2020年(令和2年)は、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、多くの人々の命を奪いました。
そして、経済的な面でも多くの人々を苦境に追い込みました。
給料カットやボーナスゼロ、果ては解雇・倒産の憂き目にあった人々も多いはずです。
そうした人々の苦境につけ込んでくるのが「ヤミ金」です。
今年は、SNSを通じた勧誘や給料債権の「ファクタリング」を悪用した融資など、新手の手口が問題になりました。
ヤミ金に手を出したら最後、悲惨な目に遭う!
しかし、システムが変化しようとも、ヤミ金の本質は変わりません。
法定利率をはるかに超える高利で金を貸し、元金はおろか利息の支払いにも苦労する状態に追い込んで来ます。
返済が少しでも遅れると、携帯・自宅・職場に督促の嵐を仕掛け、直接乗り込んでくることもあります。
よって、借り手は四六時中、返済のことで頭が一杯になってしまいます。
2019年(平成31年)まで連載されていた人気マンガ「闇金ウシジマくん」は、ヤミ金に手を出した債務者たちの悲惨な末路をリアルに描き、大きな反響を呼びました。
ヤミ金地獄から逃れるには、弁護士や警察の力を借りるしかない!
もしヤミ金に手を出してしまい追い込まれたら、助かる方法はただ一つ。
弁護士と警察の助けを借りる以外にはありません。
ヤミ金の債務者はなかなか考えが及びませんが、
ヤミ金の債権はそもそも無効な債権です。
いくら書面で契約を結んでも、契約自体が無効であり、借りた側が返済する法的義務はありません。
貸した側のヤミ金が裁判を起こすなどあり得ませんし、弁護士や警察が介入してきたらもう終わりです。
債務者としてはその後の報復を最も恐れますが、そんなことをすれば確実に両手が後ろに回ることになります。
中には予測できない行動を取るヤミ金業者(ほぼ暴力団絡み)もいますので、100%断言 はできません。
しかし、大多数は金にならないこと、逮捕されるようなことはやりません。
すっぱり諦めて、次のカモを探すだけです。
テレビで弁護士が話していた、驚愕の事例とは?
しかし、ヤミ金の連中にも頭の回る人間はいます。
10年くらい前ですが、あるテレビ番組でゲストの弁護士が話していた実際の例を聞いて、大変驚いたことがあります。
ある人が多重債務を抱え、ついにはヤミ金からも金を借りる事態に陥りました。
そして、ヤミ金への返済のために別のヤミ金から借金するという、典型的なヤミ金蟻地獄へと飲み込まれて行きました。
そんなある日、その債務者を一人の人物が尋ねて来ました。
自分の個人情報がヤミ金業者間で回っていると知っていた債務者の男性は、
「また新しいヤミ金か!」
と警戒しましたが、そうではありませんでした。
多重債務者救済の団体に、ヤミ金との交渉を依頼した・・・。
その人物は、多重債務者の救済のため活動している、ある団体の代表者でした。
とりあえず話を聞いてみると、あるヤミ金経由で入手した債務者リスト(いわゆるカモリスト)に、自分の氏名・住所などが載っていたとのこと。
その団体は、債務者の代わりにヤミ金業者と交渉し、借金の減額、場合によっては全額棒引きまで勝ち取ってくれるそうです。
しかも着手金などの前払いは不要で、成功した場合にのみ手数料を払えばよいとの条件です。
債務者の男性は、半信半疑ながらその人物に現状を説明し、債務額や借入先の業者名などの資料を渡しました。
何と債務額の大幅減額にこぎ着けたが、それには条件が・・・。
それから1ヶ月近く経ったある日、債務者男性の元に件の団体の代表者から連絡がありました。
ヤミ金業者数社の全てと交渉を行い、債務額の80%ほどを減額してもらう方向で話がまとまりそうとのこと。
男性はビックリすると同時に喜びました。
しかし減額の条件として、全ての業者が一括返済を求めていると告げられました。
たとえ借金が8割引になっても、まだ100万円超の残額となります。
今の自分に、そんなまとまった金の工面は無理・・・。
そう話すと、代表の男性はこう切り出しました。
「一括返済のための金なら、貸してくれる所がありますよ。貸金業登録もしてて、もちろん利息もマトモな率です。我々の団体も世話になってる、キチンとした所です。」
法定の条件で金を借り、ヤミ金の債務を完済!何と言う幸運!?
後日、債務者の男性は団体代表と一緒に、ある貸金業者を訪れました。
今までの経過を説明すると、融資は可能との返事。
説明された契約条件も、全て法律に則ったものでした。
その日はそこまでで終わり、男性が調べてみると、そこは実際に貸金業登録を行っている法人でした。
債務者男性は安心し、数日後にその業者から金を借りました。
そしてヤミ金業者全てに約束の金額を返済すると、契約書などが返却されました。
男性が団体の代表者に手数料について尋ねると、わずか数万円でよいとのことでした。
「立派な人に出会えて助けてもらえた。自分は何て幸運なんだ!」
債務者の男性は心から喜びました・・・。
この話は、全くいい話ではなかった!
この話を聞いて、
「何かおかしい・・・。」
と思われた方は鋭い!
実は、団体の代表者も貸金業者も、ヤミ金業者たちとグルだったのです。
前述したように、何社からいくら借りていようが、ヤミ金の債権は法律上無効な債権です。
まともな弁護士なら、全ての業者に対し
「本契約は無効である。よって、返済は停止する。」
といった主旨の文書を送るはずです。
ヤミ金側としては、上記の債務者が切羽詰まって弁護士や警察に駆け込んだり、行方不明になったりするのを恐れました。
そこで、自分たちのグループで表面的にはまともに営業している業者(企業舎弟、フロント企業などと呼ばれる)との契約を結ばせたのです。
今まで散々利息を搾り取ってきたので、80%減額しても全く損はありません。
法律に基づいた借入については、返済義務が生じる!
まともな業者との契約は法律上何ら問題がないので、債務者の男性はその借金については返済する義務を負います。
要するに、「無効な」ヤミ金債権を「有効な」貸金債権に付け替えられただけです。
本来負わなくてもいい債務を負ってしまったのです。
貸し手の貸金業者とヤミ金グループのつながりを立証できなければ、貸金債務を無効にすることはできないでしょう。
最後に・・・。
何とも巧妙で恐ろしい話です。
やはり、世の中にうまい話はないと思うべきです。
困ったら、その道のプロに適正な報酬を支払い、正しい方法で解決してもらうべきです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。