債権回収の仕事の大きな割合を占める作業は、やはり督促です。
「お金を返してください。」
と頼まなければ、何も始まりません。
できれば債務者全員と直に面談できればよいのですが、全員と顔を合わせることはまず不可能です。
文書で「何月何日何時頃にお越しください。」という呼出状を送っても、かなりの確率(個人的なイメージでは70%くらい)で来ません。
「用事(仕事)があるので、その日は行けません。」と電話をくれるのはましな方で、2~3回送っても何の連絡もない債務者の方が圧倒的に多いです。
固定電話にかけても、本人と話せる確率は極めて低い!
そうなると、電話をかけることになります。
しかし、固定電話にかけても日中はほとんど繋がりません。
本人や家族が仕事や学校などのため外出していることが多く、コール音が虚しく鳴り続けます。
留守電に切り替わり、メッセージを吹き込んでも、翌日以降に返電が来ることは滅多にありません。
家人が出た場合でも、債務のことは詳しく言えないので、
「折り返しお電話いただけますよう、お伝え願います。」
と依頼するしかありません。
これまた、本人から返電が来る確率は極めて低いのです。
携帯電話だと、かなり確率は上がるが・・・。
携帯電話にかける場合は、多少事情が違ってきます。
例えば個人事業主の場合、知らない番号から電話がかかってきても、全て無視するわけにはいきません。
仕事の依頼など重要な内容かもしれないので、応答せざるを得ません。
固定電話よりは、かなり本人と連絡が取れる率が上がります。
それでも、
「今、仕事先にいますんで、手が離せません。」
「電車で移動中なんです。」
などと言われると、そのまま話を続けるわけにもいきません。
一旦切っても、後で返電がないままだったり、再度かけると着信拒否(笑)されていたりすることがよくあります。
電話したり訪問していい時間帯は、法律で定められている!
通常の会社は午後5時~6時くらいで終業となりますので、それ以降に担当者が電話をすることはあまりありません。もし電話中にトラブルになったり、話が長引いたりするのを嫌うからです。
また、遅い時間だから必ず連絡が取れるとも限りません。
ちなみに、債務者や連帯保証人などに電話をかけたり、FAXなどを送信したり、あるいは自宅を訪問してもよい時間帯は、法律(貸金業法及びサービサー法)で定められています。
午後9時~午前8時の間は、連絡は原則的に禁じられています。
しかし、よくよく考えてみると、午後8時~午前9時にするのがベターだと個人的には思います。
午後9時までOKだと、家に帰って夕食を食べたり、家族がいれば一緒にくつろいでいる頃でも、電話がかかって来る恐れがあります。
反対に午前8時からOKだと、仕事に出かける前や通勤途中にかかって来る可能性もあります。
一応法律では、そうした時間帯はダメだとしか規定されていないので、例えば午後7時30分頃や、午前8時15分頃に債権者が電話をかけても違法にはなりません。
但し、正当な理由なく、何日も連続してそうした時間帯に電話で督促を繰り返すと、法律の他の部分に抵触することになります・・・。
部署全体で一斉に残業し、夜間の電話督促をやってみた!
かつて私が債権回収の担当者だった頃、所属部署全体で週一回残業をし、終業時間以降も(当時は午後5時でした)電話督促をするという試みが行われました。
午後6~7時頃なら、債権者たちが家に帰っている可能性があり、電話で返済交渉できる可能性が高まるかもという理由からでした。
リミットは午後8時までと決められました。
実際にやってみたところ、本人と連絡が取れる確率は確かに上がりました。
劇的に上がったわけではありませんが、10回中3~4回は本人か家人が出ました。
本人の場合はそのまま交渉を行い、家人には伝言を残しました。
その場合、返電の確率も少し上がりました。
夕方以降に債権者から電話がかかってきて、さすがに慌てたのかもしれません。
本人が出た時も、明らかに動揺していることがしばしばありました。
特に家族が家にいる時間帯なら、尚更でしょう。
迷惑そうな口調で、すぐにでも電話を切りたそうな感じが、電話口からありありと伝わってきます。
こちらもあまり長電話になるとクレームにつながる恐れがあるので、要点を簡潔に述べて、早急に返済を開始するよう求めます。
一定の効果を得られたが、返済はなかなか続かない・・・。
私自身は言われませんでしたが、他の担当者には
「こんな時間に電話をしてくるなんて、非常識じゃないのか!法律に違反してないか?」
というようなことを言われた人もいました。
しかし、非常識でも法律違反でもないので、こちら側が謝る必要はありません。
交渉以降、債務者たちからの返済が開始(または再開)される率も、少しは上がりました。
私の担当案件でも、翌月くらいから返済し始めた人が何人かいました。
しかし、安定して毎月返済し続ける債務者たちは少なく、しばらくすると再び滞ってしまう人も続出しました。
人間の意志などはしょせん弱いもので、厳しくしつこく督促されないと返済しないのだと実感しました。
残業して電話督促するという試みは、結局3ヶ月ほどで終了しました。
一定の効果があることは立証されましたが、大人数で残業することの費用対効果も考えてのことだったのでしょう。
最後に・・・。
もしこの記事をお読みの貴方が債務を背負っていて、現在延滞中なら、今後夕方の食事時に自宅へ督促の電話がかかって来るかもしれません。
債権者の筋が良くない所だと、かなり厳しい言葉で督促してくる可能性もあります。
食事の味が一気にまずくなってしまうこと請け合いです。
留守番電話にしておくか、債権者の番号は着信拒否にしておくなどの対策が必要でしょう。
ただ、そうしてもしばらくすると、ある日自宅の玄関前に債権者が立っている、なんてことになるかもしれません・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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私は長年、債権回収すなわち借金取りの仕事をしてきました。借金を抱えている人は、当然のことですが、プレッシャーに苦しみ悩みます。金額が大きくなればなるほど、「ちゃんと全額返済できるだろうか?」という不安も増幅さ[…]