3月は回収目標達成のため、担保物件の任意売却が急増!

いよいよ2023年(令和5年)が始まりました。

新型コロナウイルスは感染拡大中ですが、ワクチン接種の効果のおかげで、多くの人は重篤化せず回復できています。

決して油断すべきではありませんが、今年中には2019年までの日常に戻りたいところです。

日本では、毎年3月末が

「年度末」

となっています。

3ヶ月はあっという間に過ぎてしまいます。

気が付けば、

「令和5年度」

となっているかも・・・。

 

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企業にとって、『年間目標』達成は最重要!

勤め人として働く人々の多くは、職場で

「数値目標」

を与えられているはずです。

個人目標、課全体の目標、部全体の目標など・・・。

3月末は、多くの企業にとって

「第4四半期末」

であり、同時に

「年度末」

でもあります。

各四半期の目標達成も、当然大事です。

しかし、

「年間目標」

を達成できるかどうかは、企業にとって最重要課題です。

株式上場している企業にとっては、尚更でしょう。

金融業界も例に漏れず、様々な単位・分野での目標が、ズラリと並んでいます。

私が従事していた

債権回収

の部門も同様でした。

そこでもやはり、年度末の目標をクリアできるかどうかは、最大の関心事でした。

部全体の年間目標については、年明け頃から

「必達」

のプレッシャーが部内全体に漂っていました。

たとえ個人単位や課単位では目標達成できても、部単位で目標に届かないと、以降の人事評価やボーナス額などに影響が出るものです。

 

有担保債権の回収担当者には、最も大きなプレッシャーが!

特に担保付き債権、すなわち

「有担保債権」

を扱う課では、正月明けからトップを始めとする管理職が、課員たちに大きなプレッシャーをかけて来ます。

担保物件の売却に伴う回収金は、無担保債権の回収と桁が違います。

年間の回収目標達成には、有担保債権の回収額が大きな影響を与えます。

1月からの正味3ヶ月弱で、できるだけ多くの担保不動産を売却に持ち込み、現金化する

これが、各担当者の最優先課題となります。

いわゆる

「任意売却」

の話を、次々と具体化していくのです。

前年から任意売却の交渉を進めていた案件では、所有者や仲介不動産業者にハッパをかけ、一刻も早く売却相手を見つけさせます。

進展が鈍ければ、裁判所に不動産競売を申し立て、タイムリミットを設定してしまうこともあります。

 

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競売による回収は、時間がかかりリスクもある・・・。

既に競売申立をしている案件については、相手方から反応がなかったり、任意売却に消極的な場合には、競売手続の進展を待つしかありません。

入札が行われ、落札者が決まっても、入札〜落札者による代金支払いまでは最長2ヶ月ほどかかります。

そこから配当手続までも、3週間〜1ヶ月ほどかかります。

年明け以降の入札となると、3月末までに競売配当を受け取るのは困難です。

また、落札者が決まっても、代金納付期限内に代金を納付しない(あるいはできない)こともあります。

そうなると、年度内の回収は不可能となります・・・。

競売による回収には、スケジュール面でのリスクがつきまといます。

 

競売物件の所有者が任意売却を申し出ることも!

ただ、競売にかかっている物件の所有者が、自ら任意売却の話を持ってくることも結構あります。

もし競売の入札で落札されると、落札者は大抵どこの誰とも分からない、赤の他人です。

所有権が落札者名義に変更されれば、新所有者から即刻退去を求められます。

引っ越し準備に2〜3ヶ月待ってもらうとか、引っ越し費用の一部を負担してもらうなどは、ほぼ100%不可能です。

一方、任意売却の場合は、買受希望者とそうした条件を交渉することができます。

相手が投資目的で、賃貸用に購入を考えているなら、家賃を払ってその家に住み続けることも可能な場合があります。

そのため、不動産業者に買い手を探してもらう所有者が出てくるのです。

 

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担当者のみならず、上司も任意売却成立に必死!

年明け以降にそうした話が舞い込むと、我々担保権者側も、何とか3月末までに任意売却の取引を行おうと必死になります。

売買代金について、時間的に余裕のある時期なら、強気で交渉できます。

しかし、年度末が近付き余裕がない場合、こちら側の応諾可能限度額を超えていれば、買受希望者の言い値で妥協することも多いです。

たとえば、100万円〜200万円の上乗せでモメて、3,000万円の任意売却が御破算になるくらいなら、3,000万円での任意売却を確実にまとめようということです。

日頃は何かと細かい上司も、年度末近くになると、簡単に決裁してくれるようになります。

管理職の側も、回収見込額を積み上げるのに必死です。

よほどの問題がない限り、決裁印を押してくれるのです。

 

課員が全員取引で外出、管理職が駆り出されることも!

そうした事情から、毎年3月は各担当者の予定が

「任意売却取引のため外出」

で埋まることになります。

同一日に複数の取引が重なった時は、同じ課の同僚が代わりに他の取引に向かいます。

時には、課員全員が取引や来客予定を抱えていることも。

そういう場合は、課長などの管理職が取引に駆り出されることもあります。

今から十数年前の3月31日、年度最終日のことでした。

私の所属していた課では、私を含めた担当者全員が、取引に出かけることになりました。

ところが、あと2件取引があったのです・・・。

課長が1件を担当しましたが、まだ1件残っています。

そこで、隣の課で当日外出・来客の予定がなかった人が、助っ人として行ってくれることになりました。

私の案件の取引場所は、銀行などの金融機関ではなく、某ノンバンクの支店でした。

なので、その場で回収金の振込ができません。

そこで、当日は現金ではなく、保証小切手を受け取って帰って来ました。

帰社すると、コンピューターで回収登録処理をし、小切手を経理部門へ渡しました。

その日の課内の忙しさは、今でも覚えています。

 

最後に・・・。

結局、その日の回収金額を足すと、部の年間回収目標額を少し上回りました。

部の全員(特に管理職)が、ホッと胸を撫で下ろしました。

毎年3月の最終営業日には、全国各地の様々な会社で、そうしたスリリングなドラマが繰り広げられているのでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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