日本では、土地の私有制度が認められています。
日本全国の土地(山や森林も含む)には、基本的に誰か所有者が存在します。
住宅や工場など、何かの用途に使用される土地だけでなく、人間や自動車などが通る
「道路」
も誰かの所有となっています。
大多数の道路は、国や都道府県、市町村の所有する
「公道」(狭義の意味)
となっています。
しかし、個人や法人が所有する
「私道」
も存在します。
私道であっても、公益のため様々な制限がかけられる!
割と大きな道路のほぼ全部が個人や法人所有ということがあります。
しかし、周辺の住民などの交通に必要不可欠な場合、所有者といえどもその道路を好きなように使ったり、勝手に他の用途に転用することは、法律で制限されています。
また、個人が一戸建て住宅を購入または建て替えする際、法律(道路の幅は最低4m確保されなければならない)に適合させるために土地の一部分は道路に組み込まれるため、家の門などがその分後ろに下がることになります。
いわゆる「セットバック」です。
このように、例え私道でも公の利益が優先されるのです。
本来、道路を巡るトラブルは起きにくいはずだが・・・。
国や地方自治体が所有する道路であれば、管理もある程度は行き届いており、工事などで通行が制限される場合も事前にきちんと周知がなされます。
私道についても、上記のように法律で様々な制限がかけられています。
しかし、物事には必ず例外があり、私道を巡るトラブルは時折テレビ・新聞などで話題に上ります。
ある高校の横の道路が、突然通行禁止に!
確か1~2年前だったと思いますが、京都のある私立高校が、所有する私道に関して近隣住民とトラブルを抱えていたことが報道されました。
その高校のグラウンド横の道路は、元々高校を運営する学校法人の所有地でした。
しかし、近隣住民の生活道路として長年利用されていました。
ところが、陸上部の100mトラックを増設するため、高校はその道路を封鎖してしまいました。
近隣住民は大幅な迂回を余儀なくされ、高校側に抗議。
事態を問題視した行政も間に入り、結局高校側は計画を撤回。
道路の封鎖は解かれ、再び近隣住民が通行できるようになりました。
この事例では所有者が学校法人だったこともあり、きちんとした話し合いの上で円満解決できました。
ややこしい住民が、住宅街の道路を突然封鎖!
ただ、円満解決が望めない事例もあります。
2~3年前だったでしょうか、あるネットニュースを見て驚きました。
大阪府某市の住宅街で、ある高齢の男性住民が、家の前の道路をロープか何かで囲ったりして、人や車などが通行できなくしてしまいました。
通報を受けた警察が駆けつけると、その住民は
「この道路は俺の土地だから、俺の好きなようにして何が悪い!」
と主張したそうです。
調べてみると確かにその道路の一部は、その住民が昔から所有していました。
ただ全部を所有しているわけではなく、道路を勝手に通行禁止にするのは違法です。
一旦は妨害はなくなったらしいですが、現在どうなっているのかは不明です。
どうやらその住民は、地元では有名な(悪い意味で)いわゆる
「ややこしい人」
だったらしく、近隣の住民たちは不安だったでしょう。
法務局で図面や登記簿を確認しないと、道路の権利関係は分からない!
我々は普段、道路の所有者が誰かなど考えもしません。
ほとんどの場合、道路のどこにも所有権などについての表示はありません。
法務局で地積測量図や登記簿謄本を確認して初めて、所有者が判明します。
実際には、前述の「セットバック」などによって、道路沿いの家の敷地の一部が道路に組み込まれ、一般の用に供されていることが多々あります。
また、その道路沿いの住民でも何でもない、全くの第三者(個人・法人)が所有者である例もあります。
中には、そうした土地の一部を買い取って、一儲けを企む輩も存在します。
ある債務者が、家の前の道路を巡るトラブルに・・・。
私が有担保債権の回収に従事していた頃、ある債務者と面談しました。
私が担当する少し前から、毎月の返済が滞り出していました。
債務者の説明によると、大きな原因は終わった仕事の入金が大きく遅れたことでした。
これからは再び約束通り、毎月欠かさず返済するとの申出があり、しばらく様子を見ることとなりました。
その後、その債務者は
「資金繰りに困ってた頃、家の前の道のことでトラブルに巻き込まれてたんです。」
と話し始めました。
自宅(担保物件でもある)の前の道路は、大部分が市の所有でした。
しかし、一部分がいくつかに分割されており、それぞれ別人の所有名義になっていました。
その中の一人から、ある会社が所有権を買い取りました。
そして、何だか分からない工事を名目に、地面に穴を開けて掘り始めたそうです。
それが丁度、その債務者の家のすぐそばでした。
驚いた債務者が工事業者に文句を言うと、後日所有権を持つ会社の役員が訪ねて来ました。
地積測量図や登記簿謄本の写しを持参し、
「今あの道路工事をしている部分は、うちの所有だ。何をしようと自由だ。お宅の家の出入りには影響がないように配慮している。」
と悪びれずに語ったそうです。
そして最後には
「迷惑だから止めろと言うなら、あの部分をうちから買い取ってくれ。」
と要求してきたそうです。
弁護士や役所に相談することも考えたが、裁判になると費用も時間もかかり、行政の介入もすぐには期待できなかったので、断念したとのことでした。
結局、それまでの工事費用という名目で数十万円を相手に支払い、工事(という名の嫌がらせ)は止まりました。
しかし所有権はその会社のままなので、また同様の嫌がらせをされて金を払わされるのではないか不安だと、その債務者は語っていました。
最後に・・・。
我々が毎日普通に歩いたり車で通り過ぎている道路が、実は複雑な権利関係を有している可能性があります。
もし貴方が、古くからの市街地で中古住宅を購入なさる際は、家の前の道路についても確認なさってみてはいかがでしょうか・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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