このブログでは、
「債権回収」
に関する記事が割と多いです。
私は以前、ある金融会社で債権回収、すなわち
「借金取り」
の業務に長年携わっていました。
その頃の体験談や得られた知識を、記事のネタにしています。
インターネット上では、
「債務者」
つまり金を借りた側の苦労話、借金踏み倒しの体験談などは結構多く見かけます。
一方、
「債権者」
つまり金を貸した側の話というのは、意外とあまり見かけません。
債権者目線の話を書くブログがあってもいいのでは?
そういう思い付きから、債権回収ネタを書き始めました。
『回収金額』が最重要!制限の中であの手この手を・・・。
債権回収部署の担当者にとって、何が最も重要な数字かというと、
ズバリ
「回収金額」
です。
債務者や連帯保証人などから、どれだけ多くの金額を返済させられるか。
ただ、まともな金融関連企業なら、キチンとした回収基準があります。
ヤミ金が使うような荒っぽい取立手口は、絶対に許されません。
「コンプライアンス」すなわち
「法令等の遵守」
が厳しく求められます。
色々な手かせ・足かせをはめられた上でなお、できる限り多く取り立てる(=回収する)のは、なかなか難しいものです。
時には裁判や仮差押、不動産競売などの法的措置を使いながら、地道に電話や文書・面談を積み重ねて回収していきます。
回収金額の差が、収入や昇格に影響する!
そうした努力の過程も、ある程度は人事考課に反映されます。
しかし何と言っても、やはり物を言うのは回収金額です。
会社の制度によっては、回収金額の差がボーナス額の差になるなど、非常にシビアな面もあります。
あるいは、回収金額の成績がコンスタントに良い担当者は、昇格が早いという場合もあります。
第4四半期ともなると、各担当者がピリピリし出して、異様な雰囲気に包まれる職場も多いはずです。
多額の破産配当が入ってくることも!
そんな中で時折、大きな回収金額が転がり込んでくる場合があります。
それは
「破産配当」
です。
債務者や連帯保証人が破産すると、最初から目ぼしい資産がないと判明している場合を除き、裁判所から選任された弁護士が
「破産管財人」
となります。
破産した個人・法人の資産を調査し、あれば保全・管理する役目を負っています。
資産総額が把握できれば、不動産や貴金属などの動産は全て現金化します。
そして最終的に、債権者から事前に届出された破産債権額に応じ、按分して債権者に分配します。
それが破産配当です。
破産配当の割合である配当率は、一般的には
破産債権額の2〜3%程度
です。
5%あれば多い方という感じです。
しかし時には、10%を超えることもあります。
破産債権額が多ければ、自ずと配当額も大きくなります。
法人が破産した場合、1,000万円を超える破産配当が入ってくることもあります。
回収担当者としては、自ら回収に苦労せずとも、棚ぼた式に向こうから振り込まれるので、本来は
「オイシイ話」
のはず。
ところが回収担当者としては、さほど嬉しい話ではありません。
破産配当の額は、人事考課の評価対象外!
何故でしょうか?
それは単に
「人事考課の評価に反映されない」
からです。
断言はできませんが、金融関連企業の債権回収部門では、大多数の所が破産配当の金額を
「担当者の回収実績」
としては評価していないと思います。
前述の通り、破産配当に係る事務は破産管財人の業務です。
債権者側が関与できることと言えば、破産者所有の不動産の買い手を紹介することくらいです。
要するに、破産配当は
「回収担当者が自発的に動いた上で得られる回収金」
ではありません。
例えば、ある担当者が数字上は
年間1億円
回収したとしても、そのうち
2,000万円が破産配当によるもの
なら、人事考課で評価されるのは
1億円―2,000万円=8,000万円
ということになります。
成績優秀者表彰でも、逆転が起こる!
私が以前在籍した部署では、回収成績の優秀な担当者が表彰されることが、年2回ありました。
単に表彰状をもらうだけでなく、金一封として数万円がもらえたのです。
しかし、回収金額のトップ数名が自動的に対象となるわけではありませんでした。
前述の通り、破産配当の分は評価対象から控除されます。
よって、数字上の回収金額が少ない担当者の方が表彰されるという、逆転現象が起こることも結構ありました。
最後に・・・。
4月から「2023 年度(令和5年度)」が始まりました。
コロナ禍はやっと一段落しましたが、日本の景気回復には全く見通しが立っていません。
低金利・元金返済猶予など、中小零細企業への優遇措置についても、多くが終了しています。
これから個人・法人とも、破産件数が増加しそうな気配です。
世の中の債権回収に携わる方々は、複雑な気持ちを抱かれるでしょう・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。