おそらく2020年(令和2年)1月~12月の破産者数は、昨年の数よりも大幅に増加するでしょう。
今年の日本社会を覆い尽くした新型コロナウイルスの流行により、企業や店舗の経営は各業種とも大打撃を受けました。
そして、サラリーマン・OLなどの働く人たち、特に派遣・契約社員など非正規雇用の労働者の多くが苦境に立たされています。
破産手続が完了し、免責が認められれば、借金の重荷から解放される!
債務すなわち借金を抱えている法人・個人で、返済の目処が立たなくなり、破産による債務整理を選択した人、またはこれから選択する人はかなり多いはずです。
破産の申立が認められ、所定の手続が全て終われば、裁判所が法人に対しては「破産廃止」または「破産集結」(配当が行われた事件)を、個人に対しては「破産免責」を認めます。
法人はそこで法人格が消滅して終わります。
個人の場合、免責が認められれば債務の返済義務が免除されます。
平たく言えば、借金がチャラになるということです。
クレジットカードが作れなくなるなどの不自由はあるにせよ、一から新しく人生をやり直すことが可能になります。
精神的なプレッシャー、ストレスからも解放されます。
債権者としては、債務者であれ連帯保証人であれ、破産した人に督促を行うことは絶対にできません。
連帯保証人が他にもいれば、そちらへしか督促する道がありません。
破産免責を受けたのに、返済を続ける人がいる!
しかし、時折あるのですが、破産した人がその後も返済を続けているケースがあります。
「破産して責任はなくなったはずなのに、何で?」
「債権者が破産者から返済を受けたら、まずいことになるのでは?」
という疑問を抱かれる方も多いでしょう。
これには、もちろん事情があります。
大抵のケースでは、債務者が破産し、連帯保証人のみが返済義務を負うことになります。
連帯保証人は、自分も破産する以外には逃げることができません。
かと言って、自分も保証債務を返済する余裕はないことも多いです(本来、そういう人は連帯保証人になるべきではないのですが・・・)。
連帯保証人が怒鳴り込んで来て、逃げられない破産者は・・・。
そこで、連帯保証人が債務者の家へ怒鳴り込んで来て詰め寄ります。
そして、自分の名義で返済させたり、毎月の返済分を債務者から受け取り、自分で入金手続をするのです。
しかし、本来債務者は自分で返済できなくなったから、破産という道を選んだはずです。
連帯保証人から激しく叱責されたとしても、なぜ破産免責後も実質的に債務を返済し続けることになるのでしょうか?
親族・親戚である連帯保証人に、法律を盾に断ることは難しい・・・。
そうしたケースは、債務者と連帯保証人が親族・親戚関係にある場合が大半です。
赤の他人ならともかく、縁戚関係にあれば逃げ隠れするのは困難です。
保証人の側でも、身内から借金の尻拭いをさせられるのは、他人からよりも頭に来るはずです。
家に乗り込んで来て、ボロクソに罵倒する人も多いそうです。
そうなると債務者(破産者)も、
「法的には、もう自分には返済義務はない。」
と押し通すこともしにくいです。
そして前述のとおり、無理してでも連帯保証人の名義で分割返済したり、毎月連帯保証人に返済原資を渡したりします。
債権者には関係ない話・・・では済まされない!
債権者の側としては、破産者名義で返済を受けるのでなければ、実際の返済原資がどこから出ているかは関係ない!と言いたいところですが、そういうわけにはいきません。
例えばそうしたケースで返済が滞った場合、債権者が事情を知らなければ、当然連帯保証人に督促を行います。
そこで初めて、破産者と連帯保証人がそうした約束をしていたことを聞かされます。
連帯保証人は、
「あいつ(=破産した債務者)、自分には毎月ちゃんと入金してるって言ってたのに。」
のような、半ば他人事のような口ぶりで釈明します。
債権者としては、そこで
「○○さん(破産者)に早急に振込するよう伝えてください。」
などとは絶対に言ってはなりません。
それでは、破産者が返済することを認め、督促しているのと同じようになってしまいます。
裁判になった場合に備えて、連帯保証人の返済意思を明確にする必要あり!
相手方が今後もそのような形で返済してくるかは分かりませんが、形式上は必ず連帯保証人に督促した上、保証人本人が返済金を工面して返済してくるよう求める必要があります。
そして、定期的に債務承認書類に署名させることも重要です。
返済がストップして裁判にまで至った際、連帯保証人から
「振込用紙は届く度に債務者に渡し、振込させていた。自分の意思で自ら振込したことはない。」
などと法廷で言われると、連帯保証人名義の入金の有効性が疑問視されます。
最悪の場合、時効が完成したことになってしまう恐れもあります。
少なくとも債務承認書類に自ら署名していれば、
「自分名義で返済されていても、自分は関与していない。」
といった言い逃れはできず、時効も確実に中断させることができます。
最後に・・・。
私自身も、そうした状況の案件をいくつも引き継いで担当したことがあります。
過去の担当者(できれば債務者の破産当時の人)がきちんと対応してくれていれば、こちらも楽です。
しかしウヤムヤにされたままになっていると、現担当者としては交渉が大変やりにくいのです。
破産してなお返済に追われる債務者、法的には全責任をおっかぶせられた形の連帯保証人、どちらもある意味気の毒です。
しかし債権回収においては、変に深入りすると自分にも火の粉が飛んで来ます。
杓子定規と言われようが、法律に則った無難な交渉で押し通すしかありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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