このブログでは
「債権回収」
に関する記事を、今まで多数書いてきました。
私が長年携わってきた「借金取り」の仕事の経験が、ネタ元となっています。
とは言っても、
「ミナミの帝王」
「闇金ウシジマくん」
のような、強烈エピソードというのはありません。
しかし時には、法律に則って正当な回収業務を行った結果、債務者や連帯保証人を厳しい立場に追い込んでしまうこともあります。
差押には、まず裁判などが必要!
借金や税金などの支払いが滞ったままだと、銀行口座や動産(自動車や電化製品など)の
「差押」
がなされることがあります。
役所や税務署などの例外を除くと、いきなり差押をすることはできません。
普通はまず、債権者が裁判所に訴訟などの法的措置を申し立てます。
そして、裁判で勝訴するなどして、
「債務名義」(判決正本、和解調書など)
を取得します。
そこで初めて、差押が可能となります(裁判所に申立のうえ)。
勘違いしている人が非常に多いのですが、債権者がいつでも差押できるわけではありません。
債務名義の取得後も、督促を行うものの・・・。
債務名義を取得したら、基本的にはすぐに差押を申し立てることができます。
ただ、私が勤めていた所では、その後も債務者たちに、何度か督促・呼出を行っていました。
しかし、そうした人の多くは、裁判所から届く訴状などにも、反応がありません。
当然、その後の督促にも反応がなかったり、約束の入金を履行しないことは日常茶飯事です。
そうなると、裁判所に郵便貯金や銀行預金の差押を申し立てます。
大半は失敗に終わるが、たまに高額の差押が!
残念ながら、そうした差押の大半は、失敗に終わります。
せっかく差押をしても、相手方の口座に貯金・預金残高がないのです・・・。
あっても数十円〜数百円です。
差押の手続費用に数千円かかるので、完全な費用倒れです。
しかし、たまにではありますが、数十万円〜数百万円を差押できる場合があります。
子供の学費用の口座が差押されることも!
資産を隠していたという場合もあります。
ただ、非常に多いのが
「子供の学費用のお金」
を預入していた口座だった、という場合です。
そういう場合、相手方は慌てて連絡してきます。
担当者になって初めて、相手方と電話で話したり面談することも多いです。
相手方は、今までの不遜な態度とは打って変わって、低姿勢です。
必死になって
「何とか差押の解除をお願いします!」
と頼んできます。
法的には、差押を解除する義務はない!
中には
「子供の学費を差押するのは、違法じゃないんですか?」
と、逆ギレ気味に言ってくる債務者などもいます。
結論から言えば、全く適法です。
そもそも、子供本人の名義の口座ではありません。
また、その口座のお金が、子供の学費用であるとの証明も、できるとは限りません。
通帳の出金履歴から分かる場合もありますが・・・。
生活保護や年金のお金は、差押が認められていません。
一方、本当に子供の学費用のお金であっても、その差押は法的には禁止されていません。
道義的には?金融機関は、マスコミ沙汰を避けたい・・・。
しかし、法的には問題なくとも、道義的な点では微妙です。
子供の学校の入学金、授業料などのために貯めていたお金が使えなくなる。
そのため、子供の学業に大きな支障を来たす・・・。
そうなると、ヤケになった債務者たちが、テレビや新聞などに窮状を訴えることも考えられます。
最近の日本では、
「そんなの、借金を払わないままでいた自分のせいだろ。」
「債権者は正当な行為をしているんだから、悪くない。」
といった自己責任論が、大勢を占めるかもしれません。
ですが一方では、債務者たちへの同情の声も一定数あるでしょう。
筋の悪い街金なら、もしマスコミで騒ぎになっても、どこ吹く風でしょう。
しかし、一般の金融機関や公的機関としては、そういうトラブルに発展するのは避けたいところです。
妥協案をまとめる場合もあるが・・・。
妥協案としては、
差押した額の一部(例えば30%)を一括払いさせ、その後に差押を解除する
親族が債務引受人(連帯保証人に似た立場)になる
不動産を所有している場合、抵当権を付けさせる
などです。
ただ、個々の案件により債務残高、差押金額などはバラバラです。
ケースバイケースでの対応となります。
過去の返済状況などによっては、あえて妥協せずに全額回収する場合もあります。
子供の年齢や学業の段階により、対応は異なる!
また、子供の年齢によっても判断が異なります。
中学生〜高校生までだと、親が学費を工面するのは普通です。
差押による子供への影響は、大きいでしょう。
一方、大学や専門学校となると、話は違ってきます。
もはや義務教育ではありません(高校は、半ば義務教育化しています)。
経済的事情から、進学しない人もいます。
また、子供がアルバイトなどで一部負担することは可能です。
「義務教育じゃないんだから、そこまで配慮しなくてもいい。」
という考えの担当者は多いです。
中には、子供の大学院の学費や、留学費用というケースもあります。
そこまで来ると、論外です。
最後に・・・。
とはいえ、親としてはどれだけ借金を抱えていても、
「子供の学校のお金は、きちんと出してやりたい。」
と思うのは当然です。
個人的に言いたいのは、
「差押される前に、早く債権者と話し合いをしろ!」
ということです。
債務を放置したままでいると、ある日突然口座が差押され、
「子供の将来のためのお金」
が1円残らず
「自分の債務」
の返済に消えていくのです・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こちらも興味がありましたら、是非お読みください。
このブログでは、「債権回収」すなわち「借金取り」に関する記事を、多数書いています。私が債権回収の仕事に携わっていた頃の、色々な体験を基にしています。 [adcode][…]