東京都民の皆さん、「新銀行東京」を覚えてますか?

「東京2020」

が終わってはや1ヶ月(今年は2021年ですが)・・・。

コロナ禍の最中に強行開催しましたが、

「お祭り騒ぎ」

にすらならずに終了しました。

もう大多数の人の記憶からも消えかけていますが、開催費用の

推定3〜4兆円

は消えることがありません。

開催都市の東京都だけで始末をつけられるはずもありません。

日本国民全員が、おそらく

「税金」

という形で尻拭いをさせられるでしょう。

ところで東京都民の方々は、「東京2020」よりスケールははるかに小さいですが、

「しくじり具合」

では引けを取らない、この金融機関を覚えておいででしょうか?

その名は

「新銀行東京」・・・。

 

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『新東京銀行』の書き間違いではない!

今の小学生〜中学生くらいだと、全く記憶にないかもしれません。

しかし30歳より上の世代の東京都民、特に20年以上東京にお住まいの方々は、

「できればなかったことにしたい」

存在としてご記憶でしょう。

念のため申し上げますが、決して

「新東京銀行

の書き間違いではありません。

正式名称が

「新銀行東京(英語表記は「Shin Ginko Tokyo, Limited」)

なのです。

東京都が

「資金繰りに苦しむ中小企業の支援」

「ベンチャー企業の成長支援」

などを名目に設立した銀行でした。

現在は存在しません。

 

あの大学名と同じ人物が名付け親!

「『新銀行東京』?何だか最近まであった『首都大学東京』みたいなネーミング・・・。」

とお気付きの若い世代の方、貴方は鋭い!

「首都大学東京」(現在は元の名称「東京都立大学」に戻った)

と同じく、当時の石原慎太郎都知事が名付けました。

テレビのニュースをながら観している途中で「新銀行東京」と言われると、

銀行東京」

と聞こえることが時々ありました。

こうした名称を付けるセンスは、確かに「珍」と言う他ありませんが・・・。

 

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目玉政策のはずが、不吉なスタート・・・。

石原元知事の二期目の目玉政策として、知事と交流があった

大前研一氏、

大前氏が昔在籍していた大手外資系コンサルティング会社

マッキンゼー

がプロジェクトを進めていました。

しかし、大前氏とマッキンゼーが方向性をめぐり対立。

大前氏がプロジェクトを離れるという、不吉な滑り出しでした。

また、

「中小企業金融は、メガバンクでも難しい。」

と言われており、反対意見も強かったそうです。

しかし、石原元知事がそうした意見を押し切る形で、プロジェクトは進んで行きました。

 

2005年に開業。しかし色々な欠陥が・・・。

2004年(平成16年)に、事業が低迷していた

「BNPパリバ信託銀行」(フランスの銀行)

の日本部門を買収。

商号を「新銀行東京」と変更し、2005年(平成17年)4月1日に開業しました。

銀行の種類としては、「信託銀行」でした。

開業前から、銀行業界からは

「民業圧迫」

との批判が起こっていました。

そのせいかは不明ですが、「全国銀行協会」には加盟していませんでした。

また、東京都の

「公金収納取扱金融機関」

でもありませんでした。

ちなみに、東京都の指定金融機関は、あの

「みずほ銀行」

です・・・。

そのため、東京都民が住民税などの地方税を

「口座振替」

で納付しようにも、「新銀行東京」からでは不可能でした。

驚くべきことに、東京都職員の給与振込口座も、「新銀行東京」はダメだったそうです・・・。

 

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預金獲得にアピールするも、結果は出ず・・・。

「新銀行東京」は、普通の銀行と同じく、預金も受け入れていました。

できるだけ多くの人から預金を集めるべく、

「高金利の定期預金」

などを売りにアピールしました。

しかし残念ながら、思うように預金額は伸びませんでした。

業績の低迷と共に、金利も下がって行きました。

開業3年目の途中には、店舗外に設置されていたATMが全て、稼働を停止することとなりました。

預金者向けサービスも、次々と廃止されました。

これでは、絶対に預金者や預金額が増加するわけがありません。

 

開業初年度から約2年半で、累積赤字1,000億円!

開業初年度(2006年(平成18年)3月期)の決算は、

209億円の最終赤字。

アメリカのハイテクベンチャー企業も顔負けの損失です。

続く2007年(平成19年)3月期の決算は、

547億円の最終赤字。

前年度の2.5倍を超える額でした。

2008年(平成20年)3月期の中間決算時点で、

累積赤字額は936億円・・・。

開業からおよそ2年半で、1,000億円近い赤字を垂れ流す結果となりました。

 

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本当に黒字転換したのは、開業して6年後!

決して、昭和末期〜平成初期の

「バブル時代」

の話ではありません。

日本経済が

「失われた10年」

を通り過ぎ、

「失われた20年」

に近付きつつあった時期です。

2010年(平成22年)3月期にようやく、開業以来初の黒字となりました。

しかしこれは、

「貸倒引当金の取り崩し」

を主要因とした結果です。

本当の意味で黒字化したのは、2011年(平成23年)3月期でした。

 

格付け引き下げ、大量離職、コスト負担・・・。

格付け会社の格付けも、当然のごとく引き下げられました。

また、人材の大量流出にも見舞われました。

2008年には、1ヶ月の間に正社員の3分の1に当たる約60人が、リストラではなく自らの意志で退職しました。

システム投資にも過大な費用をかけてしまったため、コスト負担が大きな重荷となりました。

 

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400億円の追加支出。しかし知事や都議会は責任を問われず!

結局、2008年に東京都が400億円もの追加出資を行うことになりました。

ところが、最大の責任者である石原都知事や、銀行設立にゴーサインを出した都議会の責任は、ほとんどなされませんでした。

一般企業だと、新規事業で短期間に1,000億円の損失が出れば、トップを含む多くの人たちのクビが飛ぶはずですが・・・。

 

結局最後は、他の銀行に吸収合併という末路を・・・。

しかし、多額の資金を投じて延命させたにもかかわらず、約8年後の2016年(平成28年)4月には

「東京TYフィナンシャルグループ」

の傘下に入りました。

それから2年後の2018年(平成30年)5月1日、

「八千代銀行」

に吸収合併されました。

八千代銀行はそれと同時に商号変更し、

「株式会社きらぼし銀行」

となりました・・・。

 

最後に・・・。

「新銀行東京」は、東京都の歴史においても最大級の

「しくじり」

で、典型的な

「黒歴史」

です。

この一件で東京都民が得た教訓は(代償が大き過ぎますが・・・)

「他人の金(=税金)なら、後先考えず好きなように使える。」

だったはずです。

ただ、その教訓が生かされることはありませんでした。

はるかに巨額の資金を注ぎ込んだ

「しくじりスポーツイベント」

を強行開催した結果、「兆円」単位の費用の、かなりの部門を負担しなければなりません。

いくら東京都と言えども、気の遠くなる金額です。

東京都民(国会議員や都議会議員は当てになりません)が

「新銀行東京」(何度聞いても笑える名称です・・・)

の末路をもっと早い時期に思い出していれば、

「開催費用には多額の税金、つまり自分たちの金が使われる。」

という不動の事実にも、もっと早く気付けたかも・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

興味がございましたら、こちらもお読みください。

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