皆様は、「口裂け女」の話をご存知でしょうか?
1978年(昭和53年)頃から、主に小学生の間で広まり始めた噂です。
翌1979年(昭和54年)には日本全国に拡大し、社会現象化しました。
今で言う「都市伝説」のハシリというべき話です。
口裂け女に出会うと・・・。
夜道を歩いていると、マスクをした女性に呼び止められます。
そして、
「私、きれい?」
と問い掛けられます。
「はい。」と答えると、
「これでもかい?」とマスクを外します。
女性の口は耳元まで大きく裂けていて、襲い掛かってきます。
「いいえ。」と答えると、
いきなり包丁やハサミで襲われます。
どう答えても、結局襲われます・・・。
以上が、「口裂け女」の話の骨格です。
地域によってはアレンジがなされ、新しい要素が加わりますが、
基本的な筋は同じです。
噂をリアルタイムで体験!
私は、1979年(昭和54年)にこの噂を直に体験しました。
7月初め、夏休み直前のある朝のことです。
通っていた小学校では、時々「集団登校」が行われていました。
当時は団地住まいでしたが、団地の前に、各々の棟ごとに小学生が集まり、一緒に登校しました。
その日は集団登校日で、私は自分の住む棟の前で、他の子たちと合流しました。
出発する直前、上級生(5年生か6年生)の男の子が、
「みんな、『口裂き女』の話知ってる?」
と聞いてきました。
私を含む他の子は知らなかったので、その男の子は説明を始めました。
その話は、上記の話とほぼ同じでした。
ただ、その子はずっと「口裂き女」と言っていました。
「この団地の○○棟の子のお姉ちゃんが、口裂き女に襲われそうになったらしい。」
との情報も聞きました。
学校に行き、同級生に聞いてみると、この話を知っている子が結構いました。
しかし、その後2週間ほどで夏休みとなってしまったため、学校ではこの話題はあまり盛り上がりませんでした。
「コロコロコミック」に口裂け女のマンガが・・・!
夏休みに入ってしばらく経ったある日。
私は小学館の「コロコロコミック」を毎月読んでおり、最新号を親に買ってもらいました。
さっそく読み始めると、
「怪奇!口裂け女」という読み切りマンガが掲載されていました。
私はここで、正しい呼び名は「口裂け女」だと知りました。
マンガ自体はかなり怖かった覚えがありますが、トラウマとして残るほどではありませんでした。
他の子供向け雑誌では、口裂け女は男性用整髪料のポマードが苦手だという、よく分からない情報が載っていました。
夏休みが終わり2学期が始まると、口裂け女の話は、まるで最初からなかったかのごとく、話題に上らなくなりました。
21世紀にも語り継がれる「元祖 都市伝説」に!
その後、大人になってから都市伝説関連の本を読むと、
「整形手術に失敗して口に大きな傷跡が残った、実在の女性がモデル。」
「精神病院から脱走した女性の逃走話が、デマに変化した。」
など色々な説が紹介されていました。
そうした諸説の中で、私が興味を惹かれたのは
「アメリカ軍による実験」説です。
デマがどのように拡大し流布していくのかを研究し、軍事戦略に利用しようとしていたアメリカ軍が、日本政府の了承を得た上で、子供向けで実害の発生しない「口裂け女」のデマを、人工的に流して実験を行ったというものです。
他の本やインターネットでは、CIA(アメリカ中央情報局)が行ったとの説もありました。
「口裂け女」が、デマの拡散途中で「口裂き女」に変化したのは、まさしくデマの特徴の一つです。
また、「兄の友達の弟」、「親戚の女の子の先輩」が体験したという、間接的な話ばかりで、直接体験者の話がないというのも、デマにありがちです。
色々な人々が真相の解明を試みましたが、結局「口裂け女」騒動の真相は謎のままです。
時代が平成に変わってから、口裂け女の話はホラー映画・DVDの題材に何度もなっていますが、我々の小学生当時のようなフィーバー(死語ですね・・・)には至っていません。
最後に・・・。
21世紀、2020年の現在も、噂やデマの類は簡単に広まります。
インターネットが飛躍的に発達し、SNSが昔よりはるかに速く、はるかに広範囲にそうした話を広めていきます。
ただ、昔よりも悪意の強い、笑えない噂やデマが多くなっている感じです。
人間って、なかなか進歩しない生き物なのでしょうか・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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