首吊りがあった事故物件が、競売で落札された!

ここ10年ほどの間に、

「事故物件」

という言葉は、完全に市民権を得ました。

今では大抵の人が意味を理解し、普通に使っています。

日本唯一の事故物件公示サイト

「大島てる」

を運営する大島学さん、

「事故物件住みます芸人」

として活躍中の松原タニシさん

が、「事故物件」を世に浸透させた立役者(?)と言って差し支えないでしょう。

 

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債権回収でも『事故物件』は使われていなかった!

言うまでもなく、事故物件とは

「住人やその関係者が、内部で自殺・他殺・事故・孤独死で亡くなった不動産物件」

です。

私が法的書類や債権回収に携わっていた頃(1990年代後半〜2010年代前半頃まで)は、まだ「事故物件」という言葉は広まっていませんでした。

存在はしていたと思いますが、私自身は10〜20年ほど前には、仕事で使ったり聞いたりした記憶がありません。

割とストレートに

「自殺があった物件」

「住人が孤独死した物件」

などと表現されていました。

怪談本などでも、不動産にまつわる怖い話は昔から結構ありましたが、事故物件という表現はなかったように思います。

 

不動産の売買でも、事故物件が混じっている・・・。

巷でよくある話は、

「好立地で築年数も浅い賃貸マンションが、相場よりかなり安く貸し出されている。」

というパターンで、賃貸不動産絡みです。

しかし、賃貸不動産に限らず、中古不動産の売買でも

「何でこの物件がこんなに安いのか?」

と驚く事例は結構あります。

賃貸と違い、所有権の売買なので

「建物の老朽化」

「耐震性の低さ」

「敷地の土壌汚染」

「厳しい建築制限」

など多くの要因により、売買価格が著しく下がる場合がかなりあります。

そうした要因に混じって

「心理的瑕疵」

も時々出て来ます。

要するに

「この物件、事故物件ですよ。」

という意味なのですが、かなりオブラートに包んだ言い方をしています。

 

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債務者が延滞、交渉もできず。ある不動産を競売申立・・・。

私が有担保債権の回収に従事していた頃、1件だけ事故物件の担保を扱ったことがあります。

ある案件を前任者から引き継いだのですが、債務者の返済はかなり滞っていました。

前任者もかなり督促していましたが、途中からは債務者の反応がほとんどなくなっていました。

債務者の所有不動産を担保に取っていたので、裁判所への

「不動産競売申立」

が視野に入っていました。

私も2〜3回督促し、最後は内容証明郵便で催告書を送付しました。

しかし、債務者からは全く反応がありませんでした。

反応がないのは、実は債権者にとっては幸いなのです。

この段階で相手から泣きつかれると、交渉に時間がかかります。

競売申立の準備を行い、顧問弁護士から申立してもらいました。

申立から2ヶ月ほど経った頃、裁判所の執行官が現地調査の結果をまとめた

「現況調査報告書」

が出来上がりました。

顧問弁護士事務所から、謄写(コピーしたもの)が送られて来ました。

 

会議室で、課長から驚きの言葉が!

そうした文書類は、一旦課長が受領してから、各担当者に配布されることになっていました。

私が件の現況調査報告書を受け取ると、課長からすぐ会議室に呼ばれました。

言われた通り報告書を持って会議室に向かうと、課長が神妙な面持ちで座っていました。

「この案件は、何もミスをしてないはずだが・・・。」

と思いながら、向かい側に座りました。

「実はこの件だけど・・・。」

課長が話し出しました。

「後で報告書を読んでもらえば書いてあるけど、所有者(=債務者)が物件の中で亡くなったらしい。」

 

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商売をしていた店舗の中で、自ら・・・。

えっ?物件の中?

「競売手続の開始決定が出てから3日くらい後に、店の中で首を吊って自殺したらしい・・・。」

その物件は、大阪市某区の分譲マンションの1階。

数軒の店舗が入居しているスペースの一軒でした。

その部分も他の部屋と同じく、区分所有権で分譲されていました。

債務者はそこを購入し、飲食店を経営していたのです。

しかし客が減って、売上不振に陥ったのでした。

一年ほど前から実質休業状態で、私が競売申立前に現地調査に行った際も、シャッターが閉まったままでした。

競売となれば、最終的には店を失うこととなります。

それを苦に自殺したと考えられます。

ただ、遺書らしきものはなかったらしく、発作的に首を吊ったようでした。

 

一度も顔を合わせなかったので、罪悪感や思い入れは・・・。

「君のせいじゃないから、変に気に病むなよ。」

と課長から言葉をかけられ、席に戻りました。

しかし正直な所、罪悪感は全く感じませんでした。

前任者の段階から、相手からは全く反応がなく、交渉にも応じませんでした。

こちらとしては、競売以外の方法は取りようがありませんでした。

そして、亡くなった債務者とは一度も顔を合わせず、電話で話す機会すらありませんでした。

よって、思い入れも持ちようがなかったのです。

 

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事故物件なので、売れないと思っていたが・・・。

その後、顧問弁護士が相続人調査を行い、遺族など相続対象者が全員相続放棄したことを確認。

「相続財産管理人」

と呼ばれる弁護士が裁判所から選任され、競売手続は続行されました。

結局、通常より半年ほど遅れて、入札が行われました。

「所有者が自殺した物件だから、入札する人なんていないかも・・・。」

と思っていましたが、売却基準価額は特に下がっていませんでした。

そして、私の予想に反して、その物件は落札されたのです・・・。

 

最後に・・・。

どこの誰(個人または法人)が落札したのかは、もう覚えていません。

また、現状がどうなっているのかも知りません。

大阪市内で、よくグルメ雑誌で紹介されるエリアに存在します。

結構広い道路沿いの、マンションの1階です。

現在も、何かの店舗が入居して営業しているのでしょうか?

それとも、入居する店がどこも長続きしない

「いわく付き物件」

と化しているのでしょうか・・・?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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