ネタバレなし:夏目漱石「夢十夜」はホラー小説だった?

夏目漱石(1867年〜1916年)

について、ここで詳しく語る必要はないでしょう。

明治末期〜大正初期に活躍し、多くの名作を残した文豪です。

「吾輩は猫である」

「坊っちゃん」

「こころ」

などの作品名は、読んだことがなくてもご存知の方が多いはず。

このブログでは、以前「三四郎」について紹介しました。

 

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「夏目漱石」について、ここで詳しく説明する必要はないでしょう。明治後期〜大正初期に活躍した小説家であり、日本文学史に欠かすことのできない文豪の一人です。「吾輩は猫である」「坊っちゃん」「こころ」[…]

東大安田講堂

 

『夢十夜』は漱石の異色作!

漱石には、短編作品も結構あります。

その中で、今回ご紹介するのが

「夢十夜」

という作品です。

東京及び大阪の「朝日新聞」で、1908年(明治41年)7月25日〜8月5日にかけて発表されました。

第一夜から第十夜までの、十の物語です。

と言っても、一話2〜3ページと非常に短く、全話合計しても34ページの、いわゆる「小品」です。

しかしこの作品は、漱石の他の作品とは全く趣の違う、何とも不可思議な内容です。

 

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論理性・具体性を超越した、『ホラー系』小説!

「夢十夜」という作品名の通り、

「夢」

がテーマとなっています。

主人公の男性が夢の内容を語るのが、基本形式です。

ただ、各話の主人公が何者なのか、全く不明です。

「漱石自身が主人公なのか?」

とも思えます。

十の話には、相互関連が全くありません。

唯一、第八夜と第十夜に、庄太郎という好男子(=美男子)が登場するのが、関連と言えなくもありません。

各話の内容は、夢の話だから当然と言えますが、

論理的な展開

具体的な状況・人物設定

とは無縁です。

ほとんどの話が

「ほのぼの系」

ではなく、読後の後味が悪い

「怪奇・ホラー系」

なのです・・・。

 

学生時代、マンガ誌に掲載された!

私がこの作品を知ったのは、大学に入って2年目くらいの頃でした。

当時、集英社のマンガ雑誌

「週刊ヤングジャンプ」

を毎週読んでいたのですが、ある週の号に、「夢十夜」の何話かがマンガとして掲載されたのです。

前号の予告ページに載っていた絵が、おどろおどろしい感じで、

「一体どんな話なんだ?」

と思った記憶があります。

実際に読んでみると、確か十夜全てはマンガ化されていなかったはずです。

随分昔のことなので、第何夜がマンガ化されていたかは覚えていません。

ただ間違いないのは、

「第三夜」(一番怖いと思います)

はマンガ化されていたということです。

その後しばらくして、書店に行った際に文庫本を探しました。

そして、新潮文庫「文鳥・夢十夜」を購入し、原作を読んだのでした。

 

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各話の概略はこんな感じ!

ネタバレ防止のため、第一夜〜第十夜の詳しい説明はしないでおきます。

各夜の大まかな話の流れを、以下に書くことにします。

(第一夜)
部屋で寝ている謎の女が、「もう死にます」と男に告げる。
男は女が戻って来るまで、墓の前で待ち続けることを約束する・・・。

(第二夜)
どこかの寺に、一人の侍が滞在している。なかなか「悟り」を得られないことを、和尚に侮辱される。
侍は何とか悟りを得て、和尚を殺そうとするが・・・。

(第三夜)
男は、六つになる子供(目が潰れている)を背負い、田んぼ道を森に向かって歩いている。
背中の子は、盲目なのに周囲の様子を詳しく語る・・・。

(第四夜)
謎の老人が、少年の家で酒を飲んでいる。
家から出て行ったので後をついて行くと、老人は不思議な挙動を・・・。

(第五夜)
男は大昔の戦争で敗れ、敵の大将の前に引き立てられた。
死ぬ前に好きな女に一目会いたいと言うと、敵の大将からはある条件が・・・。

(第六夜)
明治の世にもかかわらず、鎌倉時代の仏師「運慶」が仁王を彫っている。
男は大勢の人と一緒に見物しているが、運慶は一心不乱にのみと槌を動かしている・・・。

(第七夜)
男は大きな船に乗っているが、目的地はどこだか不明。
他の乗客は外国人ばかり。
心細く、いっそ死のうと考えるが・・・。

(第八夜)
男は床屋に行って、髪を切ってもらう。
椅子に座って、目の前の鏡越しに外を通る人を眺めていると・・・。

(第九夜)
ある家は、若い母と三つになる子供の二人暮らし。
父はどこかへ行ったきり、帰って来ない。
母は繰り返し、神社で御百度を踏むのだが・・・。

(第十夜)
町内一の美男子である庄太郎が、行方不明になって七日目の晩に戻って来た。
偶然出会った女を、自宅まで送って行くのだが・・・。

第一夜〜第十夜のいずれも、容易には考えつかない話です。

頭の中で筋書きを考えると、もっと論理的・合理的なものになりがちです。

しかし、どの話も

「不条理」

が前面に出た、怪奇ムードの濃い物語になっています。

 

最後に・・・。

漱石は生前、超常現象に関心を抱いていたそうです。

そうした世界への興味が土台となり、この「夢十夜」が生まれたのでしょうか?

どの物語も、読む人それぞれ、全く異なった感想になるでしょう。

前述の通り、わずか34ページなので、すぐ読めます。

怪奇・ホラーファンの方には、是非一度お読みいただきたい作品です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。