借金を残したまま死亡すると、家族・親戚間でトラブルに!?

私は長年、債権回収すなわち借金取りの仕事をしてきました。

借金を抱えている人は、当然のことですが、プレッシャーに苦しみ悩みます。

金額が大きくなればなるほど、

「ちゃんと全額返済できるだろうか?」

という不安も増幅されます。

債務者本人以外に連帯保証人などがいなければ、そうした悩みは自分だけが抱えます。

しかし、債務者が債務を完済できないまま亡くなってしまうと、そうもいかなくなります。

「相続」が絡んでくるからです。

 

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相続は、プラスだけでなくマイナスも一緒に引き継ぐ!

ご存知の方も多いと思いますが、人が亡くなると、その人の

「資産及び負債」

が相続の対象になります。

資産『及び負債』という所が重要で、もし相続するとその相続人は資産というプラスだけでなく、負債というマイナスも一緒に相続することになります。

資産だけ受け継ぐという「おいしいトコ取り」はできません。

 

相続しない場合は、家庭裁判所への申立が必要!

勘違いしている方が結構多いのですが、相続は自動的かつ強制的に行われるわけではありません。

被相続人(亡くなった人)に関して、「相続が開始した時」(自分が相続対象者であることを知った時)から「三ヶ月以内」に、

「相続放棄」(相続しないこと)または

「限定承認」(相続する財産の範囲で、負債も相続する)

を行う場合、その旨を家庭裁判所に対して申立することが必要です。

期間内に申立しなかった場合、「単純相続」つまりプラスもマイナスも相続することになります。

「単純相続」を初めから決めていれば、家庭裁判所への申立は不要です。

 

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一般人にとっては、借金を相続する可能性の方が高い!

時々マスコミで、政財界人や芸能人などの相続問題につき、大きな話題となることがあります。

しかし大抵は「プラスの財産」、たとえば10億円の銀行預金や3億円の豪邸の分配などです。

観ている我々平民にとっては、遠い世界の話です。

むしろ一般人にとっては、「マイナスの財産」つまり負債(=借金)を相続して背負い込んでしまう確率の方が高いと言えます。

 

債務者の相続人調査は、かなり手間と時間がかかる!

債務者が亡くなったことが判明すると、債権者はまず最初に債務者の住民票を入手します。

住民票には

「令和○年×月△日死亡」

と、死亡の事実が記載されています。

続いて今度は、「本籍地記載のある」住民票を請求します。

いきなり本籍地記載のある住民票は請求できず、通常の住民票を入手した上で、そのコピーを添付して申請しないといけません。

本籍地記載のある住民票を入手できたら、本籍地を管轄する役所に「戸籍謄本」を請求します。

そして、亡くなった人の家族関係を遡って調べていきます。

これがかなり骨の折れる仕事で、場合によっては3ヶ月ほどかかることもあります。

 

相続順位や相続割合は法律で定められている!

相続対象者は

(第一順位)配偶者と子供

(第二順位)尊属(父母、祖父母)

(第三順位)兄弟姉妹

が原則で、相続割合も民法で定められています。

相続対象者をどこまで遡って調べるかは、債権者によって多少異なります。

無担保債権の場合は第一順位まで、有担保債権の場合は第三順位(あるいはそれ以上)まで調べるのが平均的ではないでしょうか。

 

配偶者と子供は、大抵の場合速やかに相続放棄する!

配偶者と子供については、割と簡単に判明します。

しかし、必ずしも亡き夫や妻、父母の借金について知っているわけではありません。

通知文書を送ると、驚かれることもあります。

また、文書には相続についての基本的事項も一通り記載していますが、相手側がよく分からないと連絡してきたら、改めて説明します。

借金を返せない債務者に大した資産があるはずもなく、ほとんどの事例では遺族が相続放棄の手続を弁護士に依頼します。

申立が行われ、家庭裁判所が申立を認めると、裁判所から受理通知(申立を認める内容)が届きます。

そのコピーが遺族から債権者宛てに送られて来たら、相続放棄した人は最初から相続人ではないということになり、以降絶対に督促することはありません。

 

『限定承認』という選択肢も稀にある!

ごく稀に、債務者に自宅などの所有不動産があり、住んでいる遺族がそれを守りたい場合、

「限定承認」

という手続を取る遺族もいます。

プラスの財産の限度に限り、マイナスの財産も相続するという手続です。

大雑把な例ですが、家の価値がたとえば500万円で、亡くなった債務者(被相続人)の債務額が1,000万円だった場合、遺族は家を相続するとともに500万円を返済して終わりという形です。

 

父母や兄弟姉妹の場合、話が進まないことも多い!

一方、父母や兄弟姉妹の場合は、話がややこしくなってきます。

大多数の事例では、親兄弟は亡くなった債務者の債務については全く関知していません。

いきなり債権者から通知が届くと、ほぼ100%の確率で驚かれます。

自分の子供や兄弟姉妹にめぼしい資産がなければ、相続放棄してもらえばいい話です。

ところが、

「何でそんな面倒な手続をしないといけない?」

「今まで長い間顔も合わせてない。自分は関係ない!」

などと、相続放棄の手続すら嫌がる人がかなりいます。

確かに、弁護士に相談して手続の代行を依頼するとなると、タダというわけにはいきません。

また、家庭裁判所に提出する書類の準備にも手間がかかります。

前述した通り、自分が相続人となる可能性があることを知った時から「三ヶ月以内」に判断すればよいので、すぐに決める必要はありません。

債権者としては三ヶ月待ち、それから相手方や家庭裁判所に確認します。

相続放棄の申立がなされていなければ、その相手を相続人とみなし、返済督促をしていくことになります。

 

最後に・・・。

債権者から通知が届いたことで、亡くなった債務者の配偶者が親族から責め立てられ、大喧嘩になったというような話はよく聞かされます。

債務、つまり借金を残したままこの世を去ると、残された遺族や親族に色々と迷惑がかかり、トラブルを引き起こしたりもします。

スレた債務者の中には、

「自分が死んだら、家族には相続放棄させます。」

とあっけらかんと話す人もいます。

しかし、そうした揉め事が自分の死後に起こりうることは、きちんと認識しておいて欲しいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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