予測不能の超大国、中国は「坂の上の雲」を掴めるのか?

2023年(令和5年)に没後27年、生誕100周年を迎える

司馬遼太郎さん(1923年(大正12年)8月7日〜1996年(平成8年)2月12日)。

昭和を代表する作家の一人で、今日でもなお多くの人に著作が読まれています。

司馬さんの代表作の一つに

「坂の上の雲」

があります。

産経新聞に1968年(昭和43年)4月〜1972年(昭和47年)8月まで連載された長編で、文庫本でも全8巻という大作です。

 

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日清・日露戦争を描いた作品で、評価は二分!

言うまでもなく、明治維新後に近代化を進め、日清戦争〜日露戦争に日本が勝利するまでを描いています。

2009年(平成21年)〜2011年(平成23年)には、NHKテレビでドラマ化されました(主演は本木雅弘さん)。

この作品に関して、司馬さんは生前映像化を認めなかったそうです。

「戦争を美化している」

と受け止められることを恐れてのことだったと言われています。

確かにこの作品は

「日本人なら必読の名作」

という評価の一方で、

「侵略戦争の本質を無視した、戦争礼賛小説」

との批判も受けています。

 

戦記小説としては面白い。ただ気になるのが・・・。

個人的には、完読した後も

「戦争賛美」

という印象は特に持ちませんでした。

作中でも、司馬さんご自身の

日清・日露戦争に対する特別な思い入れ

は、とりたてて感じませんでした。

単なる戦記物の小説、という印象しかありません。

「面白く読め、最後は日本が勝ってスカッとする」

というのが正直な感想です。

他人に薦めるにしても、

「読み物としては面白いし、日本史の知識も身につくよ。」

と言うくらいです。

ただ、読んでいる途中に気になったのは、

「ロシアとの戦争と言っても、場所は日本でもロシアでもない中国本土。なのに、清の人民の生活に関する描写が、ほぼ皆無だよな・・・。」

という点です。

 

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小説に全てを求めても無意味!

物語としては、そこまで細かに描いていては、話がどんどん拡がって脱線していく危険もあります。

そのため、日本軍とロシア軍に関する事柄以外は、なるべく踏み込まないようにしたということでしょう。

それを批判する気はありません。

あくまでも

「戦記物小説」

であり、歴史書や学術書ではないからです。

また日本もロシアも、当時まだ「清」だった中国を、自分たちの植民地としてしか見ておらず、現地の人々のことなど頭の片隅にもなかったはずです。

清の人民たちについてほぼスルーされていることが、かえって日露両国のそうした意識を浮き彫りにしているとも言えます。

 

日露戦争から100年超が経過。中国は様々な変化の末・・・。

1905年(明治38年)の日露戦争終結から、100 年(1世紀)超が経過しました。

皆様も当然ご存知の通り、清はその後まもなく滅び、中華民国が建国されました。

しかし国内統一はなされないまま、国民政府・地方軍閥・共産党の間で内戦が続きました。

1937年(昭和12年)に日中戦争が勃発すると、国民党と共産党の

「国共合作」

により日本軍に対抗。

第二次世界大戦終結後に、国民党と共産党の内線が再開。

1949年(昭和24年)には、

中華人民共和国(現在の中国)

が建国されました。

最終的には、国民党と中華民国を台湾に追いやりました。

その後、毛沢東政権の時代を経て、1978年(昭和53年)に鄧小平が実権を握りました。

そして、改革開放路線に大きく舵を切りました。

それ以降の発展については、ここで書くまでもないでしょう。

 

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21世紀、中国は世界に名だたる超大国に!

21世紀に入ると、中国は

「世界の工場」

となり、そして

「世界のお客様」

となるほど豊かになりました。

中流階級以上の人口は、国民の10%ほどだそうです。

しかし人口が約12億人ですので、約1億人がマーケット規模となります。

そのため、日本を含めた世界各国の企業が、中国でのビジネスに熱心です。

経済面だけでなく、科学・軍事面でも、中国はアメリカやロシアに対抗し得るレベルにあります。

自前で空母を建造し、宇宙開発でも自前でロケットを打ち上げています。

 

金と腕力を持つと、国家も調子に乗る!

そうした国力の発展と共に、中国共産党政権はどんどん調子に乗り始めています。

アフリカを中心とした発展途上国に、多額の貸付や援助を行い、代わりに鉱物資源の利権や港湾の管理使用権を得ています。

また、南シナ海周辺で一方的に権益を主張し、日本を含む近隣諸国と対立しています。

台湾(元の中華民国)に対しても、統一の意志を露わにしています。

他国からすれば苦々しい限りですが、国家というものは金と腕力(=武力)を持つと、調子に乗るのが常です。

考えてみればそうした状況は、過去にも起こっています。

その主役は、他でもない日本です。

明治維新を機に、国の近代化

「富国強兵」

政策を推進。

アジア一の大国だった清を日清戦争で破り、欧米列強を真似て植民地主義に傾倒。

これまた大国のロシアをも日露戦争で破り、調子に乗りまくりました。

まさしく

坂の上の雲を掴みにいかんとする

勢いだったのです。

その頃から1世紀が経過しましたが、今は調子に乗っている国が替わっただけのことです。

日本はその後、坂の上から転げ落ち、第二次世界大戦での悲惨な敗戦へと向かって行きました・・・。

 

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『坂の上の雲』の逆バージョンが起こる?

現在の中国は、あの頃の日本と同様に

「アメリカ、ヨーロッパ何するものぞ」

「もう既に、日本は抜き去った」

と、意気盛んなイケイケ状態です。

もし台湾有事となった際は、アメリカとの全面戦争に突入するかもしれません。

中国とアメリカが、第三国である日本を戦場に戦うという事態も、絵空事とは言い切れません。

日露戦争と同じ構図、しかし

「坂の上の雲」の逆バージョン

が生まれるかもしれないのです・・・。

 

最後に・・・。

しかし、

「驕れる者は久しからず」

「盛者必衰」

は、夜の東西を問わない真理です。

日本としては、日本が戦争の巻き添えで焦土と化す前に、中国が

「坂の上の雲」を掴むことなく坂から転げ落ちる

あるいは

坂の上を目指すことなく、落ち着いた普通の国になる

ことを願うしかないのでしょうか・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

興味がございましたら、こちらもお読みください。

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