阪府と大阪市が、今年9月頃の予定だった事業者選定を、「当面延期する。」と発表しました。
松井市長によると、「2026年度末までの全面開業」という条件の変更もあり得るそうです。
大阪もコロナ禍の影響で、今はカジノどころではないのかもしれません。
また、サンズが参入の本命地と考えていた横浜市(菅官房長官の地元)では、「ハマのドン」と呼ばれる港湾業界の大物が、カジノ誘致に猛反対していました。
サンズは「ゆくゆくは東京でも開業したい。」という思惑を抱いていたようですが、自分たち及び候補地の現状を考えると、計画通り開業できる見込みがない現実を理解し、参入を断念したのではないでしょうか。
カジノ業界に未来はあるか?
カジノの本場アメリカでも、カジノ業界を支えてきた金融業界が、カジノ事業への融資に懸念を抱いているそうです。
また最近は、今までカジノにやって来て多額のお金を落として行った富裕層が、オンラインカジノなどの「オンラインギャンブル」にシフトし始めている現実があります。
欧米ではオンラインギャンブルが結構浸透していて、数年前には有名サッカークラブのユニフォームスポンサーになった企業もありました。
コロナ禍の中でわざわざカジノへ足を運ばずとも、自宅でギャンブルを楽しめるなら、それで構わないという人が増えても不思議ではありません。
カジノへの幻想は捨てるべき!
そもそも、
「カジノにホテルやレストラン、テーマパークをくっつけて、IR(統合型リゾート施設)って形にすれば、海外からの観光客を増やせて、お金を地元に落としてもらえるぞ!」
という発想が既に時代遅れです。
カジノ事情に詳しい専門家によると、IRの中で本当に成功しているのは、シンガポールやラスベガス、マカオの一部くらいしかないそうです。
アメリカのアトランティックシティーは、かつてカジノで栄えましたが、今や寂れた地方都市です。
トランプ大統領も、ここでカジノを複数経営していましたが、いずれも経営不振により手放しました・・・。
日本はシンガポールの真似をする必要があるのか?
カジノ誘致の過程で、日本はシンガポールをお手本として、成功のイメージを思い描いているようです。
しかし、それが上手く行くでしょうか。
シンガポールは日本よりもはるかに小さい国です。
天然資源に恵まれているわけでもなく、人口も少ないので、目立った産業もありません。
そのため仕方なく、外国の金融機関を誘致してアジアの金融ハブを目指し、外国の優れた研究者を高額の報酬で招聘し、カジノを含むIRで観光客を呼び込んでいます。
シンガポールは、世界で存在感は示しているものの、独自の文化や革新的な技術などを生み出せる国ではありません。
シンガポール政府も、それを承知の上で、国家の存続のために現在の政策を進めているはずです。
日本がその真似をするのは正しいと思えません。
ギャンブルと観光に国の成長を託すようでは、もはや日本を先進国と呼ぶことはできないでしょう。
学力向上への執着とカジノ推進が矛盾している!
ここ数年、国際的な学力テストで日本の順位が低下しており、子供の学力低下が危機感を持って受け止められています。
英語やプログラミングの早期教育、公立の中高一貫校の推進など、様々な対策が実施・検討されています。
疑問を抱く点も多いですが、子供の学力向上への取り組み自体には賛成です。
子供たちには学校で
「真面目に勉強して、社会に出たら一生懸命働きなさい。ギャンブルにハマったら人生が狂ってしまうぞ。」
と教えることになりますし、教えるのが筋でしょう。
一方で、いい歳した大人たちが雁首揃えて、外国人がギャンブルで落とすお金を当てにし、そのための施設の誘致・建設に夢中になっているのは、大いなる矛盾です。
コロナ禍による自粛期間中、営業を続けるパチンコ店が非難・中傷の嵐に晒され、世間から袋だたきに遭ったのは記憶に新しいところです。
ウイルスの感染拡大への恐怖が原動力でしたが、
「日本人はギャンブルに対して厳しい目を向ける人が多いのだなあ。」
との印象を受けました。
カジノは外国人が主なターゲットで、日本人には利用制限があるとはいえ、ギャンブル施設であることは同じです。
なのに、カジノには異常なほど甘いように思います。
最後に・・・。
コロナ禍により、不況がアクセル全開になった日本では、我々の生活はこれからますます不安定になっていきます。
そんな中、国や地方自治体がカジノという甘い夢にうつつを抜かしていては、日本は本当に「後進国」になってしまうのでは・・・と心配になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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