身に覚えがないのに支払督促が届いたら?:放置せず、絶対確認!

お金や法律などの話(夫)

「支払督促」とは何か?と尋ねられて、きちんと説明できる方は、非常に少ないと思います。

弁護士などの法律関係者、金融機関や役所に勤めていらっしゃる方々を除けば、そんな制度があることも知らないという方々がほとんどではないでしょうか。

裁判や訴訟と言われれば、裁判所で原告と被告がそれぞれの主張を述べ、裁判官が判決を言い渡して決着を付けるという制度であると、多くの方々が答えられるはずです。

それに対して、支払督促は非常にマイナーな制度であり、裁判に比べて利用されることの少ない法的措置です。

日本では、金銭トラブルや近隣トラブルなどの争いを、裁判などの法的措置で解決することは欧米ほど一般的ではなく、民事及び刑事の裁判に一度も関わることなく一生を終える方々は、かなり多いはずです。

支払督促とは?身に覚えがなくても詐欺の可能性あり!

裁判所から書類が届いたことも、訴状などを見たこともないという方の元に、ある日突然裁判所から郵便が届き、封を開けると、支払督促という厳めしい文言の書かれた文書が届いたら?

支払督促とは、金銭の支払、有価証券またはその代替物の引き渡しを求める場合にのみ利用できる法的措置です。

単純に言えば、裁判所を通じて「貸した金を返せ!」と督促できる制度です。
詳細については、他のサイトで様々な専門家が解説していますので、そちらをご参照願います。

銀行や消費者金融から多額の借金があり、返済が滞っている方々は、こうした文書が届いても、心当たりがあるので、もしかすると大して驚かないかもしれません。

一方、どこからも借金をしていない方や、借金はあるが真面目に返済を続けている方は、「これは何だ!」と驚かれると思います。

文書には当然、申立人すなわち債権者の住所及び氏名・法人名が書かれています。

その債権者に全く覚えがない場合、貴方ならどういう行動を取りますか?

最近は、詐欺の色々な手口がマスコミで紹介されていますので、そういう知識のある方なら、「ああ、これは詐欺の書類だな。こういうのには、連絡してはいけないって、テレビでも弁護士や評論家が呼びかけてるから、放っておこう。」と考えるかもしれません。

残念ながら、この判断は100点満点とは言えません。場合によっては、0点となってしまうこともあります。

「どういうこと?身に覚えのない借金を返せと言われていて、絶対に相手は詐欺師(詐欺グループ)だ!こんな場合は、無視するのが鉄則なんじゃないの?」

という反論が返って来そうです。

ところが、こうした判断こそが詐欺師や詐欺グループの狙いなのです。

「どうして?そもそも、こんな書類は偽物でしょ?裁判所が、存在しない債権の支払督促を認めるわけないよね。」

残念ながら、支払督促は、存在しない債権であっても申立できてしまうのです。

支払督促を申立する場合、相手方すなわち債務者の住所地を管轄する、簡易裁判所の書記官に申立することになっています。

多くの方々は、裁判所というとまず地方裁判所を連想されると思います(例えば東京地方裁判所)
あるいは、高等裁判所や最高裁判所を連想されるかもしれません。

しかし、地方裁判所の下に位置する簡易裁判所は全国にかなりの数あり、東京や大阪などでは、10ヶ所ほどの簡易裁判所が存在します。

申立書に申立手数料として収入印紙を貼付し、郵送用の郵便切手や官制ハガキ(裁判所から申立人に、支払督促の発付を通知するため)、資格証明書(債権者や債務者が法人の場合)などを添付して申立します(郵送による申立も可能)。

カンの良い方々ならお気づきかもしれませんが、契約書などの証拠書類は、申立の時点では添付不要なのです。

ですから、存在しない債権であっても、申立の時点では内容の詳細な確認は行われず、申立書の内容や添付書類などに不備がなければ、支払督促は正式に行われてしまうのです。

ところが、この後の手続が複雑で、支払督促を申立された側、つまり債務者がどういう対応をするかによっては、支払督促の手続は中断されます

詐欺師や詐欺グループによる申立の場合、そうした連中が支払督促を取り下げざるを得なくなり、結果的に貴方は詐欺被害から逃れることができます。

支払督促が送られて来たら?

簡易裁判所から支払督促が発付されると、債務者宛に郵送されるのですが、郵送は特別送達という形で行われます。
郵便受けに投げ込まれて終わりではなく、郵便配達の方が玄関先まで届けに来ます。
本人または家族が直接受け取って、受領証に受領印を押印するか署名することで送達と認められます。

郵便局から送達完了の連絡を受けた簡易裁判所は、申立債権者にハガキで送達完了の連絡をします。

支払督促を受領した債務者は、受領日から2週間以内にいずれかの行動を取ります。

①封筒に同封されている「異議申立書」に必要事項を記入し、裁判所へ提出する(郵送も可能)。

簡易裁判所が異議申立書を受領すると、事件を地方裁判所に回し、一般的な訴訟へと移行させます。

こうなると、申立債権者は、支払督促の申立時に払った申立手数料と同額の手数料を追加で納める必要があります。
支払督促の申立手数料は訴訟の申立手数料の半額なので、訴訟に移行すれば、残り半額が必要というわけです。

そして、地方裁判所での訴訟となると、証拠書類が必要になります。
裁判所での口頭弁論の前に、証拠書類のコピーを提出し、裁判の過程で原本の確認が行われます。

もともと存在しない債権であれば、融資の際の契約書などあるはずもありません。書類を偽造しても、ばれるのは明らかです。

その場合、詐欺師や詐欺グループは、支払督促そのものを取り下げてしまいます。取下書には特に理由を書く必要もありません。

②異議申立書を提出しない=放置しておく。

では、放置しておいた場合はどうなるのでしょうか?

債務者が支払督促の受領日から2週間以内に異議申立を行わなかった場合、申立債権者は、異議申立期間経過日から30日以内に、仮執行宣言申立書を簡易裁判所に提出します。

簡易裁判所は受理した上で審査を行い、不備がなければ仮執行宣言をします。
そして、仮執行宣言が付された支払督促を、債務者宛に郵送します。

今回も特別送達で郵送され、本人または家族の受領により送達完了となります。

この仮執行宣言付支払督促にも、異議申立書が同封されており、受領日から2週間以内にいずれかの行動を取ります。

(1)異議申立書に必要事項を記入し、裁判所へ持ち込みまたは郵送で提出する。

最初の時と同様、地方裁判所での訴訟に移行します。
最初の支払督促が届いた時には無視していたとしても、この段階で異議申立を行えば、詐欺による申立は事実上無意味になり、申立債権者である詐欺師や詐欺グループは取下するしかありません

異議申立書の記入は簡単です。
住所・氏名を記入し、異議を申し立てる旨を簡潔に書けば、それで十分です。
異議の理由を細かく述べる必要もありません。
裁判所によって書式は微妙に異なりますが、裁判所によっては、異議申立書に「異議を申し立てるます。」という文が既に書かれてあり、その前のチェックボックスにチェック印を書けば、それで異議申立とみなされます。

(2)異議申立書を提出せず、放置しておく。

本当に問題なのは、仮執行宣言付支払督促に対しても受領日から2週間以内に異議を申し立てなかった、放置した場合です。

この場合、仮執行宣言付支払督促が確定し、訴訟の確定判決などと同一の効力を持つことになります(民事訴訟法396条)。

よって、民事執行法上の債務名義となります(民事執行法22条4号)。

「債務名義って何?」とお思いの方々も多いかもしれません。

債務名義があれば、強制執行が可能になります。

つまり、被告の財産を差し押さえることができてしまうのです。

強制執行の対象は、預貯金、給料・賞与(全体の4分の1または33万円超の部分)、生命保険解約返戻金、投資信託、株券、不動産、敷金返還請求権など、多岐に渡ります。

仮執行宣言付支払督促が確定し債務名義になると、

「借金なんて、最初から存在しないんです。支払督促の申立自体が、インチキなんです!」と、裁判所に訴えても後の祭りです。

嘘が真実になってしまうのです。

コツコツ貯めた銀行預金が差し押さえられたり、給料が差し押さえられて会社中に知れ渡ったり、挙げ句の果てには自宅を競売にかけられたり・・・と、「ナニワ金融道」や「闇金ウシジマくん」といったマンガのような悲惨な目に遭いかねません。

こうした事例が多数発生したため、弁護士や司法書士のサイトやブログでも、注意喚起がなされています。

突然、支払督促の書類が届いても、慌てず冷静に確認!

もし、貴方の家に支払督促らしき書類が届いたら、以下のことを確認してください。

① 簡易裁判所からの書類か?

もしナントカ地方裁判所からだったら、まず間違いなく偽物です。
支払督促は、簡易裁判所から送られて来ます。

② 特別送達で届いているか?

郵便受けに入っている場合も、偽物と言っていいでしょう。
支払督促は、決して普通郵便では届きません。

③ 茶色の封筒が使われているか?

裁判所が使用する封筒が茶封筒以外、例えば白色の封筒ということはまず考えられません

④ 書類のサイズはA4か?

現在は、裁判所の書類はA4サイズに統一されています。
裁判所に書類を提出する際も、A4での提出が求められます。もしB5サイズやB4サイズなら、偽物でしょう。

⑤ 封筒に記載されている裁判所の住所や電話番号は本当か?

「詐欺かもしれないから、裁判所に確認しよう。」という姿勢は素晴らしいと思います。しかし、封筒に書かれている住所や電話番号はデタラメかもしれません。電話すると詐欺グループの人間が裁判所の職員を装って応対し、結局騙されることにもなりかねません。まずネットで検索して、裁判所の住所や電話番号を確認しましょう。

偽物の支払督促だと、①~④はクリアできても、⑤は偽の住所・電話番号が記載されているはずです。
本当の住所・電話番号だと、電話で確認されればすぐにばれて終わりです。

そして、書類が本物の支払督促だったら、すぐに(遅くとも2週間以内に)異議申立書を提出してください

また、書類が本物か偽物かにかかわらず、裁判所に電話すると良いと思います。
裁判所としても、詐欺申立を行う人間や法人(大抵はペーパーカンパニー)の情報提供はありがたいはずです。

最後に…

世の中には、あらゆる手段で人を騙して、金を巻き上げてやろうという人間が、残念ながら多数存在します。

そういう人間から自分の財産を守るには、できる限りの知識を身に付けて防衛するしかありません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。