「名伯楽」(めいはくらく)
という言葉は、スポーツの世界でよく使われます。
「人の才能・資質を見抜くことのできる目利きであり、それを育てて伸ばせる人」
を意味します。
中国の春秋時代に存在したと言われる、伝説的な人物
「伯楽」
が語源です。
本名は孫陽(そん よう)。
速く走れる馬を見抜き育てることに優れていた彼は、秦の皇帝から
「伯楽将軍」
の名を与えられました。
スポーツの監督が、名伯楽の典型例!
そこから
「人の才能を見出だし、開花させる人間」
の代名詞として「名伯楽」が使われるようになりました。
日本では、野球の古田敦也さんや田中将大さんらを育てた、元南海・ヤクルト・阪神・楽天監督の
故・野村克也さん
が典型例として挙げられます。
外国では、イングランドの名門サッカークラブ「マンチェスター・ユナイテッド」の監督を27年間務め、デイヴィッド・ベッカムやクリスチアーノ・ロナウドなど多くのスター選手を育成した
サー・アレックス・ファーガソン
も間違いなく「名伯楽」です。
ジャズ界の二人の巨人も、名伯楽だった!
スポーツだけでなく音楽、ジャズの世界でも「名伯楽」は多数存在します。
ジャズ界の巨人であった、ジャズの帝王こと
マイルス・デイヴィス
と、ジャズ・ドラムに革命を起こした
アート・ブレイキー
も、実は名伯楽だったのです。
二人とも自身が天才だったのですが、若手ミュージシャンの才能を見出だして大成させる能力にも秀でていました。
積極的に若手を抜擢、後の世界的スターも多数在籍!
ジャズ・ミュージシャンは、大抵バンド(グループ)で演奏します。
リーダーのミュージシャンが他のミュージシャンを集め、3人~6人程度のバンドを結成します。
クァルテット(4人編成)、クインテット(5人編成)などです。
中には、若手を抜擢して重用する人もいます。
マイルスやブレイキーも、自分のバンドに若手有望株を積極的に加入させていました。
マイルスのバンドにはジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、ポール・チェンバース、ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムスなど、書き切れないほどの世界的ミュージシャンが多数在籍していました。
ブレイキーのバンドにも、リー・モーガン、ボビー・ティモンズ、ウェイン・ショーター、ジャッキー・マクリーンなど、ジャズ史に名を残すミュージシャンたちが在籍していました。
若手の加入でバンドの新陳代謝を図り、自らも進化を続けた!
メンバーが独立してバンドを離れると、新たに若手を発掘するというシステムでした。
そうすることで、バンドの新陳代謝を促進しました。
また自らも、若手の最先端のセンスやスタイルを吸収し、自分の演奏法や作風を進化させていったのです。
マイルスとブレイキーの二人とも
「過去の人」
にならず、晩年までジャズ・シーンの最前線に居続けられたのは、自らの才能に加えてそうした能力を備えていたからでもあるでしょう。
最後に・・・。
ジャズなどの音楽やスポーツの世界に限らず、どんな分野でも
「人を育てる」
「組織を活性化させて維持する」
ことは最も重要な課題です。
と同時に、最も達成が難しい課題です。
企業でも、トップの会長や社長(特に創業者)が
「自分で何でも仕切りたがり決めたがる」
会社は、人材が育たず組織も硬直化してしまいます。
現在「カリスマ」と呼ばれる名物経営者が君臨する企業も、カリスマが去った後に成長を続けられるとは限りません。
そうした経営者には、ジャズ界のカリスマだったマイルスとブレイキーに学び、若い人材をどんどん登用し伸ばす方向に舵を切ってもらいたいものです。
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