白旗を掲げて打ち切りとなったアニメ「伝説巨神イデオン」を語ろう!

こんにちは。husband(@kumafumoblog)です。

皆様は、「伝説巨神イデオン」というアニメをご存知でしょうか?

「機動戦士ガンダム」の生みの親である天才、富野喜幸(現 : 由悠季)さんが、ガンダムのTV版終了後に手掛けた作品です。

1980年(昭和55年)5月8日から1981年(昭和56年)1月30日まで全39話、東京12チャンネル(現:テレビ東京)にて放送されました。

 

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ストーリー紹介

西暦2300年、地球人は外宇宙に進出し、様々な惑星に移民を行っていました。そうした植民星の一つ、アンドロメダ星雲にある植民星A-7・ソロ星で、異星人文明の遺跡を発見しました。そこで以前栄えた異星人は、「第6文明人」と呼ばれました。

同じ頃、地球から遠く離れた星に住む異星人バッフ・クランは、伝説の無限エネルギー「イデ」を探し求め、ソロ星(彼らの呼び方は「ロゴ・ダウ」)を訪れました。

そこで、地球人とバッフ・クランは接触します。

その際、バッフ・クランの宇宙軍総司令官の次女、カララ・アジバが、勝手に本隊を離れて単独行動してしまいます。カララを探しに出た捜索隊と地球人が武力衝突するという、最悪の「ファースト・コンタクト」となってしまいました・・・。

そこで、第6文明人の遺跡が動き出して合体。巨大ロボット「イデオン」になったのです!

主人公のユウキ・コスモら民間人は、イデオンを何とか操り、バッフ・クランに抵抗します。

しかし、そもそも両者とも最初から戦闘の意志はありませんでした。

コスモたちは、戦うつもりがないという意味で、白旗(降伏を意味します)を掲げました。

ところが、バッフ・クランにとっては、白旗は

「お前たちを抹殺する。」

という正反対の意味だったのです・・・(運が悪過ぎる)。

バッフ・クランは、地球人への攻撃を強めてきました。

地球人(軍人はほとんどおらず、民間人が大半)は、遺跡で発見された宇宙船ソロ・シップで宇宙へ脱出します。

バッフ・クランは、イデオン及びソロ・シップに秘められているはずの、
無限エネルギー「イデ」を手に入れるため、そして、ソロ・シップに乗り込み地球人と行動を共にする同胞カララを奪還するため、ソロ・シップを追跡します。

ソロ・シップは、地球人の植民星を転々とし、バッフ・クランの追っ手と戦います。

そうこうするうちに、事態は地球人対バッフ・クランの全面戦争へと突入してしまいます・・・。

 

様々な要素が絡み合い、視聴率は低迷!

大まかなストーリーを書いてみましたが、興味を惹かれましたでしょうか。

はっきり言って、前作「ガンダム」よりも更に難解なストーリー展開になっています。

敵であるバッフ・クランも、一方的に主人公たちを攻撃し、地球人を殲滅しようとしたわけではありません。

二つの異なる文明が、不運な形で出会ってしまい、相互理解できないまま戦いの泥沼に陥っていくという、重い話です。

メインターゲットであるはずの子供たちには、スカッとする楽しいアニメとは到底感じられません。

当然、視聴率は低迷しました。

また、ガンダムのように子供受けし、プラモデルなどの玩具にしやすいデザインのロボットが、あまり出て来ませんでした。

因みに、イデオンのプラモデルは、青島文化教材社(アオシマ)というメーカーが発売していました。

プラモデル愛好者には知名度のあるメーカーですが、当時のバンダイやタミヤのような大手ではありませんでした。

アニメの視聴率は悪い、大手のような宣伝攻勢もできない、肝心のロボットのデザインが子供受けしない・・・、まさに三重苦です。

ガンダムのプラモデル、通称「ガンプラ」のような大ブームは、当然起きませんでした・・・。

放送終了後、小学5年生の頃だったと思いますが、家の近所の模型店で、イデオンのプラモデルを普通に買うことができました。

「ガンプラ」のように、発売予定日の朝早くから、子供たちが店の前に並ぶといった光景は、全く見られませんでした。

結局、全43話の予定が、39話で打ち切られてしまいました。

最終話で無限エネルギー「イデ」が発動し、地球人とバッフ・クランの双方が全滅するという、爽やかさの欠片もないラストでした。

マンガ雑誌「少年ジャンプ」で、人気のない連載作品が打ち切りになる時、残り2回くらいで話が怒涛の急展開を見せることが多々ありますが、イデオンもそれと同じ最期を迎えました。

富野さんにとっては、ガンダムに続く打ち切りでした・・・。

当時の東京12チャンネル(いわゆるUHF局でした)にとっても、大きな痛手だったのではないでしょうか。

 

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早過ぎた名作だった・・・。

視聴率、ビジネスという点では、アニメ版は失敗作、いわゆる「しくじり」作品だったと言えるでしょう。

しかし、やはり天才・富野喜幸の作品です。キラリと光る部分もあります。

まず、キャラクターデザインに湖川友謙さんを起用したことでしょう。

個性的な絵柄ですが、ポスターなどのイラストを見ると、天才的に上手いです。

当時の我々も、小学生ながら

「この人は何て上手な絵を書くんだろう。」

と感心しました。

湖川さんは、イデオンの後も、

「戦闘メカ ザブングル」や「聖戦士ダンバイン」で富野さんとタッグを組みました。

ガンダムのキャラクターデザインを務めた安彦良和さんと並んで、アニメ史に残る天才です。

安彦さんのように、マンガの世界でも活躍して欲しかったのですが・・・。

次に、戸田恵子さんがカララ・アジバ(実質的なヒロイン)の声を担当なさっている点も挙げておきたいです。

ガンダムのマチルダ中尉役に続く、富野作品への出演です。

テレビ版のエンディングテーマ曲「コスモスに君と」を歌ってらっしゃいます。

もともと歌手として芸能界デビューなさった戸田さん、素晴らしい歌声です。

Youtubeで聴くことができます。

そして、主人公ユウキ・コスモのルックスも、アニメ史に残るインパクトです。

何と、アフロヘアーなのです!

主人公がアフロヘアーという作品は、他に記憶がありません。

イデオンを操縦する時は、宇宙服とヘルメットを着用しますが、ヘルメットをかぶる際には苦労するのでは?と、子供ながら思っていました(笑)。

 

劇場版が制作、公開された!

イデオンも、ガンダム同様に本放送終了後に再評価され、映画化されました。

それも、「接触編」と「発動編」の二本立てです。

友人と一緒に映画館に観に行きましたが、二本合計で3時間ちょっとくらいだったと思います。

劇場版でも、ラストでは「イデ」が発動し、地球人もバッフ・クランも滅亡します・・・。

しかし劇場版では、アニメ版と違い、その辺りの過程が細かく描かれます。

そして、主人公を始め登場人物たちが(もう死んでいるのですが)次々と登場し、宇宙空間を遊泳するかのように進んで行きます。

全員、なぜか全裸です・・・。

富野さんの「やり切った感」が、我々観客に伝わってきました。

 

最後に・・・。

今回ご紹介した「伝説巨神イデオン」でも、富野さんはテレビ版ガンダムの失敗から全く反省しませんでした。反省する気もなかったのでしょう。

子供に合わせて作品を作るという「ビジネス的」発想は、富野さんの頭の中には存在しなかったはずです。

富野ワールドは、時代の先を行き過ぎていたのです。

しかし、「子供にウケる話にして、視聴率を稼ごう。」という大人の事情を完全無視したからこそ、ガンダムもイデオンも、再評価されました。

視聴率、スポンサーの意向、メディアミックスによる広告戦略・・・、そうした事情が前面に出まくっている作品が、現在のドラマやアニメには多過ぎます。

イデオンのような作品が生まれる余地は、もう残っていないのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。