このブログでは、時々
「債権回収」
「不動産」
を題材とした記事を書いています。
私が債権回収、すなわち
「借金取り」
の仕事をしていた頃の経験・知識が基となっています。
この「債権回収」と「不動産」は、密接な関係にあります。
不動産を担保にお金を借りることは、ごく一般的!
金融機関などからお金を借りる際、自分が所有する不動産を
「担保」にすることはよくあります。
もし借りたお金を返済できなかった場合、裁判所経由の
「不動産競売」
不動産の所有者である債務者が動いて、第三者に物件を売却する
「任意売却」
により、売却代金を貸し手である債権者に支払うことになります。
不動産を担保に取る際は、価格以外の点も重要!
不動産を担保に取る際、債権者は担保不動産の価値、つまり価格について審査を行います。
もし売却となった際、どれくらいの金額が回収可能かは、重大な問題です。
しかし、それと同じくらい重要なのが
「法律・法令に違反していないか」
つまり、違法建築の不動産ではないかを確認することです。
どれだけ立地の良い場所で、どれだけ土地が広く建物が立派でも、法律・法令に違反している点があると、価値が大きく減少する恐れがあります。
売却価格が大幅に下がってしまったり、最悪の場合だと売却先が見つからないこともあります。
ほとんどはチェックの網にかかるが、すり抜ける場合も!
ほとんどの場合は、問題がないことを確認して担保に取るか、問題を発見して担保に取らないかが融資前に判断されます。
ところが、割合としては非常に低いものの、違法建築を見抜けずに担保に取ってしまう事例は存在します。
最悪のパターンは、債務者が返済不能となり案件が回収部門に回ってきてから、担保不動産が違法建築だと判明した場合です。
担保付き融資の債権回収を担当する人たちには、そうした案件が
「当たって」
しまい、困った経験を持つ人がそこそこいます。
建築時の虚偽申請や、増改築により違法建築に!
最も多い事例は
「建蔽率(けんぺいりつ)」
「容積率」
の違反です。
底地上に建てられる建物の面積の割合(建蔽率)や、建物の床面積の合計の割合(容積率)が、最初からオーバーしているのです。
本来は、建物を建てる時点で役所など
「行政」
のチェックが入るはずです。
しかし、施工主や建築業者が虚偽の申請を行い、建築許可を得てしまうケースがあり、大規模・悪質な事例はマスコミで報じられることもあります。
あるいは、建築時には違反はなかったものの、後で勝手に増改築を行い、結果として事故物件になったという例もあります。
一戸建てに限らず、商業・オフィスビルにもそうした物件はあります。
ひどい例だと、担保提供後に大がかりな違法増改築がなされ、当初とは別の建物のような外観になっていることもあります。
手抜き工事が発覚、所有者が気付かぬまま違法建築に!
また、意外と多いのは、業者が建築時に
「手抜き工事」
をしていたため、物件所有者の知らないうちに違法状態が発生していた・・・というパターンです。
「違法建築」+「欠陥建築」
という二重の瑕疵(かし=マイナス)がのしかかって来ます。
いずれの事例にせよ、複数の不動産業者に査定をしてもらっても、ことごとく安い価格が帰って来ます。
担当者としては、途方に暮れてしまいます・・・。
適法状態に改修するにも、多額の費用が発生!
私の同僚が以前担当していた案件で、商業地域の
「立体駐車場」
を担保に取っていました。
その立体駐車場の構造の一部が、関係法令の基準を満たしていないことが判明しました。
違反の程度はそれほど悪質・重大ではなかったそうですが、基準を充足していない範囲がかなり広範囲でした。
そのため、法令に合わせるための改修費用が結構かさみます。
そのまま売却するにしても、その分を値下げせざるを得ないということでした。
売却自体は可能だが、リスクが高く大幅値下げ要!
違法建築の不動産と一口に言っても、様々なレベルの物件があります。
そのままでも売却自体は可能という物件は多いです。
ただ、購入した人がその後に責任を負ったり、トラブルに巻き込まれるという可能性もあります。
そんなややこしい物件は、転売が非常に困難です。
建物を適法状態に改築したり、一旦取り壊して新たに建物を建てるにしても、当然多額の費用が発生します。
そのため、上記の例でも書きましたが、売却するには相当値下げする必要に迫られます。
いつまでも売れないまま
「塩漬け」
にはできないので、担当者も管理職もやむなく
「ダンピング」
を選択します・・・。
最後に・・・。
ちなみに、担保不動産が
「事故物件」
になってしまう事例も、違法建築に劣らない割合で存在します。
私自身、担当案件の担保が事故物件と化した経験があります。
ここ10年ほどの間に、「事故物件」という言葉は、完全に市民権を得ました。今では大抵の人が意味を理解し、普通に使っています。日本唯一の事故物件公示サイト「大島てる」を運営する大島学さん、[…]
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こちらも興味がありましたら、是非お読みください。
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