【書評】「202X 金融資産消滅」で今後の株式市場を正しく知ろう!

今回ご紹介する

「202X 金融資産消滅」(近藤駿介 著:KKベストセラーズ刊)

は、タイトルだけを見ると、将来の日本に対する不安を延々挙げまくる

「煽り系」

の本と勘違いされるかもしれません。

しかし、本書はそうした類の本とは全く異なります。

もちろん、現状の日本の先行きが明るいわけはなく、そうした現実については明確に指摘されています。

ただ、内容のかなりの部分は、現在証券・銀行業界やマスコミで語られている

「常識」

「定説」

が必ずしも正しくはないことを、データを用いて丁寧に語っています。

よくある

「陰謀論」

的な本では決してなく、優れた

「投資技術」

本と呼ぶべきです。

 

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著者は理系出身の元エンジニア!業界の色に染まっていない!

著者の近藤駿介さんは、早稲田大学土木工学科を卒業後、大手ゼネコンで都市トンネルの技術者として勤務なさっていました。

31歳で資産運用業界に転職なさった、異色の経歴の持ち主です。

25年にわたりファンドマネージャーとして活躍なさった近藤さんは、業界で

「本流」

「王道」

を歩んできたわけではありません。

むしろ、

「外様」

というべきキャリアです。

そのため、証券業界の雰囲気に染まってしまうことがなかったのでしょう。

新卒で証券・金融業界しか知らない「専門家」だったら、決して言わない(または言えない)事柄を、本書で次々と我々に明かしていきます。

 

本書の主役は、年金積立金を運用するGPIF!

本書は6つの章から構成されていますが、第1章~第4章では

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)

が主役として登場します。

2013年(平成25年)から始まった

「アベノミクス」

の推進役となった日本銀行(以下「日銀」)は、ETF(上場投資信託)の購入限度額を2倍、3倍と引き上げ、株式市場に湯水の如く資金を投入して行きました。

翌2014年(平成26年)10月より、日銀に追随する形でGPIFも

「基本ポートフォリオ」

の変更を行いました。

基本ポートフォリオとは、GPIFが運用する資金を国内株式、国内債券、外国株式、外国債券の4分野に配分する(=投資する)際の基準(=限度)です。

変更によって、全体の50%までが株式(国内、外国各25%まで)に投資できるようになりました。

マスコミで盛んに使われた

「異次元の金融緩和」

は、言い換えれば

「国のお金(税金も含まれる)や年金積立金(もちろん国民のお金)をジャブジャブ株式市場に注ぎ込み、人工的に株価を上げる」

ということでした。

 

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日本市場の『官製相場』にGPIFも一役買った!

皆様もご存知のように、確かに日経平均株価は約7年で3倍近く上昇しました。

しかし、日本や外国の投資家たちが前向きな理由で積極投資した結果ではありません。

「いざとなれば国が買い支えるので、当面の間大きく下げることはない。」

という安心感から、国内外の投資家たちが群がったというのが実情に近いのではないでしょうか。

本来GPIFは独立行政法人です。

自主的な判断の下、年金積立金をただ増やすということではなく、大きな目減りを避ける形で運用するのが基本のはずです。

ところが、完全に政府・日銀の言いなりとなり、リスクをバンバン取りまくりました。

日本市場にも巨額の資金を投入し、日本市場の

「官製相場」

化の片棒を担いできました。

その辺りの事情については、本書の中で詳しく解説されています。

 

年金積立金の一部が取り崩され、年金給付の財源に。ということは・・・。

2020年(令和2年)から、GPIFが管理する年金積立金の一部が取り崩され、年金給付財源に充てられることになっています。

本書はそれによる様々な影響について、詳細に指摘しています。

GPIFによる資産の取り崩しについては、違法でも何でもなく、秘密でもありません。

既に明らかにされていましたが、マスコミでほとんど問題とされなかっただけです。

そもそもGPIFの役割は、年金積立金を上手にかつ安全に運用してできるだけ増やし、年金給付が安全に継続されるようにすることです。

積立金をいつまでも投資し続けることはできません。

少しずつではあっても、取り崩していくことは当然と言えます。

しかし、日銀やGPIFが今まで無理矢理押し上げてきた株式市場で、今後は株式売却による現金化を図った場合、市場はどうなっていくのでしょうか?

その点についても、本書はハッタリを交えない現実的な先行きを我々に示していきます。

「事実」

を基にした合理的な考えばかりなのですが、下手な「陰謀論」系の本よりもはるかに怖い内容です・・・。

 

投資の『常識』の罠や、堅実な資産形成についても解説!

第5章と第6章では、世の中に広まっている投資の「常識」の矛盾や落とし穴を指摘したり、証券会社や金融機関のセールストークに惑わされない「堅実な」資産形成について解説しています。

近藤さんの考え方は、同じく経済評論家の山崎元さんの考え方と似ている点が多いです。

お二方とも

「簡単に大儲けはできない。」

「業者の勧める金融商品にはウラがある。」

「『貯蓄から投資へ』の宣伝文句にだまされるな。」

という主旨の意見の持ち主だと、個人的には思っています。

 

最後に・・・。

本書は2020年3月に初版が発行されており、全国でも置いている書店が多いはずです。

もちろんネット通販でも購入可能です。



これから本格的に資産運用を始めようとお考えの方には、是非お読みいただきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。