「南北問題」はイタリア、ベルギーでも起こっている?

「南北問題」

という言葉から、皆様は何を連想なさるでしょうか?

日本にお住まいの方なら、朝鮮半島の韓国と北朝鮮を連想なさる方が多いのではないでしょうか。

朝鮮戦争により

「38度線」

で分断された両国は、そもそも同じ民族で、言語や文化も同じです。

現時点では、両国の対立構造が改善される兆しは、ほぼ見えません・・・。

 

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世界には『南北問題』を抱えた国が他にも!

こうした「北」と「南」の対立は、韓国と北朝鮮だけではありません。

社会の教科書では、

北半球の国々(ヨーロッパ、北米など)と

南半球の国々(アフリカ、南米など)

経済的格差に基づく対立が、

「南北問題」

として説明されています。

この問題は地球規模の問題で、解決が非常に困難です。

しかし世界には、他にも「南北問題」を抱えている国が存在します。

 

イタリアは南北で大きな経済格差!

まず第一に、ヨーロッパの

イタリア

が挙げられます。

イタリアは一つの国家であり、もちろん分断などされていません。

しかし、北部と南部の対立感情は、我々外国人が想像するよりも根強いそうです。

対立の根底にあるのは、北部と南部の

経済格差

です。

イタリア随一の工業都市トリノ、商業・工業が盛んでファッションの都でもあるミラノを含む北部は、概して産業が発展しています。

一方、南部は農業・漁業や観光が主であり、経済面では北部に大きく差を付けられています。

イタリア証券取引所(Borsa Italiana)

が首都ローマ(南部に含まれる)ではなく、ミラノにあることからも、そうした一面が窺えます。

ミラノ、ローマに続くイタリア第三の都市で、イタリアのイメージを体現するナポリも、南部の都市です。

 

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北部と南部の対立意識は、サッカーの世界でも!

北部の人には、南部に優越感を抱いている人が、一定数はいるそうです。

「北部が頑張って稼いでいるのに、南部を助けるために吸い取られる。」

といった感情が根底にあります。

反対に南部の人は、北部に対する対抗意識を持つ人が多いと聞きます。

1980年代半ば〜1990年代初頭、イタリアサッカー一部リーグ

セリエA

のナポリが、二度のリーグ優勝を成し遂げました。

今は亡きアルゼンチンの天才ディエゴ・マラドーナの大活躍が、その原動力でした。

ナポリを始めイタリア南部の人々は、大いに溜飲を下げたとのことです。

北部の強豪(かつ金持ち)クラブであるユヴェントス、ACミラン、インテル・ミラノを打ち負かす姿に、スカッとしたのでしょう。

 

北部の自治拡大・独立を訴える政党があった!

そうした南北対立が、人々の感情の問題に留まっていれば、まだいいでしょう。

しかしイタリアでは、かつて堂々と北部の自治拡大を訴え、果ては南部と分離の上での独立を主張していた政党がありました。

その名も

「北部同盟」(Lega Nord)。

2018年には、政党名から「北部」を削除し、党名を

「同盟」(Lega)

に改めました。

それにしても驚かされます。

日本の政党が

「東日本と西日本を分離させて、東日本(あるいは西日本)だけで国を作ろう!」

と主張するようなものです。

しかしこの党は、単なるマイナー政党ではありませんでした。

1990年代半ば〜2010年代前半に、長年イタリア首相を務めた

シルヴィオ・ベルルスコーニ

が代表だった(本人が巨額の資金を投じて立ち上げました)

「フォルツァ・イタリア党」(日本語だと「がんばれイタリア党」)

と連立を組み、政権与党の一角を占めていたこともあります。

 

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EUの中心、ベルギーにも南北問題が!

イタリアと同じく「南北問題」を抱える国が、ヨーロッパにもう一つあります。

EU(欧州連合)の主要機関(欧州委員会など)が多く集まる

ベルギー

です。

面積的にはさして大きくない国ですが、北部と南部の対立構造が存在します。

ベルギーの場合も、経済的に豊かな北部と、遅れを取っている南部との「経済的」対立があります。

さらに、

「言語的」

「文化的」

対立が加わります。

 

同じ国だが、北部と南部で言語が異なる!

ベルギー北部は、オランダと国境を接しています。

一方、南部はフランスと国境を接しています。

皆様ご存知のことと思いますが、「ベルギー語」は存在しません。

北部では、オランダ語の方言とも言うべき(訛りや語彙の違いあり)

「フラマン語」

が話されています。

南部では、フランス語が話されています(一部にドイツ語圏あり)。

地理的観点から見れば、納得できます。

ベルギーの学校の義務教育では、フラマン語・フランス語・英語を学習するとのこと。

ベルギー人に何カ国語も話せる人が多いのも、うなずけます。

しかし、同じ国の人間でも、生まれ育っていく過程で習得する

「母語」(「母国語」ではない)

と、学校で習って覚える言語(ある意味では外国語?)とでは、流暢さの度合いが異なります。

 

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連邦国家へと移行したが、対立の政治的影響は消えず・・・。

そして、言葉が異なれば文化も異なります。

経済格差の問題も絡み、対立は根深くなっていきました。

1993年には憲法改正により、ベルギーは単一国家から

連邦国家(国民的立憲君主制)

へと移行しました。

しかし南北対立の政治的影響は全く解消されていません。

大政党単独ではなく、小政党が連立政権を組むことが多いのですが、連立協議はしばしば難航するそうです。

そのため、正式な政権が成立しない

「政治的空白」

が度々発生してきました。

EUのお膝元(首都ブリュッセルはEUの首都のような存在)には、似つかわしくありません。

「ヨーロッパをまとめるより、まず自国をまとめるのが先だろ!」

と、反EU派の人々からツッコミを入れられても仕方ないでしょう・・・。

 

最後に・・・。

今回は主にイタリアとベルギーについて書いてきました。

しかし「北と南」に限らず、国内で地域対立を抱える国は、他にも多数あります。

経済や言語・文化だけでなく、人種や宗教も対立の火種です。

世界中がこんな有様では、

「世界平和」

というお題目も、説得力ゼロじゃないかと思えます・・・。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

興味がございましたら、こちらもお読みください。

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