有名な故事成語に
「敗軍の将は兵を語らず」
という言葉があります。
中国の歴史書「史記」准陰候伝が出典となっています。
「失敗した人間が、それについてあれこれ言い訳したり意見を言う資格はない。」
という意味です。
日本では誤用されることが多い!
ちなみに、中国語に沿って訳すと
「敗軍の将は勇を語らず」
となるそうです。
日本ではなぜか「勇」が「兵」に変化してしまっています。
そして「兵」を兵士のこと、すなわち部下を意味すると誤って理解している人が多いのです(かく言う私もそうでした)。
実際には「兵」は兵法、つまり「戦略、戦術」を意味しています。
例えばプロ野球の試合後に、敗れたチームの監督が
「自らの采配」
について聞かれた場合に使うのが正しい用法です。
「選手たちのプレー内容」
について聞かれた場合に使うのは誤用です。
大部分の人間は、言い訳・責任逃れをするものだが・・・。
仕事などでミスをした場合、我々人間はどうしても言い訳をしたり、責任逃れをしようとしたりしがちです。
誰しもそういった経験はあるはずで、
「そんなことは今までしたことがない。」
と涼しい顔で言ってのける人は、とんでもない嘘つきです。
ただ、我々の大部分は「将」と呼べるような地位・役職には就いていません。
せいぜい中間管理職程度で定年を迎える人間がほとんどです。
そのレベルの地位の人間が「敗軍の将が兵を語る」行いをしても、さしたる影響は生じません。
会社・組織の首脳陣が『兵を語る』と、大きな悪影響が!
しかし、会社や組織の規模にかかわらず、トップや役員といった首脳陣、すなわち「将」が自分たちの失敗、「兵」を言い訳がましく語ってしまうと、大きな悪影響が生じます。
部下たちの士気が著しく下がってしまうのは、言うまでもありません。
そして往々にして、そうした「将」たちはこの言葉を正しく理解せず、「兵」を部下、つまり従業員・職員のことと誤って認識しているのです。
日本の政・官・財界でも、将が兵を語りまくり!
自分たちの運営・経営の失敗を「兵」の働きの悪さにすり替えて、責任転嫁を図るということが、近年の日本の政界・官界・財界で起こりまくっています。
何も語らずダンマリを決め込むならまだ分かりますが、恥も外聞もなく「兵を語り」責任逃れを企む「将」たちが多過ぎます。
下の者たちがやる気も「将」たちへの信頼も失い、活気がなく風通しの悪いイヤな組織になってしまうこと請け合いです。
「うちの会社も既にそうなってるよ・・・。」
とお嘆きの方々もいらっしゃるでしょう。
大きな権力を手にするのと同時に、大きな責任も背負い込むのが「将」のはずです。
オイシイ部分だけ取り込んで、辛い部分は下の者たちに丸投げという人間は、人を率いる器の持ち主ではないのですが・・・。
天下りの役員が、不振の原因などを雑誌であれこれと・・・。
私が社会人になってしばらくした頃、勤め先の役員がある雑誌に文章を寄稿しました。
私の勤め先は、当時不振から立ち直ろうと四苦八苦している途上にありました。
その役員は、不振の経緯や原因やらを、結構ぶっちゃけた感じで語っていました。
ある地方自治体から天下りでやって来た人物で、不振の直接的な責任はほとんどありませんでした。
しかし、どこか他人事のような、評論家的な視点が強く感じられ、私は正直頭に来ました。
まさしく「敗軍の将が兵を語る」典型例だったと言えます。
最後に・・・。
それから1年ほどしたある日。
その役員が病気で死んだという知らせが、社内に伝えられました。
ただ、天下りで一般の従業員たちにはなじみの薄い存在だったため、さしたる話題にもなりませんでした。
私はその頃は既に
「心に鬼を飼っている」
人間だったので、
「天下りのくせに調子に乗って、会社のことをあれこれ面白おかしく話したから、罰が当たったんだ!」
と心の中で悪態をついていました・・・。
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