皆様は
「いかれこれ」
という言葉をご存知でしょうか?
標準語の言葉ではなく、「広辞苑」にも載っていません。
関西弁、とりわけ大阪弁の語彙です。
河内地方(大阪府東部)の発祥
岸和田の地元言葉
など諸説ありますが、語感からしてあまり上品な言葉とは言えません。
若い人たちには、
「『いかれこれ』って、一体どういう意味?」
と言われる可能性が高いでしょう。
『してやられた』ニュアンスが出ている!
では、一体どういう意味かというと、
「(まんまと)してやられた」
という意味が一番近いです。
「先週の土曜日、草野球の試合で隣町のチームにボロ負けした。」
「あのチーム、そんなに強かったか?」
「先月から入ったサードの選手、実は甲子園に出たことあるんや。ホームラン3本打たれたわ。」
「それはホンマに『いかれこれ』やな。」
という具合に使われます。
『踏んだり蹴ったり』の意味も!
また、標準語で言うところの
「踏んだり蹴ったり」
という意味も持っています。
「今日は寝坊して遅刻するわ、スマホを家に忘れるわ、コーヒーをズボンの上にこぼすわ、『いかれこれ』の一日やった。」
のように使われます。
ところで、この「いかれこれ」を英語でどう表現すればいいでしょうか?
『してやられた』は『相手が上手』と解釈!
「してやられた」を大修館書店 ジーニアス和英辞典で調べると、
「be cheated 」
「be deceived」
「be taken in」
などと表現されています。
「だまされる」
「ひっかかる」
というニュアンスになっています。
それだと、「いかれこれ」のニュアンスがうまく伝わりません。
そこで
「してやられた」= 「相手の方が上手だった」
と解釈すると、
「get [have, gain]the upper hand of 〜」(〜に勝つ、〜を出し抜く)
「outsmart〜」(〜より知恵を使って勝つ)
のような表現が可能です。
『踏んだり蹴ったり』も『不運が続く』と解釈!
続いて「踏んだり蹴ったり」ですが、上記のジーニアス和英辞典では
「ひどい目にあう」
と解釈され、
「have a hard time (of it)」
と表現されています。
しかしこれだと、
「不運が立て続けに起こる」
といった感じが出ません。
そこで
「踏んだり蹴ったり」= 「泣き面に蜂」
と言い換えてみます。
すると、ジーニアス和英辞典では
「One misfortune comes on the tail of another. 」(不運は、別の不運の後について来る。)
「Misfortunes never come singly[single, alone]. 」(不運は、単独ではやって来ない。)
と表現されています。
まさしく「踏んだり蹴ったり」な感じが出ています。
ネット英語辞典の訳は、ニュアンスがやや異なる!
インターネット英和・和英辞典では、「踏んだり蹴ったり」は
「add insult to injury」
と表現されていることが多いです。
大修館書店 ジーニアス英和辞典でも同様です。
「ひどい目にあわせた相手に、さらに侮辱を加える:踏んだり蹴ったりの目にあわせる」
と日本語訳されています。
ただこれだと、
「他人に肉体的・精神的にひどい目にあわされた」
という感じになります。
「いかれこれ」の本来のニュアンスとは、やや異なります。
最後に・・・。
今回の「いかれこれ」は、方言の語彙であるため、権威のある辞書でかっちりした訳語が載っていません。
そのため、ネット辞書でも表現が分かれています。
日本各地の方言を英語などの外国語に訳す場合は、なるべく簡単な標準語の語彙に変化させ、それを訳すのが王道かと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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