2022年(令和4年)9月下旬、Googleのニュースサイトを眺めていると、あるニュースに目が止まりました。
大手家電メーカーのパナソニックの、社内ベンチャーから生まれた子会社
「ATOUN」(アトウン)
が、奈良地方裁判所から
「特別清算」
という法的措置の開始決定を受けた、というものでした。
競争激化や、コロナ禍の影響を受けて・・・。
ATOUNは、流通業界や介護業界、農業で働く人たちの、力仕事の負担を軽減する
「パワード・アシストスーツ」
の研究開発・販売を行う会社でした。
しかし、他の企業も次々と参入し、競争が激化。
コロナ禍で、展示会などの対面営業ができなかったのも、原因の一つだそうです。
負債総額は、約3.5億円。
二つの大きな疑問あり!
これだけなら、近年よくあるベンチャー企業の倒産例です。
目新しくもありません。
法的措置による清算で、形としてはキレイな会社の畳み方と言えます。
ただ、私はこのニュースを読んで、二つの疑問を持ちました。
「パナソニックの子会社が、たった3.5億円の負債で清算?」
そして
「パナソニックは、今後の需要が期待できる分野に、もう見切りをつけたのか?」
です。
天下の大企業にとって、3.5億円は慌てるレベルか?
一般的な中小・零細企業なら、3.5億円は非常に大きな負債です。
倒産するのもやむなし、と言わざるを得ません。
初期投資の回収、収支の黒字化、競合他社との争いに、見通しが立たなかったのかもしれません。
しかし、ベンチャーとは本来そういうものです。
株式上場まで果たしながら、一向に結果が出ず、100億〜1,00億円単位の投資をしても赤字続きのベンチャー企業は、日本のみならず世界中にごまんとあります。
それに比べれば、ATOUNの負債3.5億円は、慌てるほどのレベルではないと思います。
ましてや、天下のパナソニックから派生した子会社です。
パナソニックが負債の穴埋めをするなり、追加の投資を行っても、何の影響もないはずです。
株主からのクレームもないでしょう。
まさか、3.5億円のお金をケチらなければならないほど、パナソニックの実態が厳しいとも思えませんが・・・。
高齢化の進行は世界中のリスク。需要は伸びるはずだが・・・。
パワード・アシストスーツは、既に商品化には到達しています。
もはや夢物語のレベルではありません。
ただ、本格的なものだと、一台数十万円ほどします。
本格普及には、価格がもう少し手頃になる必要があります。
以前テレビのニュース番組で、特集コーナーがありました。
北欧はデンマークの大臣たちが、パワード・アシストスーツの開発企業を視察するため、来日していました。
そして、開発資金の投資の話をしていました。
北欧諸国も、高齢化社会が他人事ではありません。
介護現場の負担軽減及び効率化は、喫緊の課題です。
パワード・アシストスーツ及び関連製品は、今後世界中で必要とされる可能性が高まるはずです。
現時点で採算が合わなくとも、あるいは他社との競争が激しかろうとも、決して撤退すべき分野ではないでしょう。
ましてや、パナソニックのような世界規模の企業は、世界市場での将来的な優越性のため、先行投資すべきです。
他社を置いてきぼりにするような、最先端かつ手頃な価格の製品を作ってこそ、低迷期にあるパナソニックの現状を打破する、起爆剤になると思います。
挑戦する意気込みがないと、他国企業との差がさらに・・・。
「貧すれば鈍する」
という言葉があります。
パナソニックも、世界市場での存在感が小さくなっています。
そんな中、新分野に挑戦し、自ら市場を開拓する意気込みを失いつつあるのでしょうか・・・。
日本の大手企業がそうした悪循環に陥ってしまうと、中国や韓国、台湾のメーカーに、一層差をつけられてしまうでしょう。
最後に・・・。
日本が
「Japan as No.1」
と称賛されていたのは、約30年前。
その後の
「失われた30年」
という長いトンネルの向こうに、まだ光は見えていないようです。
「美しい国、ニッポン」
は、この先どこまで落下していくのでしょうか・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。