皆様は
「WeWork」
という企業を覚えていらっしゃるでしょうか?
2019年~2020年初め頃に、日本や海外のマスコミを多少賑わせました。
ソフトバンクグループ(以下「SBG」)が多額の出資をしていたのですが、経営難に陥りました。
創業者のアダム・ニューマン(奇行が目立ち、経営能力を疑問視されていた)を追い出し、日本円で1兆円を超える金額を拠出する羽目となりました。
その後SBGとニューマンは裁判で和解しましたが、全く新しい経営体制となりました。
それ以降、WeWork のことがマスコミの話題に上ることは、ほぼなくなりました。
目新しさのない古典的なビジネスだったのだが・・・。
そもそもWeWork とは何の企業でしょうか?
アメリカに本社を置き、コワーキング・スペースを企業に提供する事業を、世界中で展開しています。
世界各国の大都市のオフィス街・繁華街で賃貸オフィスビルのフロア(またはビル一棟丸ごと)を借り、そこを様々なリノベーションで改装します。
そして、本来なら中心部の一等地にオフィスを借りられないスタートアップ企業(新興企業)などに、相場より安い賃料で
「転貸」
するというビジネスです。
入居する企業同士が交流できるコミュニティーも提供し、無料のコーヒーなどの各種サービスも売りにしています。
聞いてみると、とりたてて目新しさも斬新なビジネスモデルもない、単なる
「不動産の転貸」(又貸し)
です。
ところが、アメリカは「トランプ相場」で浮かれていたのか、ビジネス界や証券・金融業界で異常なまでにもてはやされ、最高200億ドル(日本円で約2兆円!)の企業価値が付けられました。
人気は急落、残ったのは巨額の負債だけ・・・。
2019年(令和元年)8月には、株式市場への上場申請を行っていました。
ところが、創業者ニューマンのCEO退任、不正会計疑惑など、様々なスキャンダルが噴出。
翌9月末には、上場申請が撤回されました。
その辺りの詳細は、黒川敦彦さんの
「ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機」(講談社α新書)
に書かれています。
ご興味をお持ちの方は、お読みください。
上記の経過でもお分かりのように、単なる
「不動産転貸ビジネス」
が極度に過大評価されていたのが、魔法が解けてしまった後にはとてつもない巨額負債だけが残ったという、割と古典的な話です。
事業撤退に向かうと思い込んでいたのだが・・・。
SBGから孫正義会長の側近がWeWorkに乗り込み、経営立て直しを図ると報じられていました。
私は個人的に、実質的には事業を畳む撤退作業に取り掛かるのだろうと思い込んでいました。
ところが2020年10月、用事で大阪キタの梅田にある
「LINKS UMEDA(リンクス梅田)」
を訪れ、ビックリしました。
何と、WeWorkが8階のフロアに入居していたのです。
「コロナ禍の真っ只中、まだ日本で営業してたんだ・・・。」
と驚いたことを覚えています。
そして翌2021年3月に、再び「LINKS UMEDA」のそばを通りかかると、まだ営業していました。
リモートワークへの世界的な流れの中、日本にも39拠点!
後日インターネットで調べてみると、現在も日本国内の39拠点で事業を展開していると知り、再び驚きました。
世界的なコロナ禍において、リモートワークへの流れが加速していく中(日本はその流れから取り残されていますが・・・)、「貸しオフィス業」に未来はなくなるはずと私は思っていました。
もともと巨額の赤字を抱え、SBGが1兆円を投じて尻拭いををした企業です。
事業閉鎖の方向へ向かうと決め付けていたのですが・・・。
まだ営業を続けているということは、将来ビジネス軌道に乗り、利益を生み出すようになるとSBGが考えているのでしょうか?
最後に・・・。
もしそうなるとしても、今までに注ぎ込んだ1兆円超の資金を回収するには、かなりの長期間を要するでしょう。
その間に、世界各国はもちろん日本でも(遅まきながら)、テレワーク(在宅勤務)やオンライン会議が本格普及するはずです。
世界的な潮流に逆行するビジネスモデルに、果たして勝機はあるのでしょうか?
そう言えば、オンライン会議への注目で一躍脚光を浴びた
「ZOOM(ズーム)」
にも、SBGは投資しています。
本音としては、
「オフィス不要の未来」
の方に賭けようとしているのでは・・・?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。