このブログでは、
「不動産競売」
「不動産仮差押」
などの記事を時々書いています。
私が債権回収、すなわち「借金取り」の業務に携わっていた頃の経験に基づいています。
裁判所に申立、法務局が登記!
不動産仮差押は、債務者や連帯保証人などが債務を返済不能となった際、彼らの所有する不動産を仮差押する法的措置です。
対象不動産の所在地を管轄する
裁判所
に申立を行います。
認められれば、
法務局
が裁判所の委嘱により、仮差押の登記を行います。
不動産謄本を見れば、返済延滞の事実がバレる!
不動産登記簿謄本の甲区欄は、
所有権移転や保存(建物新築の際)
の登記が表示される欄です。
その甲区欄に、仮差押がなされた旨の登記も表示されます。
よくあるのは、固定資産税などの税金を滞納した場合に、税務署や市区町村などから仮差押されるケースです。
第三者が登記簿謄本の写しをを入手し、仮差押登記があるのを見れば、
「こいつ、借金返してないな。」
「この会社、税金滞納してるな。」
と丸分かりです。
仮差押が取下されても、登記の表示は消えない!
債権者に対し、全額または一部の返済が履行されれば、仮差押は取下されるのが普通です。
仮差押の取下登記もなされ、登記簿に表示されます。
しかし、仮差押登記そのものの表示は、消えずに残ります。
よって、過去に仮差押されたという事実は、登記簿から消し去ることができません。
不動産や金融の世界では、
「謄本が汚れた」
という表現が用いられます。
借金をする際に
「抵当権」
の登記をして、自分の不動産を担保に入れるのは、不名誉ではありません。
しかし、借金返済を滞らせたり、税金を滞納して仮差押されるのは、非常に不名誉なことです。
無関係の人の不動産を仮差押してしまうことも!
不動産仮差押は、前述したように裁判所への申立によってなされます。
「裁判所がすることだから、間違いなどあるはずがない。」
とお思いの方も多いでしょう。
しかし、ごく稀にではありますが、
全く無関係の第三者の不動産を、誤って仮差押
してしまうことがあります。
申立する債権者側がミスにより、違う人の所有不動産に対して、仮差押を申し立ててしまうのです。
大抵は、裁判所での手続の段階までで、間違いが発覚します。
しかし、裁判所も所有者への確認は行いません。
不運にも裁判所のフィルターをくぐり抜けてしまえば、法務局ではそのまま仮差押登記の手続をしてしまいます。
所有者はビックリ!そして申し立てた側も・・・。
所有者の元へは、裁判所から
「仮差押通知」
が郵送されます。
所有者は、さぞ驚くことでしょう。
全く知らない企業・団体から、身に覚えもないのに仮差押されるのですから・・・。
当然、裁判所や申立した債権者にクレームが入ります。
特に申立した債権者は、顔面蒼白になるでしょう。
前述の通り、すぐに取下手続をしても、一旦なされた登記の表示そのものは消えません。
仮差押が取下されても、効力がなくなるだけです。
まさしく、無関係の第三者の
「謄本を汚した」
ことになります。
仮差押時に『供託金』を納付しているが・・・。
相手方に謝罪するだけでは済みません。
「損害賠償」
の問題に発展します。
不動産仮差押を申し立てる際には、
「供託金」
を納付する必要があります。
個々の案件により、金額は異なります。
もしも損害賠償という事態になった場合のためです。
しかし、
「供託金を積んでいるから一安心!」
とはなりません。
申立人が100%悪いので、言い訳のしようがありません。
供託した金額を支払うと言われても、無関係の第三者の怒りは、収まるはずがありません。
管理職の人たちが、相手方の家へ謝りに行きます。
そして、賠償の交渉をすることになります。
裁判の可能性も。担当者や上司は針のムシロ!
それでも話がまとまらず、相手方から損害賠償請求の裁判を起こされる可能性もあります。
賠償金の額にも相場らしきものはありますが、かなりの高額を要求されかねません。
裁判まで行くかどうかにかかわらず、申立人側では
役員レベルの一大事
となります。
顧問弁護士の力を借りることとなります。
申立稟議を行った担当者や、決裁を出した管理職たちは、しばらく
「針のムシロ」
に座ったような気持ちで過ごすのです・・・。
別の部署で、誤った仮差押が申立された!
私が債権回収の仕事をしていた頃のことです。
別の部署で、無関係の第三者の不動産を仮差押する事件が、実際に起きました。
本当の債務者の家の近所には、同じ名字の人が多く住んでいました。
そういう地域は、日本中に結構あります。
そして、下の名前も似ている人がいました。
その人の自宅を債務者の所有と勘違いし、誤って仮差押を申立してしまったのです。
不運なことに、裁判所でもその事実に気付かれることなく、法務局へ登記の委嘱がなされてしまいました。
その後は、社を挙げてのドタバタとなりました。
担当部署・役員・顧問弁護士の間で、何度も協議が行われたそうです。
最終的に相手方と和解できたものの、かなり不利な条件を飲まされたとのことでした・・・。
最後に・・・。
私自身は幸いにも、そうした事態を引き起こすことなく、現在に至っています。
しかしその事件以降、自分が不動産仮差押の準備をする際には、異常なまでに慎重になりました。
もしそうしたミスをしでかすと、1ヶ月くらいは他の仕事が出来なくなるほど、後始末に追われることとなるからです・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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私は長年、債権回収の業務、つまり「借金取り」の仕事に携わっていました。このブログでは、仕事の中で学んだ知識や、自分の経験などをいくつも記事として書いてきました。不動産関連の記事も数本あります。お金の貸[…]
このブログでは、「不動産競売」「不動産仮差押」に関する記事を多数書いています。私は以前、長年にわたり債権回収、すなわち「借金取り」の業務に従事していました。その頃に得た知識や経験が、ネ[…]