債務者の自宅訪問から、格差社会の一端が垣間見える。

お金や法律などの話(夫)

私は、以前に債権回収の仕事をしていました。

平たく言えば、借金取りです。

借金取りと言えば、映画・ドラマやマンガに出て来る、コワモテのいかつい男性というイメージを持たれがちですが、一部のサラ金やヤミ金を除けば、普通のサラリーマンと変わりません。女性の担当者も結構います。

法律上の規制も厳しくなっており、十数年前に社会問題となった某サラ金のように、「角膜売れ!」や「腎臓片方売って金作れ!」みたいなことは絶対に言えません。

どちらかと言えば淡々と、事務効率を優先して仕事をします。
基本は郵便や電話による督促です。

大手の金融機関やサラ金では、債務者(ソフトに言えば、お客様)の数が膨大なため、全員に対する現地訪問(自宅や営業所など)は事実上不可能です。

裁判の訴状が届かない場合や、差押などを検討する場合に現地訪問をすることがほとんどです。

都市部の便利な地域に住んでいる債務者ばかりなら、訪問も楽なのですが、そういう債務者は少数です。

借入当初は都市部の中心街や、駅のそばなど立地のいい所に住んでいても、借金返済が滞るようになると、高額の家賃負担は重くなります。
自宅を所有していても、任意売却や競売で手放す人も多いです。

そして、郊外の家賃の安い家に転居していく人が大多数です。

転居先を債権者に連絡しないで転居する債務者が多いので、回収担当者は定期的に債務者の住民票を役所から徴求し、住所確認をしています。

債務者によっては、短期間に何回も転居する人や、全国各地を渡り歩く人もいます。

住民票を辿られて居場所を探されないよう、転居しても転居先の役所に住民登録をしない人も時折います。多重債務者で、ヤミ金などのヤバい所から借りており、キツい督促に恐怖を感じて行方をくらましたのではないでしょうか。

そうした状態が続くと、役所などの公的機関から前の住所宛に送られる書類も、「転居先不明」で返戻されるため、役所が現地調査の上、居住実態なしとみなし、「職権による消除」という形で、住民登録が削除されることもあります。

日本国内のどこかに住民登録がないと、健康保険などの公共サービスを受けられなくなるため、さらなる苦境へと追い込まれてしまいます。

債務者の住所の変遷を追っていくと、転居するたびに住む地域や家のグレードが下がっていくパターンが典型的です。

都会→郊外、駅の近く→駅から遠い、一戸建てかマンション→アパート→文化住宅というような流れです。

住宅地図やインターネットで行き方を調べても、最寄り駅まで電車で30分以上かかり、そこからも徒歩20~30分、またはバス(15~20分に一本)で20分という感じの、不便な地域に住んでいる人が多いのです。

こちらの勤務先からだと往復で3~4時間かかることもあり、そうなると半日まるまる潰れることになります。

都道府県営住宅や市営住宅は郊外に建っている所が多く、平均的に築年数も古いので、家賃が安いということで転居する人も多いのでしょう。

また、○○パレスのアパートや、シャー○○○のアパートなど、借りやすい賃貸住宅ばかりを転々としている人もいます。

最近はインターネットで○○マップを検索すれば、訪問先の画像が確認できるので便利ですが、10~15年くらい前まではそうしたこともできませんでした。

実際に訪問してみると、昔のドラマに出てくるナントカ荘みたいな文化住宅だったりもします。そういう時は、回収は難しいかなと諦めそうになることもありました・・・。

玄関横の窓ガラスが割れているのですが、新しいガラスを入れる余裕がないのか、内側から新聞紙を貼り付けているだけの家がありました。

インターフォンではなく、古いタイプの呼び鈴が付いている確率も結構高かったです。

1階の集合ポストを確認すると、債務者の郵便受けから役所やサラ金の封書(おそらく督促状でしょう)がはみ出していることも度々ありました。

強烈に記憶に残っているのは、ある債務者の自宅を訪問した際、玄関のドアに、「○○さん、何か言うことあるのと違うか。」と黒のマジックで書かれた紙が貼られていたことです。その債務者は不在だったので、貼り紙の詳細を聞くことはできませんでした。

時間をかけて債務者を訪問しても、本人に会えることは稀です。家族が応対することもほぼありません。たまに家の中から物音がする時がありますが、居留守を使われてはどうしようもありません。

2005年の「個人情報保護法」施行以来、近所の人に居住実態を聞こうとしても、教えてくれる人が激減しました。余計な事に関わりたくないのかもしれません。それ以前は、細かく教えてくれる人が割と多かったのですが・・・。

他の記事でも書きましたが、コロナ不況はこれから本格化していきます。
近所に住んでいた人が、ある日突然引っ越したり、夜逃げして姿を消すことが、我々の周囲でも起こるかもしれません。まずは自分がそうならないようにしたいところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。