今から20年ほど前、21世紀の初頭に
「聖域なき構造改革」
という言葉が、一時期テレビや新聞・雑誌でよく用いられました。
第一次小泉内閣(首相は「セクシー」議員のパパ)
の最重要課題としてアピールされました。
政治・経済をはじめ日本の各分野を、今までタブーすなわち
「聖域」
として手をつけて来なかった分野も含め、改革の対象とするという、大胆な目標でした。
結果は、皆様お分かりの通りです。
ほとんどの聖域は温存され、
「郵政民営化」
「派遣労働の規制緩和」
など、ほとんど効果のない、あるいは手をつけるべきでなかった分野のみ、大きく変更されました。
当時の首相は
「〜をぶっ壊す!」
をキャッチフレーズとしていましたが、確かに2022年1月現在、日本社会の様々な部分がぶっ壊れています・・・。
『聖域なき』って、英語でどう表現?
「構造改革」は英訳すると
「structual reforms」
となります。
改革は、普通複数の分野で行われるので、
「reforms」
と複数形になります。
ところで、「聖域なき」は英語でどう表現すればいいでしょうか?
『聖域』の直訳語は、宗教的な意味を・・・。
大修館書店 ジーニアス和英辞典で「聖域」を調べると、まず
「sanctuary」[sˈæŋ(k)tʃuèri(米国英語), ˈsæŋktʃu:ˌeri:(英国英語)]
が出て来ます。
いくつかの意味を持ちますが、
「神聖な場所」
「聖域」
という意味も持ちます。
続いて
「sanctum」[sˈæŋ(k)təm(米国英語)]
が登場します。
「聖所」
「(落ち着ける)私室、奥まった部屋」
という意味です。
ただ、これら二つは文字通り
「(宗教上の)聖域」
を表すものです。
今回の「聖域なき」に適した単語ではありません。
『聖域』を『例外』と言い換えると・・・。
そうした指摘を予想していたかのように、ジーニアス和英辞典では
「聖域なき構造改革」
を挙げ、
「structual reforms without exceptions」
という英訳を載せています。
「exception」[eksépʃən(米国英語), ɪˈksepʃʌn(英国英語)]は、
「(〜に対する)例外、特例」
という意味を持ちます。
例外を設けず、必要とあらばどの分野も改革する、という意味では、まさしくドンピシャの英訳と言えます。
ベストの英訳には、『牛』が出て来る!
ただ、さらに良い英訳がありました。
読売新聞社発行の英字新聞
「デイリー・ヨミウリ」
の編集による
「最新ニュース英語辞典」(㈱東京堂出版より2005年1月に発行)
では、「聖域なき構造改革」を
「structural reforms without fears of ‘‘sacred cows’’」
と英訳しています。
同書の解説によると、「sacred cow」[séɪkrɪd(米国英語), ˈseɪkrɪd(英国英語)] [kάʊ(米国英語)]とはヒンドゥー教で
「聖牛、聖なる牛」
を指します。
それが転じて
「批判や疑問視を許さない、神聖視された制度や信念」
として用いられるようになったとのこと。
こちらの表現の方が、カッコ良く聞こえそうです。
最後に・・・。
今までご紹介してきたように、「聖域」は
「例外」
「触れてはいけないタブー」
のような意味を含みます。
日本の政治や経済・財政の分野は、まだまだ「聖域」だらけです。
と言っても実際は、少数の利害関係者たちが得をするため、ああだこうだと理屈を並べ、聖域化しているだけに過ぎません。
しかし国民は、そうした「聖域」に対して反対の声を上げるどころか、見て見ぬふりをしているようにさえ思えます。
ここまで来ると、半ば宗教的な恐怖心を抱いているように見えます。
私がこの世を去る頃にも、「聖域」はあちこちで生き残っているのでしょうか・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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