不動産をお持ちの方なら、最低でも一度は「不動産登記」の手続をなさったことがあるはずです(実際には司法書士に依頼することがほとんどですが・・・)。
新築の建物(一戸建て、マンションなど)なら所有権保存登記、土地や建物を売買する場合は所有権移転登記など、様々な権利の登記がなされます。
登記の申請には色々な添付書類が必要で、真正な権利者や義務者ではない第三者が勝手に登記を行うことは、法律に基づいた場合(仮差押、競売など)を除いてはできません。
赤の他人の不動産の登記内容も、自由に確認可能!
しかし、全くの他人であっても、第三者の不動産の登記内容を知ることは可能です。
土地や建物の地番や建物番号(住居表示とは全く異なる場合も多数あります)さえ分かれば、当該不動産を管轄する法務局へ行き、申請をすれば(手数料が必要です)登記簿を閲覧できます。
あるいは、いわゆる「謄本の写し」を申請すれば(これも有料)書面を発行してくれ、内容を確認できます。
自宅を購入なさった方なら、代金支払い後10日~2週間くらいしてから、司法書士から謄本の写しを受け取られたはずです。
不動産登記は個人のプライバシーではないので、第三者でも知ることが可能です。
甲区欄と乙区欄の登記で、差押や競売、抵当権などの事実が丸分かり!
不動産謄本の甲区欄には、所有権に関する登記と、差押・仮差押などに関する登記が表示されます。
例えば不動産の所有者が税金を滞納し続け、税務署などから差押を受けた場合、甲区欄にその事実(年月日、差押債権者名など)が登記されます。
乙区欄には、所有権以外の権利の登記が表示されます。
住宅ローンで家を購入した場合、まず一番に(新築の場合)金融機関(ローンの貸し手)を抵当権者とする抵当権が設定され、登記されます。
ローンを完済するまで登記は残り、ローンの返済が不可能となった際には、抵当権者は裁判所に不動産競売の申立を行うことができます。
競売手続が開始した旨は、甲区欄に登記されます。
他にも根抵当権、賃借権など法律で認められた権利(債権者や賃借人などの)が、所定の登記申請に基づいて登記されます。
不動産競売手続の開始決定は、裁判所から法務局に委嘱されて登記される!
債権回収の仕事をしていると、債務者や連帯保証人の所有不動産を競売申立することが時々(部署によっては頻繁に)あります。
裁判所で競売手続開始の決定が出ると、裁判所から法務局へ競売開始決定の登記手続が委嘱され、法務局にて当該不動産の甲区欄に登記がなされます。
その時点では、裁判所から申立債権者やその他の登記されている権利者(担保権者、仮差押権者など)、そして債務者及び不動産所有者宛に、競売の開始決定通知が郵送されます。
全く無関係の人間には、まだその不動産が競売にかかったことは知ることができないはずです。
開始決定直後に、家に不動産業者が押しかけてくることも!
しかし、たまに開始決定が出て間もないうちに、債務者や不動産所有者から電話がかかってくることがあります。
「お宅は、人の家が競売にかけられたことを他の業者に教えているのか?」
という趣旨の内容で、人によっては怒りをあらわにしている時もあります。
債権者としては、そんなことは絶対にしませんし、してはいけません。
当然「そんなことはしていません。」と説明し、事情を聞きます。
すると、皆一様に
「家に不動産業者がいきなり訪ねてきて、任意売却のお手伝いをさせて欲しいとしつこく言われた。」
という旨の説明をします。
タチの悪い業者だと、所有者に断りもなしに「売却予定」というようなチラシを、近所に配布して回るそうです。
こちらとしては全く無関係なので、詳しいことは答えようがありません。
なぜ、第三者の不動産業者が競売の事実をすぐに知った?
何で競売手続が始まったばかりなのに、全くの第三者である不動産業者が競売の事実をすぐに知ったのでしょうか?
大きな可能性としては、次の点が挙げられます。
中小の業者は、地元の不動産の状況を把握すべく、足繁く法務局に通い、近隣の住宅やマンションの登記情報を閲覧したり、謄本の写しを入手していることが多いです。
最近は有料登録すれば、インターネットで登記情報を閲覧することが可能です。
しかし、競売開始決定を含む様々な登記の申請が行われると、当該不動産については登記事務手続のため、しばらく(10日~2週間ほど)閲覧や写しの請求ができなくなります。
業者としては、何かの登記手続の最中だと分かります。
少し日を置いて再度申請すると、登記が完了していれば再び閲覧などが可能となっています。
そこで内容を確認し、競売開始決定の登記がなされていれば、早速その家に押しかけて任意売却の話を持ちかけるというわけです。
気の早い業者だと、確認する前に競売だと決め付けて押しかけるのでしょう。
競売にかかった家には、不動産業者の売り込みが殺到する!
競売の手続が進むにつれ、競売にかかっている家にはどんどん不動産業者がやって来たり、電話が頻繁にかかって来るようになるそうです。
不動産登記が第三者にもアクセス可能である以上、避けようがありません。
競売申立を行った債権者にクレームを言ってくる人もいますが、その点についてはどうしようもありません。
そうなった以上、事態の早期収拾を図るには、きちんとした業者に任意売却を依頼し、早いうちに売却するしかありません。
最後に・・・。
銀行や信用金庫・信用組合も、住宅ローン借り換えの営業のため、支店の近隣の大きなマンションなどの登記をチェックし、情報を得ています。
不動産を通じて、貴方のプライバシーの一部は既に公開されているか、推定されているのです・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こちらも興味がありましたら、是非お読みください。
債務者がお金を借りる場合、もし不動産を所有していれば担保として提供することが多いです。融資の時点では担保を差し出す必要がなくても、返済を滞納する状況になれば、債権者から売却を求められたり、仮差押や競売などの法的措置を取られたりします[…]
 
  
 