こんにちは。husband(@kumafumoblog)です。
今回ご紹介する作品は、ジョージ秋山先生の「ギャラ」です。
ジョージ秋山先生と言えば、昨年まで長期間連載されていた「浮浪雲」や、松山ケンイチさん主演でドラマ化された「銭ゲバ」等、多数のヒット作を持つマンガ界の大御所です。
一方、内容が過激過ぎたり独特過ぎて、短期間で連載打ち切りとなった作品も多く、野球のバッターに例えれば、ホームランか三振かという作風の作家です。
しかし、人気の出なかった作品でも、全てが三振レベルの内容ではなく、現在では高い評価を得ている作品も多数あります。
その内の一つが「ギャラ」です。
「ギャラ」はマイナー作品だが、心にトラウマを残す!
少年画報社から発売されていた「週刊少年キング」(1982年に休刊してしまいました・・・。)の1979年45号~1981年17号まで連載されていました。
1年を超えて連載されましたので、短期間ではなく、不人気という訳でもなかったはずですが、上記の「浮浪雲」や「銭ゲバ」のような人気は得られず、マンガファンの間の知名度もあまり高くない、残念な作品です。
しかし、一度読んでみると、心に刃物をグサッと突き立てられたような、何とも言えない気分になります。
いわゆる「トラウママンガ」です。
小3の頃、散髪屋で読んだ「少年キング」で・・・。
初めてこの作品を読んだのは、小学3年生の頃だったはずです。
通っていた散髪屋さんで順番を待っている時、置いていた「少年キング」を手に取って読み始めました。
巻頭のマンガは新連載のようです。
「どんな話かな?」と思いながら読み進むうちに、気持ちがドンヨリと曇り始めました・・・。
主人公は、亜左未(アザミ)という中学生。お父さんは東大卒のエリート、お母さんは美人で、何の不自由もない家庭に育っています。しかし、アザミには重要なものが欠けていました。
それは、親の愛、特に父親からの愛情でした。
父親と違い、アザミは勉強が苦手で、成績も振るいません。
そして、美人の母親に似ず、容姿もはっきり言ってブサイクです。
そんなアザミを、父親は疎ましく思い、厳しく冷たい態度で接します。虐待にまで及びます。
母親はアザミには優しいのですが、父親を諌めることもできず、夫が我が子を虐待するのをオロオロしながら見ているだけです。
ある日、会社の上司が自宅に来ることになり、父親はアザミに、来客中は自分の部屋から一歩も出ないように命じます。
そして、やって来た上司には、息子は外出中だと嘘を言います。
しかし、興味を持って様子を見に庭に出て来たアザミは、父親やその上司に見つかります。
そこでアザミの父親は・・・。
「君は誰だ!勝手に人の家に入って来るな!」と、アザミを追い出してしまうのです・・・。
「な、何や、このマンガ・・・。」
確かここまでで2話目くらいだったと思います。
自分の散髪の順番が来たため、私は「少年キング」をマガジンラックに戻しました。
再び散髪屋で読むと、さらにハードな展開に・・・。
その約2ヶ月後(だったと思います。)、また同じ散髪屋さんに行った時、置いてあった「少年キング」を読みました。
ストーリーはもちろん進んでいて、ページ横のあらすじを読むと、主人公のアザミは悪の道に進んでしまったことが分かりました。その回では、アザミの親戚の叔父さんが訪ねて来るのですが、アザミが部屋に隠していた大金(100万円くらい?)を発見してしまいます。
「子供がこんな大金を持っててはいかん。叔父さんが預かってやる。」と、お金を取り上げ、部屋から出て行こうとします(この人もとんでもない人物ですねー。)。
焦ったアザミは、とっさに部屋の片隅にあったダンベルを手に取り、叔父さんの後頭部めがけて振り下ろしました。・・・。
ここで「次号に続く」となっていたように記憶しています。
一度目と同様に超ハードな展開で、「このマンガ、これからどうなるんや?」と子供心に思いました。
しかし、残念ながら子供時代の「ギャラ」の記憶はここまででした。
以降も同じ散髪屋さんに行っていましたが、「ギャラ」を読んだ記憶がありません。
「少年キング」は、ジャンプなど他の週刊少年マンガ誌ほどの発行部数には届かず、コアなマンガファン向けという感じでした。そのため、散髪屋さんが購入を止めてしまったのかなと、今になって思います。
大人になり、友人に話したことがきっかけで・・・。
その後、この作品のことはほとんど思い出さないまま、大人になりました。
30台後半のある日、大学時代からの友人と居酒屋で飲んでいた時、ジョージ秋山先生の作品の話になりました。
私が「ギャラ」の話をすると、マンガに詳しいその友人も、「そのマンガは知らない。」とのこと。
私があらすじを説明すると、興味を持ったようでした。
しばらくして、その友人から連絡がありました。
「ギャラ」のコミックス全8巻を、Yahoo!オークションで落札し入手したとのこと。
価格は、何と2万円超!!!
後日、コミックスを貸してもらい、読み始めました。
約30年の時を経て、「ギャラ」の全貌が明らかに!
第1巻の最初は、記憶に残っていた通りでした。
主人公のアザミが父親から虐待されるところまでは、「こんな話だったよなー。」と思いながら読んでいました。
以降は、初めて読む内容です。
何と、アザミは憎しみのあまり、父親を殺してしまうのです・・・。
そこに、謎の美少女が現れ、アザミの身代わりになると言い出します。
困惑するアザミ。そこへアザミの母親がやって来ます。
アザミの側に、死体となった父親、すなわち自分の夫。そして、見知らぬ少女。逃げ出す少女を見て、アザミの母親は、殺人犯はその見知らぬ少女だと思い込みます。
アザミは、母親や警察に自分が疑われていないことに安心しながらも、
罪を被った形の謎の少女のことが気にかかります。
しばらくして、アザミはその少女と再び出会います。
紅子と名乗るその少女の妖しい魅力に、アザミは惹かれます。
しかし、衝撃の事実が判明します。
紅子は女性ではなく、直樹という中学生の男子だったのです・・・。
アザミと同様に、読んでいる私も、「え、ど、どういうこと・・・?」と困惑してしまいました。
直樹は美少年で、女装すると実の姉そっくりの美少女になってしまうのです。
直樹は、アザミの屈折した性格や、社会への恨みの感情を見抜いており、自分と二人で悪の道を進み、大金を手に入れようと誘います。
そうしてアザミは、「金こそ全て!今まで自分を馬鹿にしてきた奴らに復讐してやる!」と、悪事に手を染めることになります。
少年誌にはあまりにもヘビー過ぎる内容にドン引き!
以降のアザミと直樹の悪行の数々は、21世紀の現在でもドン引きするレベルです。
ざっと列挙すると、
① アザミが父親殺しの真犯人ではないかと疑い、捜査を続ける刑事を罠にかけ陥れ、地方への左遷に追い込む。
② アザミが親戚の叔父さんを殺してしまった際、直樹の機転で死体を家の外に運び出し、電信柱の陰から、走ってきた自動車にぶつける。
自動車のドライバーは国会議員の秘書で、後部座席に乗っていた議員はスキャンダルを恐れ、警察に通報せず逃げるよう命じた。
結局、叔父さんはひき逃げされ死亡したことにされた。
③ アザミのクラスのマドンナで、アザミを馬鹿にしていた美少女に、直樹が接近。
言葉巧みに取り入り、少女に数十万円の借金を負わせる。
この後は・・・、詳しくは書けません。
④ アザミの担任の女性教師は、生徒たちの人気者だが、アザミのことを心の中では嫌っている。
アザミと直樹はこの教師の弱みを探すうちに、彼女が学校の校長と不倫関係にあり、校長が学校のお金を横領していることを知る。
アザミは、女性教師と校長を恐喝する。
このエピソードも、結末はヘビー過ぎて書けません・・・。
この他にも、アザミと直樹の中学生とは思えない悪行が続きます。
「このマンガ、少年マンガ雑誌に連載されてたんだよね・・・?」
そう思ってしまうくらい、ヘビーな展開や描写が大盛りです。
全8巻を読み終わった感想は、「よくこんなキツイ作品が、少年誌に1年以上も続いたなー!」でした。
いまだ復刻されず、古書店やネットオークションでも超高額!
コミックスは、少年画報社の「ヒット・コミックス」シリーズから発売されました。
残念ながら「ギャラ」は未だに復刻されておらず、読もうとすれば私の友人のようにネットオークションで落札するか、「まんだらけ」などの古書店で購入するしかありません。
以前「まんだらけ」でガラスケースに全巻が飾られていましたが、値段はやはり2万円を超えていました。
ちなみに、本を貸してくれた友人は、入手した時と反対にYahoo!オークションに出品し、落札した価格とほぼ同じ価格で売却したそうです。
「銭ゲバ」や「アシュラ」など、ジョージ秋山先生の問題作が近年けっこう復刻されており、ネット上では復刻を希望する声が多いのですが、「ギャラ」のような「少年犯罪サクセスストーリー(?)」は、現在では出版できないのでしょうか・・・。
最後に・・・。
と思いながらネットを見ていたら、何と「ギャラ」が復活したとの記事が!
しかし内容をよく読んでみると、全く別のマンガ家が、原作をリメイクして連載中とのことでした。当然ながら画風もオリジナルとは全く違い、個人的には別の作品だと言わざるを得ません。
ジョージ先生のオリジナル版を、是非とも復刻して欲しいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。