2021年(令和3年)10月31日(日曜日)に、第49回衆議院議員総選挙が行われることが、先日発表されました。
そして、投票日には
「最高裁判所裁判官国民審査」
も同時に実施されます。
平たく言えば、最高裁判所の裁判官各々を
「罷免したいか」
すなわち
「クビにしたいか」
を投票する制度です。
クビにしたい裁判官の名前の上に『✕』印を付ける!
投票所で、対象となる裁判官全員の氏名が記載された、投票用紙が渡されます。
特徴としては、罷免したい裁判官の氏名の上に
『✕』印
を書く必要があります。
もし「○」や「✓」など他の記号を記入した場合、無効となります。
罷免する必要がないと思えば、「✕を書く欄」は空欄のままにしておきます。
もし対象者全員につき罷免の必要なしと思えば、投票用紙に何も記入せず、投票箱に入れることになります。
過半数に達すると、罷免される!しかし・・・。
「✕」印の書かれた票(「罷免を可とする票」と言うそうです)が、有効票数の
「過半数」
に達した場合、その裁判官は、審査結果告示日から30日以内に罷免されます。
ただし、国民審査の投票率が1%未満の場合は例外とのこと。
罷免されてから5年を経過するまでは、再び最高裁判所裁判官にはなれません。
しかしあくまでも「最高裁」を罷免されただけです。
法曹資格を剥奪されたわけではありません。
よって、検察官や弁護士、または高裁や地裁の裁判官として働くことは可能です。
ちなみに、この制度が初めて実施された1949年(昭和24年)以降、国民審査により罷免された最高裁裁判官は、
まだ一人もいません。
もし今後罷免される裁判官が現れれば、歴史に名を残すこととなります(本人にとっては、末代までの恥でしょうが・・・)。
ニュース番組で『ナッジ理論』を知った!
2020年(令和2年)の年末頃だったと思います。
テレビのニュース番組で
「ナッジ理論」
という理論が紹介されていました。
リチャード・セイラーという行動経済学者によって提唱された理論とのこと。
「ナッジ」は英語で「nudge」と書きます。
大修館書店 ジーニアス英和辞典によると、
「(注意を引くため)〈人〉を肘で軽くつつく」
「〈人〉をつついて合図を送る[励ます]」
「〈人〉を〜するように説得する」
という意味の動詞・名詞です。
文章や掲示などの表記・表示方法を改善することにより、
人々が強制されたと感じず、自主的に特定の行動を行うように誘導する
ための理論です。
上記のセイラー教授は、2017年(平成29年)にノーベル経済学賞を受賞しました。
典型例は『臓器移植の意思表示』!
このナッジ理論の例として頻出するのが、「臓器移植の意思表示」です。
各種統計によると、国によって「臓器を提供する意思表示」をしている人の比率に大きな差があります。
その要因が
「どちらの場合に、何らかの行動を起こす必要があるか」
だと言われています。
提供する意思表示の「少ない」国(日本も含む)では、保険証などに
「臓器提供の意思が『ある』方は、○印をつけてください。」
という風に表示されています。
反対に、提供する意思表示の「多い」国では、
「臓器提供の意思が『ない』方は、○印をつけてください。」
となっています。
面倒くさがり何もしない人は、既に誘導されている!
人間は、何らかの行動を起こすのを面倒だと思いがちです。
まして、臓器移植といった重い話になると、判断を先延ばしにしてしまいます。
意思のない人のみ○印をつける
という形にすれば、しっかりと考えた結果「提供しない」と決めた人は意思表示をします。
はっきりした考えがまだない人は、「提供しない」という意思表示もしません。
そういう人たちは、その時点では自動的に
「臓器を提供する」意思表示をしている
とみなされます。
日本では、今までその逆でした。
最近は、保険証の裏面に
① 脳死後も心臓停止後も臓器を提供する
② 心臓停止後に限り臓器を提供する
③ 臓器を提供しない
のように選択肢が示されていることが多いです。
日本人はまだまだ、どれにも○をつけないままの人が多そうです・・・。
最高裁裁判官の国民審査は、ナッジ理論の先を行っていた?
先ほど述べたニュース番組の後、私はふと
「そう言えば最高裁判事の国民審査って、クビにしたい場合だけ『✕』印をつけるよな・・・。」
と思い出しました。
最高裁裁判官の顔や名前など、弁護士などの法曹でもほとんど思い浮かばないでしょう。
ましてや我々一般人には、全く縁遠い存在です。
今までどんな判決を下してきて、どういった思想・信条を持っているかなど、全く分かりません。
調べる気にもなりません。
「クビにしたい」、「クビにしたくない」の判断も下しようがないのが実情です。
そして、投票用紙にわざわざ「✕」印を書き込むのも、面倒だと思う人が多いでしょう。
そういった人間心理を、「ナッジ理論」のはるか前から分析した上で、現在の形式にしたのではないか?と邪推してしまいます。
最後に・・・。
アメリカの大手企業では既に、ナッジ理論が広告や店舗での商品陳列などにどんどん応用されているそうです。
日本でも、同様の動きはこれから加速していくはずです。
自分の考えで自発的に行動しているつもりが、実は無意識のうちに誘導されていた・・・
という状況が、我々の身にも起こる、あるいは既に起こっているのかもしれません。
怖い世の中です・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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