バド・パウエルの「Un Poco Loco」三連発は衝撃のピアノ!

ジャズの世界でも、「天才」と呼ばれるピアニストは割と大勢います。

有名どころではビル・エヴァンス、ソニー・クラーク、セロニアス・モンク、ハービー・ハンコック、キース・ジャレット、チック・コリア・・・。

挙げて行けばキリがありません。

それぞれに強い個性があり、聴く人の好みによって熱中したりしなかったりします。

誰がベストかという話は面白いのですが、一人を決めるのは不可能と言っていいでしょう。

 

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バド・パウエルには『奇才』または『鬼才』という言葉が似合う!

ただ、「奇才」または「鬼才」という日本語が一番似合うジャズ・ピアニストは、

バド・パウエル(Bud Powell :本名 Earl Rudolph Powell 1924年~1966年)

ではないでしょうか。

アメリカ・ニューヨーク生まれのパウエルは、1940年代後半~1950年代中盤に絶頂期を迎えた人で、ビバップ(bebop)スタイルの中心人物の一人です。

私がパウエルを最初に知ったのは、ジャズ評論家兼ジャズ喫茶「いーぐる」(東京の四谷)店主である後藤雅洋さんの著書

「ジャズ・レーベル完全入門」(河出書房新社)

がきっかけです。

 

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本に紹介されていた、ブルーノート1500番台の二枚を買ってみた。

ジャズ初心者だった私は、CD購入の参考にと買ったのですが、その中で紹介されていたのが、

「ジ・アメイジング・バド・パウエル」(The Amazing Bud Powell)

のVol.1及びVol.2です。

以前の記事でも書きましたが、私は一時期「ブルーノート」レーベルの「1500番台」と呼ばれるアルバムのCDを買いまくっていました。

上記のVol.1とVol.2は、その1500番台の「1503」及び「1504」でした。

本で知って間もなく、二枚とも購入しました。

 

最初の三曲目までが、同じ曲の別テイクだった!

Vol.1の1曲目「Un Poco Loco」(ウン・ポコ・ローコ)はパウエル本人が作曲しましたが、今まで聴いたことのない曲調でした。

そして、私のようなピアノのド素人でも

「この曲をちゃんと弾くには、テクニックがすごく要るだろうな・・・。」

と分かるほど難しい曲でした。1曲目が終わり、2曲目を待っていると、また同じメロディーが流れてきます。

しかし、ずっと聴いていると、1曲目とは所々で微妙な違いがあることに気付きます。

結局、3曲目も同じく「Un Poco Loco」で、1~3曲目までは異なるテイクが収録されています。

整形外科医兼ジャズライターの小川隆夫さんは、著書

「はじめてのブルーノート」(音楽之友社)で、

「高校時代にこのアルバム(レコード)を買って聴いた時、同じ曲が3曲続けて入っていたので、プレスに失敗した不良品を掴まされたと一瞬思った。」

という趣旨のことをお書きになられています。

4曲目(実質2曲目)以降も名演ばかりで、続くVol.2も間違いなく名盤です。

しかし、Vol.1の「Un Poco Loco」三連発はインパクト特大で、我々ファンの心をわしづかみにするには充分でした。

 

麻薬、アルコール、精神疾患・・・パウエルの人生は波瀾万丈!

そんなパウエルでしたが、その才能・テクニックと共に、波乱に満ちた人生もジャズファンの間では有名です。

1950年代中盤以降は、麻薬・アルコール中毒(ジャズ・ミュージシャンにはありがち)に陥り、精神疾患にも苦しむようになりました。

そんな不調の時期にも優れた演奏を残してはいますが、万全な体調及び精神状態であったならばもっとやれたはずという意見は多数あります。

1960年代初期にパウエルはフランスへ渡り、現地で演奏活動を続けました。

その中で麻薬中毒は断ち切ったものの、既に身体は蝕まれており、1961年にアメリカへ帰国してしばらく後に死去しました。

 

代表曲のタイトルが、今振り返ると何とも皮肉・・・。

前述の「Un Poco Loco」は1951年5月1日に録音されていますので、パウエルが麻薬やアルコールに溺れ精神を病む以前の曲です。

「Un Poco Loco」という曲名はスペイン語であり、英語に訳すと

「A Little Crazy」(少しクレイジー=少しおかしい)

という意味になります。

単なる偶然ですが、自分が後にそのような状態になることを予知していたのでは?と感じてしまいます。

今になって振り返ると、皮肉で物悲しい曲名です。

 

最後に・・・。

パウエルは42歳で亡くなりましたが、あまりにも早過ぎます。

天才肌の人にありがちですが、「生き急いだ」という表現がピッタリ来ます。

パウエルと同じく若い頃麻薬にハマったビル・エヴァンスや、テナーサックスの巨人ジョン・コルトレーンも、40歳や50歳ちょっとという年齢でこの世を去っています。

パウエルにはもっと元気で長生きし、まだまだ多くの曲やアルバムを残して欲しかったところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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