幕末の侍は、刀で人を斬ることができなかった?

最近はテレビドラマや映画に「時代劇」がめっきり減ったという感想は、おそらく40歳代以上の方々の多くがお持ちでしょう。

今年(2021年)1月1日に

「5万回斬られた男」

こと俳優の福本清三さんが亡くなったことは、マスコミでも大きく報じられました。

福本さんが「斬られ役」として活躍なさっていた時代は、テレビでも映画でも多くの時代劇が放映・上映されていた

「時代劇黄金時代」

でした。

 

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時代劇の醍醐味は、やはり刀によるチャンバラ!

時代劇にも色々ありますが、やはり一番の見所(見せ場)は刀による殺陣(たて)、いわゆる

「チャンバラ」

のシーンです。

主人公やその仲間たちが大勢の悪漢たちと刀を交え、鮮やかに斬って行く場面は、物語のクライマックスにふさわしいです。

「峰打ち」

と言って、実際に斬らないで気絶させることも多い(小者の手下たち)のですが、悪の首領すなわちラスボスについては、本当に斬って捨てるのが定番です。

 

幕末は、人を斬れない武士が多かった?

ところが、江戸時代も終盤、幕末の時代には、本物の刀を持っていても

「人を斬ることのできない侍(武士)」

がかなり多かったらしいことをご存知でしょうか?

本物の日本刀は、もちろん触れば指を切って大怪我をしますし、切り付けられても血が出て同じく大怪我をします。

しかし、一度や二度斬り付けただけで相手を絶命させるのは、実は非常に難しいそうです。

現代でも、剣道と居合抜きはほぼ別物です。

剣道の達人が、即居合斬りの達人になれるというわけではありません。

刀という刃物で人を斬るには、それ相当の技術を要します。

 

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徳川時代の大部分は、戦乱がなく平和だった!

徳川幕府が天下を治めるようになって二百数十年の間、大きな戦(いくさ)というものは、大阪夏の陣・冬の陣以降幕末まで起きませんでした。

元来戦闘をするのを生業(なりわい)としていた武士も、天下泰平の世が続く中で、本当に他人と真剣で戦う機会はほぼ皆無でした。

時代劇に度々登場する剣術道場でも、基本的には竹刀や木刀で打ち合います。

そうして現在の剣道が形成されていきました。

中には、真剣で戦っても「暴れん坊将軍」のように、一撃で相手を絶命させる達人は存在したでしょう。

しかし、一般的な侍にとって剣とは、

「生きるための道具」

ではなく

「身につけておくべき教養・作法」

のようなものになってしまいました。

 

幕末のヒーロー新撰組も、複数で一人を攻撃していた!

幕末の動乱期、京の都では有名な

「新撰組」

が、勤王派の志士たちを次々と斬って回った事実はよく知られています。

しかし、ドラマや映画のように刀を一振りして敵を倒す、といったことはほとんどなかったのではないでしょうか。

新撰組の必殺戦法は、必ず

「三~四人の複数で一人の敵を攻撃する」

という、合理的ですが絵面(えづら)としてはカッコ悪いものでした。

どんな剣の達人でも、あちこちから斬りかかられては成す統べがなく、身体の至る所を切られて出血多量で死に至ることとなります。

一撃で内蔵にまで傷が達して死ぬことは、そうそうあることではありません。

 

薩摩の古流剣術は、一撃に集中して相手を倒す!

幕末に倒幕の原動力となった薩摩藩で、「人斬り半次郎」と恐れられ、西南戦争で戦死した

桐野利秋(中村半次郎)

は、薩摩藩を中心に伝わった古流剣術「示現流」の分派を習得していました。

示現流一派の特徴は、最初の一撃(一太刀)に全力を集中し、一撃で相手を仕留めるという

「一撃必殺」

でした。

「スパッ」と斬るというよりは、刀を「グシャッ」と叩きつけて相手の息の根を止めるという感じです。

華麗なる太刀さばきは不要です。

「一刀入魂」

とでも言うべきでしょうか。

 

日本史に残る大事件でも、人を斬れなかった!

私も昔はテレビで時代劇を観ながら、主人公が美しい太刀さばきで悪人を斬り倒す姿に憧れたものです。

しかし、江戸時代の途中からはそういう場面はなかなか起きなかったと知ったのは、10代後半にある小説を読んでからです。

「下天は夢か」などの歴史小説で名高い故・津本陽さんの

「塚原卜伝 十二番勝負」(講談社文庫)

に、「五・一五事件」か「二・二六事件」(はっきり覚えてなくてスイマセン・・・)に関する記述がありました。

 

どちらの事件も、教科書に載っている有名な事件ですので、詳細を記すのは省略します。

反乱を起こした陸軍将校たちが、政府の大臣たちを襲撃しました。

その際、将校の一人がある大臣を殺害しようとし、銃剣(ライフルなどの先に付いている単刀)で斬り殺そうとしました。

ところが、何回斬りつけても致命傷が与えられません。

しかたなく、銃剣を突き刺して(本来はそれが正しい使い方)絶命させたそうです。

陸軍軍人たる者、剣道のたしなみもあったはずですが、実際に刃物で人間を殺害するとなると、映画やドラマのようにはいかなかったのです。

 

ヤクザのヒットマンも、日本刀は使わない!

現代のヤクザも、対立する組織のボスを日本刀で叩き斬ったという報道は見聞きしたことがありません。

大抵の場合、使うのはピストルあるいはドス(単刀)です。

鉄砲玉と呼ばれるチンピラが、狙う相手に向かって突進し、脇腹にドスを突き立てる・・・というのが定番(?)で、ヤクザ映画やVシネマでおなじみの手法です。

 

最後に・・・。

今回ご紹介した事実は、どちらかと言えば

「知らない方が良かった・・・。」

という類の情報です。

そうしたことを知らないでいたら、時代劇のチャンバラシーンを純粋に楽しめたはずです。

しかし、現実というのはとかくつまらないものです・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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