「自由民権運動」
という言葉については、日本で義務教育を修了した人は、一度は目にしたり耳にしたことがあるはずです。
明治維新により新政府が発足しましたが、政権の中枢や行政機関の要職は、維新回天の原動力となった薩摩、長州、土佐などの藩出身者によって占められていました。
議会や選挙制度は、まだ影も形もありませんでした。
明治初期、征韓論絡みの権力闘争に敗れた
板垣退助(土佐藩出身)
は、1874年(明治7年)参議の職を辞し、政府から去りました。
そして後藤象二郎ら元参議数人と共に、
「民撰議院設立の建白書」
を政府に提出しました。
選挙を行い、それによって選出された議員による議会、いわゆる「国会」を開設するよう求める内容でした。
しかし、建白書は政府に拒否されました。
板垣は故郷の土佐(廃藩置県により高知県となった)に帰り、政治団体「立志社」を設立。
これ以降書くと話が長くなり、この記事の主旨からも外れていくので、立志社設立以降に関しては、他の書籍などでお読みください。
板垣退助は自由民権運動の火付け役。運動発祥の地高知県では、記念館が!
「自由民権運動」と言えばまず「板垣退助」が思い浮かぶほど、板垣の果たした役割は大きかったと言えます。
高知県にとって板垣は、坂本龍馬と並ぶ「地元の英雄」です。
そして高知県発の自由民権運動も、高知の誇るべき業績です。
そこで高知市制100周年を記念し、1990年(平成2年)4月1日に
「高知市立自由民権記念館」
が開設されました。
高知県内を中心とする自由民権運動の資料の収集・保管・展示及び、調査研究を行う博物館です。
『坂本龍馬記念館』と比べ、知名度・人気が著しく低い・・・。
しかし、龍馬ファンの聖地とも言うべき
「高知県立坂本龍馬記念館」
と比べると、天と地ほどの知名度・人気の差が存在します。
龍馬記念館は、JR高知駅や高知城といった中心部からはかなり遠いです。
自由民権記念館の方がはるかに近いのです。
しかし、龍馬記念館に行った人及び、存在は知っているという人は非常に多いです。
一方、自由民権記念館については、存在自体が残念ながらほとんど(少なくとも高知県民以外には)知られていません。
旅行で高知を訪れた友人からのお土産が・・・。
実は私も10年ほど前までは、自由民権記念館の存在を知らない一人でした。
ある時、私の学生時代からの友人(このブログに過去二回登場しています)が、四国に一人旅に出かけました。
野球の独立リーグや女子野球の試合を観戦するのが、主な目的でした。
しかし、観光も予定に組み込んでいました。
旅行から戻って来た彼と飲みに行った際、
「これ、高知県のお土産。」
と、小さなビニール製の手提げ袋を渡されました。
その中に入っていたお土産の中に、
自由民権記念館で売られていた栞(しおり)
がありました。
友人は記念館の存在を知っていて、高知を訪れた際に記念館に足を運んだそうです。
自由民権記念館へ行きながら、龍馬記念館には行かなかった!
午前中に行ったそうですが、来館者はその時点で友人一人だけだったそうです・・・。
展示物などを見て回った後で、私を含む友人・知人にお土産を買うため、友人は館内の売店を訪れました。
そして前述の栞などを大量に買ったので、売店の女性が驚いていたそうです(笑)。
「なかなかマニアックな所に行ったね。ところで、坂本龍馬記念館はどうだった?」
私の問いに、友人は一言
「いいや、あえて行かなかった。」・・・。
高知県に旅行に行って、歴史に興味があれば、まず龍馬記念館が先じゃないのか?
友人曰く
「それだと普通過ぎて面白くない。」。
強者(つわもの)です。
テレビ番組のロケで、菅原文太さんが記念館を訪れていた!
それからしばらくして、2012年(平成24年)1月からNHK-Eテレで
「日本人は何を考えてきたのか」
というシリーズ番組が始まりました。
第1回のゲストは、俳優の西島秀俊さんでした。
続く第2回は、福島県(元会津藩)を中心に広がった自由民権運動がテーマでした。
生前の菅原文太さんがゲストで登場。
文太さんが、日本各地の自由民権運動ゆかりの場所を、旅して歩くという内容でした。
その番組内で文太さんは、高知市立自由民権記念館を訪れていたのです!
「あっ、以前友人が行った所だ!」
と驚きました。
友人は文太さんの先を行っていました・・・。
後日友人にその話をすると、
「やっとNHKがワシに追い付いて来たな(笑)。」
と語っていました。
菅原文太さんと自由民権運動のつながりは?
ところで、なぜ菅原文太さんが自由民権運動を扱った、お堅い番組に出演なさったかというと、ちゃんと理由があります。
文太さんは1980年(昭和55年)のNHK大河ドラマ
「獅子の時代」(脚本は山田太一さん)
に、主役の元会津藩士役で出演なさっていました。
ドラマの中では戊辰戦争を戦った後、新しい明治の世の中で苦闘する主人公を演じておられました。
そういう意味では、まさにピッタリと言えるゲストだったのです。
最後に・・・。
時は流れて2021年、平成から令和に変わって三年目です。
残念ながら「高知市立自由民権記念館」の知名度は、相変わらず低いままです。
どうすればもっとメジャーな存在になれるのでしょうか?
NHK大河ドラマで、板垣退助や中江兆民が主役の作品を制作してもらうくらいしか、方法はないのでしょうか?
私は高知県民でもない、全くの部外者ですが、時々考え込んでしまいます・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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