養子縁組で改名し、借金から逃げようとする債務者!

「養子縁組」

という法律制度は、日本社会では割とよく利用されています。

結婚する際に、夫となる男性が妻の家に養子として入る

「婿養子」

は典型例です。

また、政治家などの家系で跡継ぎの男子がいないため、近親者の男子を養子に迎え入れることも時々あります。

 

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『養子縁組』を悪用した犯罪が多発した!

21世紀に入ってからの一時期、この「養子縁組」がマスコミでよく取り上げられることがありました。

と言っても、養子縁組ブームが起きたわけではありません。

養子縁組制度を悪用した犯罪が多発したからです。

「養子縁組をどうやって犯罪に利用するのか?」

と疑問をお持ちの方も多いでしょう。

実は、養子縁組によって「姓」、すなわち名字を変更し、

債権者の追跡をかわし、債務を免れようとする

ブラックリストに載っている多重債務者が、新たに借金をしようとする

犯罪が多発しました。

現在も、時折テレビや新聞のニュースになることがあります。

 

名字を正式に変更するのは難しい!

我々は原則的に、両親のどちらかの姓を名乗ることになります。

芸能人や作家など、芸名やペンネームを使用している人も、公的な書類には必ず本名を記入します。

運転免許証やパスポートなどには、本名が記載されます。

姓を変更するには、両親のもう一方の姓にするか、養子縁組で異なる姓に変えるかしかありません。

 

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金融・信販会社のデータベースは、大きな関門!

金融機関や消費者金融(サラ金)でお金を借りるには、当然本名で申し込むことになります。

運転免許証やパスポートなどの、本人確認書類コピーを提出します。

サラ金や信販会社では、各社が加入する共通のデータベースがあることは有名です。

申込人の氏名や生年月日などを入力し検索すると、過去の利用履歴などがすぐ分かります。

他社で長期延滞があったり、多重債務者となっている事実が判明すると、門前払いとなります。

そして多重債務者には、複数の金融業者から猛烈な督促がかけられます。

いわゆる「追い込み」です。

 

『反社』が裏で指南・斡旋!

こうした督促を逃れ、果ては債務そのものを免れようとする手段として、養子縁組が使われます。

一つ目は、全くの第三者に報酬を払い、その人の養子となるという方法です。

完全なビジネスです(もちろん違法)。

ただ、素人の債務者が、自力で養子にしてくれる人を探せるはずもありません。

ヤクザ、いわゆる「反社」

がそうした方法を指南し、第三者を斡旋するのです。

債務者が支払う報酬は、反社が肩代わりしてくれるそうです。

しかし、かなりの部分は、反社が中抜きするとか・・・。

そして、肩代わりしたお金は、債務者から違う形で回収します。

多重債務者を養子にする第三者も、自らが多重債務者だったり、色々訳ありの人らしいです。

 

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無関係の人が知らないうちに、養子縁組させられていることも!

二つ目は、債務者や反社と全く無縁の人が、知らないうちに勝手に債務者と養子縁組をさせられてしまうというものです。

不正な手段でその人の住民票などを入手したり、書類を偽造して、養子縁組の手続をしてしまうのです。

これも素人にできることではなく、反社が絡んでいます。

ある日何かで必要となり、自分の戸籍謄本(写し)を入手したところ、全く知らない人間が自分の養子になっており、事件が発覚するというパターンです。

最近は手続が厳格化され、以前のようなことはできないようです。

 

養子縁組を繰り返し、借金しまくる例も!

手口が悪質化すると、養子となり姓を変えては借金を繰り返し、しばらくするとまた別の人の養子となり、姓を変えては借金しまくるという例もあります。

ただ、そうしてだまし取ったお金の大部分は、反社に吸い取られるはずですが・・・。

 

債務者の追跡は、さほど難しくない!

しかし債権者の側からすれば、次々と名字を変えられても、追跡することはさほど難しくありません。

ただ、手間はかなりかかりますが・・・。

債務者への督促状などが「宛て所不明」などで戻ってくると、住民票(写し)を申請して入手します。

すると、名字が変わっていることがあります。

住民票には、旧姓や改姓の理由などは書かれていません。

そこで、再度住民票を申請する際に、旧姓も記載するよう依頼します。

すると、次に入手した住民票には、新しい姓の上部に旧姓も併記されています。

これで、同一人物であることが確認できます。

 

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住所変更も届出されている。理由は・・・。

住所が変わっていると、

「○✕県△□市〜へ転出」

と記載されているので、今度はそこの住民票を申請します。

住所を転々としていても、相手が住民票を移していれば追い続けられます。

途中で再び改姓しても、住民票で把握できます。

本当なら、住民票を以前の住所のままで放っておけば、追跡されにくくなります。

しかし、それだと借金がしにくくなるのです。

金融機関などに住民票を提出する際、遠方の住所だと間違いなく不審に思われます。

また、居住する自治体に住民票を置いていないと、生活のあらゆる面で不都合が生じます。

銀行やサラ金、果てはヤミ金も基本的には、まず住民票を辿って追いかけます。

 

短期間で転居を繰り返す共通点が!

私が債権回収の仕事をしていた頃、他人の養子になり姓が変わった債務者が数人いました。

私が担当した債務者では、姓を2回変更したのが最多でした。

せっかく名字を変えたのに、最終的に元の名字に戻した債務者もいました。

全員に共通していた点は、

短期間で転居を繰り返していた

ことです。

半年〜1年ごと、早ければ3ヶ月ほどで別の住所に転居します。

同じ都道府県内ではなく、別の都道府県に移転することがほとんどでした。

「こんなに頻繁に引っ越しする金があるなら、返済しろよ・・・。」

と言いたくなります。

しかし、あちこちで借金を踏み倒し続けている身では、1か所に長く住み続けるのは危険なのでしょう。

おそらく、指南役の反社からの指示で、半ば強制的に転居させられている感じがします。

「○○パレス2✕」

の格安賃貸住宅を、転々としている債務者がいました・・・。

 

最後に・・・。

結論としては、

「法律を悪用しても、借金は消えてなくならない。」

の一語に尽きます。

そして、「養子縁組サギ」とでも言うべき手口にハマり込んだ人間は、反社にいいように使われ、最後は使い捨てされるという話が、雑誌に載っていました。

やはり世の中

「因果応報」

ということでしょうか・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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