日本のことわざに
「窮鼠猫を噛む」
というものがあるのは有名です。
たとえ力の劣った弱い立場の者でも、追い詰められて窮地に立つと、強者に対して反撃してくることがあるという意味です。
漢字で書くとかなり難しく、「きゅうそ ねこを かむ」が読めない人もいるかもしれません。
「キュウソネコカミ」というバンドが、バンド名をカタカナにしたのもうなづけます。
英語では、片方しか登場しない!
この「窮鼠猫を噛む」と同様のことわざは、外国にも存在します。
英語圏の国では
“A cornered rat is dangerous.”
と表現されます。日本語に直訳すると
「追い詰められた鼠(ねずみ)は危険である。」
となります。
cornered は corner (追い詰める、追い込む)の過去分詞で、「追い詰められた(追い込まれた)」と訳せます。
rat[rˈæt]は「ねずみ」です。
意味的にはまさしく「窮鼠猫を噛む」です。
英語では鼠のみが登場し、猫が出て来ない点が日本語と異なります。
イタリア語では、全く別の動物が登場する!
イタリア語にも、「窮鼠猫を噛む」と同じ意味のことわざがあります。
しかし、日本語とは大きく異なっています。
どういうことかと言うと、鼠も猫も登場しないのです。
イタリア語では
“Cane affamato non teme bastone.”
となります。直訳すれば
「飢えた犬は棒を怖がらない。」
となります。
cf. cane(犬) affamato(飢えた、空腹の) teme → temere(怖がる、恐れる)
bastone(棒)
そう、犬が主人公なのです。
腹を空かせた野犬がどこかのニワトリ小屋を見つけると、何とか忍び込んでニワトリを食べようとします。
それを人間が見つけ、棒を振りかざして犬を追い払おうとします。
普段なら恐れをなして逃げるはずの野犬も、空腹を満たそうと必死です。
人間に向かって吠えたて、反対に人間を追い払ってでもニワトリを食べようとします。
もはや、棒で叩かれることへの恐怖心は消え失せています。
そうした場面を思い浮かべれば、この表現にも納得できます。
最後に・・・。
動物に対する印象は、国によって色々変わります。
以前に当ブログでご紹介した
「蛇の道は蛇」
でも、国や言語によって出て来る動物が異なっています。
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そうした事例に、言語の「多様性」が表れていると思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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