21世紀に入ってから使われ始めた言葉に、
「シャッター通り」
があります。
昔は多くの買い物客で賑わっていた商店街が、近隣に新しくできたショッピングモールに客を奪われる・・・。
店舗が一軒また一軒と、廃業・倒産・・・。
そして、アーケードの至る所がシャッターを下ろしたまま・・・。
そうした商店街は、「シャッター通り」と呼ばれています。
2022年(令和4年)現在は、日本各地で見られる、珍しくもない風景となってしまいました。
商店街全体が『ゴースト商店街』化する!
商店街全体としてまだ活気があれば、閉店した跡地に新しい店舗が入る可能性は高いです。
賃貸であれ売買であれ、別の店に引き継がれます。
しかし商店街全体に活気がなく、客の流れが少ないと、まさしく店舗のシャッターが下りたままとなります。
そういう寂れた商店街の中には、半ばゴーストタウン化した所もあります。
「シャッター通り」よりも、
「ゴースト商店街」
と形容した方がより正確と言えます。
店舗不動産の売却が困難に・・・。
商店街の店舗も、当然ながら不動産です。
商売の継続には資金が要ります。
店舗の経営者かつ所有者が、店の土地や建物を担保に金融機関から融資を受けるのは、ごく普通のことです。
そして、もし返済不能となれば、担保不動産を売却して返済に充てることになります。
ところが、商店街全体の状況によっては、売却することが大変難しくなるのです。
人の流れが少ない場所では、不動産は売れない!
商売をしようとする人なら誰しも、人通りが多く客で賑わっている場所に出店したいと思うはずです。
少なくとも、ある程度人の流れが見込める場所を選びます。
しかし、商店街の物件でも、衰退した(又はしている途中の)所は敬遠されがちです。
それは当然でしょう。
たとえ売買価格や賃料が格安でも、お客に恵まれなければ意味がありません。
自分の店の周囲がほとんど閉鎖していては、初めから可能性が狭まっています。
そうした場所の不動産を担保に取った金融機関では、担当者が頭を悩ませます。
破産者の店舗を現地調査に・・・。
私が、有担保の債権回収に携わっていた頃のことです。
ある案件の担当となったのですが、債務者は既に破産申立済でした。
食品販売業者で、店舗兼住宅を担保に取っていました。
破産管財人弁護士が選任されたら、任意売却や不動産競売について話を進める予定でした。
その前に担保の現状を確認すべく、現地調査に赴くこととなりました。
ある夏の日の午後でした。
場所は大阪市某区。
地下鉄の駅から10分ほど歩くと、担保物件がある商店街のアーケードの前に着きました。
アーケード内の様子にビックリ!
その瞬間、私は思わず心の中で
「えっ!?」
と叫んでしまいました。
アーケードの内部が、異様に暗いのです。
普通の商店街なら、天井付近に照明を点けています。
各店舗も営業しているので、電気が点灯しています。
そのため、アーケード内部は明るくなっています。
しかし、そのアーケードでは、天井の照明も点いていません。
営業している店舗の明かりも、全く見えませんでした。
しばらく奥の方を眺めていて、眼が慣れてきました。
どうやら、ほとんどの店のシャッターが下りているようでした。
アーケードの途中で、目的の店舗が・・・。
「ひょっとして、幽霊でも出て来るんじゃ・・・。」
とおマヌケなことを考えましたが、意を決してアーケードの中に足を踏み入れました。
通路の両側とも、一軒目からシャッターが下りていました。
営業している店を見つけられないまま、しばらく歩きました。
アーケードの真ん中辺りで、目的の店舗が現れました。
もちろん、シャッターは下りています。
店名を書いていたであろう看板は外されており、その痕が剥き出しになっています。
案件の資料ファイルには、昔の写真がありました。
その写真は、当時は結構繁盛していたことを窺わせました。
目の前にある、半ば廃墟と化した建物と、写真で見た店舗が同じだとは、思い難い感じでした・・・。
アーケードの入口からかなり奥だったので、かなり暗かったのですが、何とかデジカメで写真を数枚撮りました。
周囲には誰もいませんでしたので、遠慮することなく自由に撮影できました。
アーケード内は、ゴーストタウン化・・・。
どうやら商店街は、L字形かコの字形になっているようでした。
写真を撮った後も、アーケードを先に進んでみました。
しばらく行くと、左側に曲がり角がありました。
そしてその先も、商店が両側に並んでいます。
その中に一軒、ようやく明かりが点いている店舗がありました。
酒屋さんのようでしたが、店頭には人の姿が見当たりませんでした。
そして、少し行くとまた突き当たりになり、左側へ曲がると直線の通路がありました。
両側の店舗は、軒並みシャッターが下りています。
ここのアーケードは、コの字型になっていることが分かりました。
ようやくアーケードから出ると、太陽の光がやけに眩しく感じました。
結局、数十軒ほどの店舗のうち、開いていたのは前述の酒屋さん一軒のみでした(それも、営業実態は不明)・・・。
完全にゴーストタウン化していました。
最後に・・・。
後日、件の債務者の破産管財人弁護士が決まりました。
早速連絡を取り、とりあえず競売申立を行う旨で合意しました。
弁護士の方でも競売入札までの間に、不動産業者を通じて購入希望者を探すとのことでした。
その後、案件の担当が他の人に替わり、私の手を離れました。
あの物件がどうなったのかは分かりません。
簡易査定の金額が、400〜500万円ほどだったはずです。
しかしその値段でも、あの場所だったら売れないのでは・・・と、現地に行ってみて感じました。
あのゴースト商店街自体、今はどうなっているのでしょうか・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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